一度は行きたい
ドイツの世界遺産
ドイツは、世界遺産の登録件数がイタリア、中国、スペインに次いで4位と、世界的にも世界遺産大国として知られる。ケルン大聖堂やバウスハウスなどドイツを代表する建築物から、近年登録された先史時代の遺跡まで、一度は足を運んでみたいドイツの世界遺産をご紹介しよう。 (Text:編集部)

数から紐解く世界遺産
世界遺産の種類 ...... 3種類
世界遺産とは、1972年にユネスコ総会で決定した「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づき、登録された遺跡や景観、自然のこと。その種類は文化遺産・自然遺産・複合遺産の3つに分類される。
文化遺産
歴史的に価値のある遺跡や建造物、記念物が対象となっている。ドイツでは、ケルン大聖堂をはじめとした43件が登録されている。
自然遺産
美しい景観、生態系、地層、地形、絶滅危惧種の生息・生育地が対象。ドイツでは、メッセル採掘場の化石発掘現場など3件が登録されている。
複合遺産
文化遺産、自然遺産の両方の価値を兼ね備えたものが対象。現在ドイツでは、このカテゴリーに分類されるものは登録されていない。
(出典・参照:日本ユネスコ協会連盟「世界遺産とは」)
無形文化遺産の数 ......... 549件
条約提携国の数 ...... 127カ国
(出典・参照:UNESCO / Culture / Intangible Heritage / Lists / Browse the Lists)
無形文化遺産は、伝統的な音楽や舞踊、演劇や工芸技術などその国の歴史や文化、生活風習に結び付いた重要な文化財とされているもの。ドイツでは、2017年にパイプオルガンの製造技術と音楽が認定された。
世界遺産の数 ......... 1121件
条約締約国の数 ...... 193カ国
(出典・参照:外務省HP「国際機関を通じた協力 世界遺産」)
ユネスコ加盟国の195カ国のうち、ツバル、ナウル、ソマリアの3カ国を除く192カ国とバチカン市国が締約している。世界遺産の総数1121件の内訳は、文化遺産869件、自然遺産213件、複合遺産39件となっている。
登録を抹消された世界遺産 ......... 2件
(出典・参照:世界遺産オンラインガイド「登録を抹消された世界遺産」)
ドイツではドレスデンのエルベ渓谷に架けられた橋が原因となり2009年に登録を抹消された。そのほかにも、ケルン市の再開発計画によってケルン大聖堂が登録抹消の警告を受けたことがある。
世界遺産の国別ランキング
- 1位 イタリア...... 55件
- 1位 中国 ...... 55件
- 3位 スペイン ...... 48件
- 4位 ドイツ ...... 46件
- 5位 フランス ...... 45件
(出典・参照:外務省HP「世界いろいろ雑学ランキング 世界遺産の多い国」)
ちなみに日本は文化遺産19件、自然遺産4件の計23件で12位となっている。
ドイツ世界遺産地域別ランキング
- 1位 ザクセン=アンハルト州 ...... 7件
- 2位 バーデン=ヴュルテンベルク州、バイエルン州 ...... 6件
- 3位 ノルトライン=ヴェストファーレン州、ヘッセン州 ...... 5件
(参照:Anzahl der Denkmäler in der UNESCO Liste des Welterbes* in Deutschland nach Bundesländern)
ヴィースの巡礼教会やバイロイト辺境伯歌劇場などを擁するバイエルン州が1位に。
危機遺産 ...... 54件
(出典・参照:日本ユネスコ協会連盟「世界遺産リスト」)
危機遺産とは、観光客の多さで現状の姿を保つことが危ぶまれるものから、再開発や生態系・環境の悪化、戦争や紛争などにより存続の危機にさらされているもの。世界では現在54件(2017年調べ)が認定されている。ちなみにドイツではこのカテゴリーの登録は現在のところはない。
ドイツの世界遺産マップ
ドイツ国内にある46の世界遺産の中から、編集部おすすめの8カ所をピックアップ。
ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群

さかのぼること18世紀、プロイセン王のフリードリヒ2世が、ポツダムの地に夏の離宮としてサンスーシ宮殿の建設を命じたことを皮切りに、ポツダムとベルリンには歴代のプロイセン王による宮殿と庭園が数多く建設された。プロイセン王国の歴史を現代へと継承する貴重な建造物として、サンスーシ宮殿のほかに、シャルロッテンホーフ宮殿、ツェツィーリエンホーフ宮殿、ザクロウ地区の救世主教会、バーベルスベルク宮殿、孔雀島など多くの建造物や場所が登録されている。
ヴァイマルとデッサウのバウハウスとその関連遺産群

1919年、建築家のヴァルター・グロピウスによってヴァイマルに設立された、工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合教育を行なう学校、バウハウス。洗練されたデザインと機能性を兼ね備えた、ドイツのモダニズム建築の礎を築いた。2019年にバウハウス100周年を迎え、それに合わせて新たにバウハウスミュージアムがオープンした。世界遺産にはバウハウス・デッサウ校とハウス・アム・ホルンの2カ所が登録されている。
ケルン大聖堂

ゴシック様式の建築物の中で、世界最大規模を誇るケルン大聖堂。600年もの長い歳月をかけて1880年に完成されたこの大聖堂は、大きくそびえる2本の塔が圧倒的な印象を与える。2004年にはケルン市の再開発を理由に ユネスコから世界遺産登録抹消の警告を受けたものの、2006年に解除され、現在でも世界各国から多くの人々が訪れるドイツを代表する名所として威厳を保ち続けている。外観はもちろんのこと、美しいステンドグラスや装飾品を収める内部も必見。
エッセンのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群

