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Di. 20. Okt. 2020

水彩画からのぞく芸術の世界 寄り道 小貫恒夫

77. レスピーギの交響詩「ローマの松」

アッピア街道の松
アッピア街道の松

イタリアの作曲家といえばオペラのイメージが強いですが、オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)は珍しく、器楽曲しか作曲していません。そんな彼の代表作は、何といっても「ローマ3部作」。この作品ではローマの象徴ともいうべき「泉」、「松」、「祭」をそれぞれテーマにしています。この3部作は13年間に渡って作曲されましたが、今日では一つのまとまった作品として扱われています。中でも私が好きなのは「ローマの松」。 この作品は四つのテーマで構成されていて、それぞれの曲にはレスピーギ自身が、どのような情景を描いているかについて注釈を付けています。

 1曲目の「ボルゲーゼ荘の松」は、ローマの中心から少し北に行ったところにある大きな公園で、立派な松並木が続いています。ここでは子どもたちがにぎやかに遊んでいる様子を表したそうで、打楽器が効果的に使われていますが、一方でローマの喧騒も表現しているように感じられます。2曲目は「カタコンベ付近の松」。カタコンベはキリスト教がまだ弾圧されていた時代のお墓であり、曲中では厳粛な響きがコラールのように繰り返されます。しばらくして静かにトランペットのソロが浮かび上がりますが、まるで夕暮れの寂しさの中にいるような切ない気分に。

 一転して、ピアノの軽やかなソロで始まる、3曲目の「ジャニコロの松」。しばらくしてクラリネットのソロが登場し、まるであの柔らかな松の葉を表しているようです。さらに曲はぐっと静かになり、ナイチンゲールの鳴き声がホールのあちこちに設置されたスピーカーから聴こえてきます。ちなみに「ジャニコロの丘」は、ローマが一望できる観光スポットですが、あのペテロが皇帝ネロによって処刑された場所でもあるのです。

 そしていよいよ、4曲目「アッピア街道の松」。ティンパニの低い連打で始まると、そこに木管たちが絡みだし、不安定で怪しげな雰囲気を醸し出します。金管たちが絡みだすと行進曲風に進んでいきますが、これは古代ローマ軍が遠くからアッピア街道を凱旋して来る様子だそうです。この行進はだんだんと近づいてきて、音量が最大に差し掛かるころからは、客席後方の両サイドに配置された金管群も加わります。客席を360度取り巻くような立体的な音場に圧倒され、もうこれ以上ないほどの大きな音の洪水の中で、打楽器郡の爆発とともに曲は閉じられます。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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