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第19回 キャッシュレジスターに関する新規定

連邦財務省はキャッシュレジスター(以下「レジ」)による記録の改善を企図し、2017年1月1日付けで事業者向けレジに関する規定を改正しました。従来のレジについては昨年12月31日までを移行期間として使用が許されていましたが、今年から正式に新規定の遵守が法的な義務となっています。今回は、どのようなレジが新規定で認められるのか、また、具体的にどのような点が変更されたかをご紹介します。

1)新規定の狙い

新規定の経緯をご説明すると、2010年末には既に、「キャッシュレジスターのガイドライン」が示されていました。この際に、2016年12月31日までの「移行期間規定」についても定められましたが、今年、その延長が認められませんでした。

新規定の狙いは、税務署が各事業体のデータ記録に電子的にアクセスできるようにすること、さらに読み込んだデータを租税面から従来以上に正確に評価することです。

2)該当するレジと、新規定で求められるレジ機能

新規定の履行を義務付けられるのは、現金の出し入れ機能だけを備えたレジ、コンピューター直結のPOSシステムのほか、現金とは直結しなくても会計処理に関連してくる装置です。例えば、レジ登録機能付きのはかり、タクシーのメーター、オドメーター(車の走行距離計)などがこれに該当します。

新規定においては、個別の記録の保存義務が重要項目となっています。つまり、1件1件の商取引の記録は、電子機器で請求書が発行された場合にはこれも含めて、すべての租税に関連するデータを、手を加えずに、完全な形で記録・保存しなければなりません。データを一つにまとめたり、請求書の額面のみを保存したりすることは禁止されています。保存義務のある書類を、データでなく印刷した紙の形だけで保管するのでも不十分です。文書データと、評価可能なデータ形式での構造情報も必要です。

租税に関連するデータには、ジャーナルデータのみでなく、評価データ、プログラミングデータ、マスターデータの変更など、個々の記録データも含まれます。すべてのデータは改変不可能な形で保存しなければなりません。これをレジのシステム内で保存するか、もしその容量が足りなければ、外付けデバイスに保存します。この場合にも、データは常に提供可能で、すぐに読み出すことができ、システムで評価することができる状態に保つ必要があります。

レジのシステムを変更する際には、それ以前のデータも新しいものと同様に、法定の10年間の保存期間中は保管し、常に提供可能な形にしておくことを義務づけられています。当然のことですが、記録された商取引は、これに該当する会計帳簿に記帳し、比較参照できる状態にしておきます。

3)その他の留意事項

レジシステム内のデジタルデータのほか、会計管理のための「各種印刷物」も保管し、常に取り出せるようにしておきます。各種印刷物の一例としては、以下があります。

● レジ操作のハンドブック
● 取扱説明書、プログラミング説明書
● プログラミングの全履歴
● コンピューターの制御構造とプロセスに関する文書

ドイツ税理士協会ではこのほか、レジの故障や記録取り消しなど、まれにしか起こらない事例についても、記録を残すよう推奨しています。

4)税務署による検査

事業者が上記の義務を履行しているかどうかを迅速に確認するため、税務署が2018年から「レジの立ち入り検査」(Kassen-Nachschau)を行うことができるようになり、これを定める法律も同時に発効します。これは税務署独自の手続きで行われ、主に、現金取引後すぐに租税に関連するデータを確認することを目的としています。

レジの立ち入り検査で留意すべき点は、直近のデータだけでなく過去のデータについても税務署がアクセスを許可される点です。つまり、2017年現在、将来のレジ立ち入り検査に備え、現在のデータを法的要件にかなうよう整備しておく必要があるのです。

レジの立ち入り検査において、規定に反する事例が確認された場合には、違法行為にあたるとして最高2万5000ユーロまでの罰金が科せられることがあります。

5)今後の見通し

レジ記録の保存義務を規定する新規定は2016年12月に可決され、今年から正式に法的効力をもつに至りました。さらに2020年からは原則的に、技術認証されたデータ保証機能を持つレジとPOSシステムだけが使用を許されます。この認証手続きは、レジの設計・設置を行ったサービス企業によって行われ、デジタル化された元データの改変防止を確実にするという目的があります。

まとめ

税務署は近年、現金取引に対する監視を強化しています。レジを買い換える際には、新しいレジが今後必要とされる条件を満たしているかどうかに留意し、不明点があれば自社の税理士に相談しましょう。弊社でも喜んでご相談を承ります。

(筆者:税理士ファブリス・ベーナー)

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