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足の静脈瘤をご存じですか?

出産後から足のふくらはぎの裏に青い網目状の血管が浮き上がって見えるようになりました。日本に住む母も足の血管がボコボコと盛り上がっていたので、同じようになるのではないかと心配です。これからの予防法や治療について教えてください。

Point

  • 血管が浮き出て、拡張・蛇行
  • 比較的多い下肢の所見
  • 静脈の弁が壊れて血液が逆流
  • 妊娠、立ち仕事、加齢がリスク因子
  • 多くは無症状、かゆみ・熱感も
  • 弾性ストッキングが有効
  • 歩くことで働く筋ポンプ

動脈(Arterien)

血液を届ける

心臓(Herz)より拍出された血液は体のすみずみまで送られ、毛細血管を介して細胞が必要としている栄養分・酸素などを届けます。動脈は弾力性に富み、高い血圧にも耐えることができます。

動脈と静脈

筋肉が血流の調節

動脈の壁には筋肉(血管平滑筋)の層があり、血管の太さを調節します。交感神経系や各種の血管作動物質が血管の収縮・拡張に関わっています。

静脈(Venen)

血液の心臓への帰り道

毛細血管での役割を終えた血液は静脈を通って心臓に戻ります。心臓(右心房)の拡張により重力に逆らって血液を足から心臓まで引っ張りあげます。歩行はふくらはぎの深部静脈(後述)を絞り出すように圧迫して血液の移動を促します(筋ポンプ、後述)。

逆流を防ぐ「弁」

静脈には逆流を防ぐ「弁」が備わっています。血液が心臓に向かって流れるときだけ弁が開き、それ以外は弁が閉じて重力で血液が下がるのを防いでいます。

静脈瘤の成因

表在静脈(ひょうざい)と深部(しんぶ)静脈

足の静脈には皮ふの近くの「表在静脈」と、筋肉の中を走る「深部静脈」があり、静脈瘤は「表在静脈」の障害です。一方、足の血液の90%以上は深部静脈を流れます。

筋ポンプ(Muskel-Venen-Pumpe)

歩くことによりふくらはぎの筋肉が深部静脈を絞り出すように圧迫して、血液の移動を促しています。全く歩かずに立ちっぱなしでいると足がむくみやすいのはこのためです。

足の「静脈瘤」とは(Krampfader、Varize)

体にできる静脈瘤

静脈が拡張し瘤こぶのようになった状態を指します。足の静脈瘤が最も知られていますが、おしりにできる内痔核(肛門と直腸のつなぎ目より直腸側にある痔)は静脈叢(じょうみゃくそう)が腫れた一種の静脈瘤です。また、肝硬変に伴い現れるおへそ付近の血管拡張(「メデューサの頭」と呼ばれます)や大量出血の原因となる食道静脈瘤もあります。

足の静脈瘤の種類

見た目に、①ボコボコと膨らむタイプと、②クモの巣状・網目状に見えるタイプがあります。①は障害部位によって側枝型静脈瘤、陰部静脈瘤、伏在型(ふくざいがた)静脈瘤に分類されます。

足の静脈瘤の原因は?

静脈の逆流防止の弁(前述)が壊れたり、静脈が広がり、弁がきちんと閉じなくなったりして血液が逆流して起こります。

足の静脈瘤の症状

多くは無症状で放っておいても健康を損なうことはありませんが、かゆみや熱感の原因となることがあります。一部の伏在型静脈瘤が悪化すると、疲労感、皮膚炎や潰瘍を生じることも。

足の静脈瘤が起きやすい人

出産経験のある女性、長時間の立ちっぱなしの仕事が関係します。加齢、家族歴、肥満もリスク因子です。立ち仕事の人は前述の「筋ポンプ」が機能せず、静脈内の血液が心臓に戻りにくくなります。

足の静脈瘤の頻度

日本では2005年の調査で40歳以上の女性の11.3%、男性の3.8%に静脈瘤が認められました(西予地区コホート研究で「下肢表面が盛り上がって蛇行している血管で、かつ起立すると目立つもの」と定義された静脈瘤)。ドイツでは20%が静脈瘤ありと答えています(2009年のロベルト・コッホ研究所の報告書 Heft 44)。

静脈瘤の診断と検査

まずは相談を

足の表面の血管拡張と蛇行から肉眼的な診断ができますが、静脈瘤の原因部位(種類)を見極めることが大切です。掛かりつけ医(家庭医、Hausarzt/-ärztin)に相談の上、必要に応じて一度血管内科(Angiologie)の専門医を受診しましょう。

超音波による血流検査

静脈に血液の逆流があるか、静脈瘤の発生している箇所の確認、静脈弁の動きや血栓(血の固まったもの)があるかなどを知ることができます。

足の静脈瘤の予防

毎日の適度な歩行

散歩など無理のない範囲で毎日歩くようにします。ふく方せんにより年に2回(セット)まで公的疾病保険(Krankenkasse)の適応になります。圧の異なる、いくつかのサイズがあります。処方せんの場合は薬局(Apotheke)、医療器具(Sanitätshaus)や整形外科の支援器具(Orthopädiefachgeschäft)を扱う店で購入でき、保険適応とは関係なくオンラインでの購入も可能です。

寝ているときは不要ですか?

弾性ストッキングは長時間立っているときや座っているとき、重力の影響で血液がうっ滞するのを防ぐものなので、横になっているときは着用の必要はありません。

静脈を塞ぐ治療法の例

硬化療法(Schaumsklerotherapie)

静脈内に血管の壁を癒着させる硬化剤を注入して静脈を閉鎖する方法です。フォーム状の硬化剤を用いる方法は、治療時間が短時間で体への負担が少なく、治療効果が期待できます。静脈の拡張や蛇行したときのみに用いられます。

レーザー療法(Varizenstripping)

カテーテルという管を静脈の中に入れ、レーザー照射により静脈を焼いて塞ぎます。静脈の血液の逆流が高度な場合に選択されます。また、高周波エネルギーによる熱が用いられる方法もあります。

静脈を取り除く治療法

ストリッピング手術(Varizenstripping)

静脈瘤のできた静脈血管をワイヤーで引き抜いて行われる手術で、「ストリッピング手術」と呼ばれています。以前までは静脈瘤の主流の治療法でした。逆流が高度のときに選ばれます。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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