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第25回 レジ立ち入り検査

2018年1月1日から、税務署が予告なしに調査を行う手段がさらに増えました。レジ立ち入り検査(Kassen-Nachschau)です。これにより、税務署が事前に予告することなく営業中の商店に立ち入り、レジの全データを調査することが可能になります。調査は、紙に書かれた形とデータ化された文書の両方が対象です。今回は、どのような事業者がレジ立ち入り検査に備えなければならないか、また、どのように準備を整えておくべきかをご説明します。

1)レジ立ち入り検査とは

レジ立ち入り検査は、2016年12月22日に制定された通称「キャッシュレジスター法」により合法化され、今年1月1日に施行されました。レジ立ち入り検査の対象になるのは、現金取引を中心に事業を行う飲食店、美容院、小売店、薬局といった事業者です。

この「抜き打ち検査」を行うにあたり、税務署は特定の理由を述べる必要はありません。一般的には店舗の新規オープンの際や、特にその業界で現金取引上の不正が疑われやすい場合、または、ある事業者の顧客やサプライヤーで行われた検査で、この事業者の側の精算情報を照合確認する必要が生じた場合などに行われることが多いようです。

2)検査の進め方

検査は事前に予告されないため、店舗の営業中、または事業所の業務時間中に行われることがあります。検査官は、こうした事業所の構内または店内に立ち入ることを許されますが、事業主の住居に踏み込むことは、住居内で租税情報が隠滅されている疑いが濃厚である場合にだけ許されます。

検査官が検査を開始する際には、これを事業者に伝え、自分の身元を証明しなくてはなりません。これに先立ち、検査官が身元を明かすことなく「普通の顧客」を装って試しに現金取引を行い、レジ精算の様子やオーナーまたは店長が出勤していることを確認することがあります。

検査を担当する税務署員は、レジ立ち入り検査で以下の行為を許されます。

●事業所内への立ち入り
●データ記録システム、その他の電子機器へのアクセス
●精算プロセスに関する説明書、精算業務全般に関する文書の提示要求
●租税に関連するデータや帳簿の閲覧(データへの直接アクセス)
●税務署内で精査するために、データや帳簿を持ち出すこと(データへの間接的アクセス)
●仕入れや売上などの、租税に関連する事実関係の確認
●前日のレジ記録の提示要求
●レジを締めて現金残高と出納記録を照合する(特にマニュアルでのレジ精算や、機器を使わずに現金取引している事業所の場合)

レジ立ち入り検査への対応には、日頃から精算プロセスに関する資料を整えておくことが重要です。 レジの設計設置を行ったサービス会社が発行したレジ操作ハンドブック、プログラミングの全履歴を提出するほか、レジ業務が実際どのように行われているかを検査官に説明しなければなりません。どの従業員がレジにアクセスできるのか? 精算内容の取り消しをする権限を持つのは誰か? 毎日、誰がいつレジを締め、誰がいつどのようにデータを保存するのか? これらは、立ち入り検査で聴取される内容のごく一部です。

3)検査後の経過とその後の措置

税務署員がレジ立ち入り検査をいったん開始したら、罰金減免のための自己申告を行うことはできません。 

検査を受ける間、事業主は検査官に協力し、情報を開示することを義務付けられます。税務署員がレジ記録や帳簿などの閲覧を要求した場合には、データ化されたもの(デジタル)、または紙に書かれたもの(現金出納簿や現金収支報告書など)の両方を必ず渡さなければなりません。事業主はさらに、使用しているデータ記録システムの精算プロセス関連文書(システム説明書)も提出し、情報を開示します。 レジ立ち入り検査の結果は、事業主に伝えられます。検査を行った税務署員は、検査で確定された事実を記録した改善項目リスト(Mängelprotokoll)をその場で作成し、事業主に手渡します。  

検査官がレジ精算について不審点を見つけた場合、検査官に対して必要な情報が開示されなかった場合には、検査官はレジ立ち入り検査よりずっと広範な税務調査(Betriebsprüfung)に切り替えて実施することがあります。税務調査は、税務署が事前に書面で告知するだけで実施可能です。従ってレジ立ち入り検査の際にはできるだけ協力し、必要とされる全情報を即座に提供することをおすすめします。

4)まとめ

税務署は、レジ立ち入り検査という方法によって、それほど形式にこだわらず、同時に効果的な調査を実施することができます。現金決済の多い業種では、レジ立ち入り検査で即座に不審点が発覚することが少なくありません。現金収入を主とする事業所は、毎日のレジ精算業務を確実に行うだけでなく、レジ精算プロセスに関する全資料をすぐに提示できる状態にしておく必要があります。

貴社のレジ精算が適正に行われているかどうか、また精算プロセス関連資料をどのように準備しておくかについて、当社でも喜んでご相談に応じます。 (筆者:税理士ファブリス・ベーナー)

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リンケ・トロイハント会計税理事務所

ジャパンデスク
担当:田中
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