石油の普及により衰退していった炭鉱は、その昔、人々の生活を支える重要な役割を果たし、近代産業の発展に大きな影響を与えた。「世界で最も美しい炭鉱」と呼ばれる巨大な炭鉱跡であるツォルフェアアイン。巨大な第12採掘坑は、バウハウス様式によってデザインされたもので、その均整のとれた美しさと大きさは見るものを魅了する。また、近接した場所には、2010年にプリツカー賞を受賞した日本人の建築ユニットSANAA(サナア)が手がけた学校が居を構える。
ライン渓谷中流上部

ワインの名産地としても有名な地域であるライン川渓谷には、雄大な景色をバックに、美しいお城や街並みが数多く点在している。中でも最も有名な、ザンクト・ゴアールスハウゼン近くに位置する一枚岩ローレライは、19世紀のロマン派の詩人や画家をもとりこにするほどだったそう。ほかにも盗賊の巣窟となったライヒェンシュタイン城、作家のヴィクトル・ユーゴーが絶賛したといわれているシェ-ンブルク城、多くの観光客でにぎわう小さな町、リューデスハイムなどがこの地域に集中している。
バイロイト辺境伯歌劇場

欧州の中でも現存する数少ない18世紀の劇場として貴重なこの建築物は、この地に繁栄をもらせたブランデンブルク= バイロイト辺境伯の妃であるヴィルヘルミーネ・フォン・プロセインが音楽をこよなく愛していたことから、本人たっての希望で建てられたもの。歌劇場のファサード部分のデザインは北イタリアの様式をモデルとしており、内装はゴールドを基調とした豪華絢爛な装飾品の数々が施されており、見るものを圧倒する。
ハンブルクの倉庫街とチリハウスを含む商館街

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、国際的な商業施設として急成長を遂げたハンブルク。赤レンガを用いたゴシック様式の建築物が100以上も並ぶ倉庫街には、その間を流れる水路を行き来できるように20もの橋が架けられている。夜になるとスポットライトを浴びて幻想的な雰囲気をかもし出す。また、商店街に位置するこの地区のシンボル、チリハウスは、ドイツ人建築家のフリッツ・ヘーガー氏による表現主義の建築様式の代表作として有名だ。
シュヴァーベンジュラの洞窟群と氷河期芸術

ドイツ南部に残る6つの洞窟とそこで発見された先史時代(約3万3000~4万3000年前)の芸術作品を含めたもの。これらの洞窟からは人類が作った世界最古の創作物として知られる象牙彫刻やライオンマンなどが見つかっており、この地での暮らしや芸術活動の貴重な証拠が残されている。2008年に発見されたホーレ・フェルスのヴィーナス像は、人間をモチーフとした造形美術として最も古いとされており、ほかの発掘品と共にシュヴァーベンに新設予定の博物館に収められる予定。
ドイツの世界遺産全46カ所リスト
●......文化遺産 ●......自然遺産 ●......編集部おすすめ
- アーヘン大聖堂
(1978年) - シュパイヤー大聖堂
(1981年) - ヴュルツブルク司教館、その庭園群と広場(1981年)
- ヴィースの巡礼教会(1983年)
- ブリュールのアウグストゥスブルク城と別邸ファルケンルスト(1984年)
- ヒルデスハイムの聖マリア大聖堂と聖ミカエル教会(1985年)
- トリーアのローマ遺跡群、聖ペテロ大聖堂及び聖母マリア教会(1986年)
- ローマ帝国の国境線(1987年、2005年・2008年拡張)
- ハンザ同盟都市リューベック(1987年)
- ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群(1990年、1992年・1999年拡張)
- ロルシュの大修道院とアルテンミュンスター(1991年)
- ランメルスベルク鉱山、歴史都市ゴスラーとオーバーハルツ水利管理システム( 1992年、2010年拡大)
- バンベルク市街
(1993年) - マウルブロン修道院の建造物群(1993年)
- クヴェートリンブルクの聖堂参事会教会、城と旧市街(1994年)
- フェルクリンゲン製鉄所
(1994年) - メッセル採掘場の化石発掘現場(1995年)
- ヴァイマルとデッサウのバウハウスとその関連遺産群(1996年)
- ケルン大聖堂
(1996年) - アイスレーベンとヴィッテンベルクにあるルター記念建造物群(1996年)
- 古典主義の都ヴァイマル(1998年)
- ベルリンのムゼウムスインゼル(博物館島)(1999年)
- ヴァルトブルク城
(1999年) - デッサウ・ヴェルリッツの庭園王国(2000年)
- 僧院の島ライヒェナウ(2000年)
- エッセンのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群(2001年)
- シュトラールズント歴史地区とヴィスマール歴史地区(2002年)
- ライン渓谷中流上部
(2002年) - ムスカウ公園
(2004年) - ブレーメンのマルクト広場の市庁舎とローラント像(2004年)
- レーゲンスブルクの旧市街とシュタットアムホーフ (2006年)
- カルパティア山脈のブナ原生林とドイツの古代ブナ林群 (2007年・2011年拡張)
- ベルリンのモダニズム集合住宅群(2008年)
- ワッデン海
(2009年・2014年拡張)
- アルフェルトのファグス工場(2011年)
- アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群(2011年)
- バイロイト辺境伯歌劇場 (2012年)
- ベルクパルク・ヴィルヘルムスヘーエ(2013年)
- コルヴァイのカロリング期ヴェストヴェルクとキウィタス(2014年)
- ハンブルクの倉庫街とチリハウスを含む商館街(2015年)
- ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献(2016年)
- シュヴァーベンジュラの洞窟群と氷河期芸術(2017年)
- ヘーゼビューとダーネヴィルケの境界遺跡群(2018年)
- ナウムブルク大聖堂(2018年)
- エルツ山地(クルスナホリ)鉱業地域(2019年)
- アウクスブルクの水管理システム(2019年)
