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Oliver Was­ser­mann
Mo. 22. Apr. 2019

ドイツ歯科事情

ドイツの歯科治療の話になると、「すぐに歯を抜こうとするから行きたくない」「ドイツ人の大きな手で歯を治療されるのは嫌だ」「全身麻酔をすることもあるから怖い」と、事実かどうかは別として、ネガティブなイメージが先行しがちです。しかし、日独どちらも世界に誇る先進国。医療の基本は同じはずなのに、なぜこんなにも認識に差があるのでしょう。当コラムでは、実際の日本とドイツの歯科治療の違いや、国民性や社会的背景も踏まえてお伝えいたします。

歯科医師 宮川順充
1971年札幌生まれ。95年歯科医師資格、2003~07年オーストリア・ドナウ大学院大学の講師およびルドルフィナーハウス病院内歯科医院(ウィーン)勤務。08年歯科医療技術インスティテュート IDEA(カリフォルニア)顎機能矯正学部門講師。09~13年ランドハウス歯科医院勤務。14年より同院の経営パートナー。 www.landhausstrasse.com

ドイツに関わる周辺諸国の歯科事情③

下部に掲載している写真は歯科診療で日常的に使用する機器ですが、それぞれどのくらいの価格か予想してみてください……。正解は①10万円、②1300円、③50万円。

「こんなものがこの値段!?」と思われるかもしれませんが、口腔内の健康や機能の回復のため、特に高い精度や耐久性が求められる機器は、製造国が日本・アメリカ・ドイツなどの先進国が多いこともあって高価になる傾向にあります。また使用する材料も多岐にわたるため、歯科医院の立ち上げの際には多額の資金が必要になり、例えば歯科医師が2人程度の小規模(ビジネスビル内のテナントなど)の開業では、費用を最低限に抑えても30万ユーロ、高級器材や特殊機器などを導入すれば、50万ユーロを軽く超えてしまいます。

自動車を購入する場合であれば、予算や利用目的などによって軽自動車から高級リムジンまで幅広い選択肢がありますが、歯科治療に使う機器には多少のグレードの差はあっても、それほど価格帯に幅がないというのも高額になる理由の一つ。

東欧などの発展途上国や物価の低い国で歯科診療所を開業する場合、診療機器のほとんどが輸入品になることもあり、さらにコストがかかります。そのような国では中古品を多用したり、品質には目をつむって安価な材料を使用しているのが現実です。それでも「資金はないが高い機器を手に入れたい」という需要が出てくると、そこにビジネスが生まれます。もちろん真っ当な理屈であれば、「高品質で高価なものを安く手に入れる」というのは矛盾があるのですが、それを解決(?)するために自然発生的に出てきたのが、歯科医療機器犯罪ビジネスです。

高品質機材を手に入れる方法は極めて単純。それは歯科診療所の「空き巣」です。主に東欧の窃盗団が国境を越えてドイツやオーストリアにやってきます。彼らは診療所の営業日や開院
時間を予め確認し、確実に人がいない時間を狙って侵入。短時間で必要な機材をすべて搬出し、なんと診療用チェアまで盗み出します。診療用チェアは水やエアーの配管、電気コードなど構造が複雑なため、通常素人には簡単に取り外すことはできないのですが、窃盗団には技術者まで含まれるというから驚きです。いくら夜間の窃盗とはいっても、これだけ大掛かりにやれば周りから怪しまれそうなものですが、大型トラックにテキパキと器材を搬出する様子に誰もが引っ越しかと思うようです。

またブラックマーケットには需要品リストがあるようで、窃盗団はその情報を元に必要なものをしっかり選別して盗んでいるため、歯科医療関係者も犯罪グループに関わっていると考えられます。私の知人も窃盗団に診療所の機材を根こそぎ盗まれる被害を受けましたが、朝診療所に入った瞬間、見事に部屋が空っぽになっていたとのこと。

十数年前にこのような犯罪が多発してから、セキュリティー会社に警備を委託したり特殊な盗難保険に加入するなど、さまざまな方法で防犯対策を強化する診療所が増えましたが、コストがかなりかかるため歯科医師にとっては頭が痛いところです。

歯を削るハンドピース
①歯を削るハンドピース

歯科矯正用ブラケット
②歯科矯正用ブラケット

口腔衛生用機器(エアーフロー)
③口腔衛生用機器(エアーフロー)

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