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緑の人々、連邦の党になる Die Grünen werden eine Partei

1980年1月13日
1970年代半ばから後半にかけて、環境保護や人権をテーマにした自由な有権者組織が各地で誕生し、地方自治体に議員を送り始めた。しかし州と連邦には、議席配分条件(有効投票数の5%以上の得票)がある。80年1月、彼らは全国組織を結成することにした。

草創期——政治参加の道を

この動きには、社会民主党(SPD)の連邦政権下で野党席に左翼がいなくなった背景がある。産業労働を基盤にする与党SPDに対抗するため、野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の一部はドイツに古くから伝わるエコロジー思想に着目。一方、1960年代からの反体制活動家たちは国の法治体制を認めた上で、現実的な政治参加を模索し始めたのだ。緑の人々(Die Grünen)の全国党は、この2つの流れからまとまるのである。

まずは草創期をご紹介しよう。緑の人々の有権者組織(市政党)から最初の議員が誕生したのは77年10月。ニーダーザクセン州でだった。地方自治体の選挙に5%条項は適用されないため、ヒルデスハイムで“緑の環境保護 名簿”(GLU)が1議席、ハーメルンでも“原子力はいらない有権者名簿”が1議席を獲得する。

そして翌78年3月、“緑のシュレスヴィヒ=ホルシュタイン”(GLSH)が同州の2つの郡で、バイエルン州の“独立ドイツ人行動連合”(AUD)がエアランゲン市で議席を獲得。6月に行われたニーダーザクセン州議会選挙では、GLUの得票率が3.9%に達する。環境問題に関心のないSPD指導部は眉をひそめ、「緑は民主主義にとって危険」とさえ言った。

党設立の立役者、ヘルベルト・グルール

国民の環境意識を高め、緑の党設立に威力した人物に、元CDUの連邦議員ヘルベルト・グルール(1921~93)がいる。75年に著書『略奪された地球—経済成長の恐るべき決算—』で自然破壊に警告を発したグルールは、78年7月に意見の相違からCDUを離党。すぐさま“緑の行動と未来”(GAZ)を結成し、「右でも左でもなく前へ」をスローガンに各地の緑をまとめることになる。

Tatortのタイトル・デザイン
緑の地に向日葵の花をあしらった緑の党のロゴ
©Bündnis 90/Die Grünen

彼のGAZがニーダーザクセンのGLU、バイエルンのAUD、シュレスヴィヒ=ホルシュタインのGLSHと組んで初の欧州議会選挙に臨んだのは79年6月。グルールのほか、環境平和主義者ペトラ・ケリー、芸術家ヨーゼフ・ボイスを候補に立てた“諸派・緑の党”(SPV Die Grünen)は注目を集めて3.2%を得票。そして10月、“ブレーメンの緑”が州レベルで初めて5%条項を突破し、4人の市・州議員を誕生させるに至った。

この勢いにある意味で便乗したのが、衰退期にあった全学連や共産主義者、オルタナティブらの、いわゆる“Kグループ”である。グルールら保守右派の幹部は11月の党大会で、彼ら過激左派の加入を阻止しようと反対動議を出すが、僅差で否決。党員数は2830人から一気に1万人へと増える。全国党として新たに出発する時機が到来したのである。

全国党としての地位確立

1980年1月12、13日、カールスルーエに代表1004人を集めた党大会は、最初からカオスだった。投票権を拒否された左派が右派に圧力をかけ、政策立案メンバーに選ばれたオルタナティブの代表に対して、右派からリコール請求が出る。1カ月前にNATOが「ソ連に軍備制限を求めつつ軍備拡大を行う」とする二重決定をしたことで、左派の声はより熱を帯びていた。怒号が飛び交い、花が配られ、歌声が起こり、男性たちが編み物をする。男女の古い役割観を覆すこの挑発的な姿をテレビで見た国民は、あっけに取られたそうだ。

結局、この大会はスローガンだけを決めて解散。2カ月後の第2回大会でやっと政策と代表3人が決まる。この混乱期を乗り切れたのは、代表の1人になったペトラ・ケリーが「私たち緑は歴史的なチャレンジ、ムーブメント、そして“党”なのです」と左右を仲介し、東独からの亡命者ルドルフ・バーロが左派を、「君たちのいわゆる“レーニン主義”は茶番だ」と抑えたからだった。

しかし82年にグルールら右派が、環境問題をメインテーマにする党を新たに結成して離脱。こうして以後、環境保護だけでなく平和、人権、反原発、消費者保護、教育問題、フェミニズムなど幅広い政策を掲げる、オールラウンド路線が決定的になる。緑の党が連邦議会に28人の議員を送り込んだのは、結成からわずか3年後の83年だった。

18 Juni 2010 Nr. 821

最終更新 Mittwoch, 24 August 2011 18:11  
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