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ドイツ人をも悩ますゴミの仕分けとリサイクル

環境先進国ドイツといわれるだけあって、ゴミの仕分けは細分化されており、日本の良い見本という見方もある。しかし実際に住んでみると、「資源ゴミ」を捨てる黄色コンテナや、「その他のゴミ」を入れる黒コンテナに何を捨てたら良いのか、仕分けの複雑さや細かいルールに戸惑う人も多いのではないだろうか。事実、ドイツ人の中にも混乱している人はいるようだ。今回は、ゴミの仕分けに焦点を当て、現状と問題点をまとめる。

ゴミの仕分けの目的と現状

1991年発効の法律「包装廃棄物政令」に基づき、緑の再生マークが付いた包装材は、資源ゴミとして黄色コンテナへ捨てることとなった。この法律の主な目的は、増え続ける包装ゴミの削減だが、それほど成果が上がっていないのが現状だ。

黄色コンテナ1000個当たりの包装材の回収量

黄色コンテナ

ドイツ人も悩んでいる

ドイツの公共放送ARDによる、黄色コンテナに関するアンケート“Was darf in den Gelben Sack?”(黄色コンテナに何を捨てられる?、2013年2月14日~現在も回答受付中)によると、回答者の約86%が「今のシステムは理解できない・意味がない」、13%の人が「今のシステムは素晴らしい・分かりやすい」、約1%が「意見なし」(2015年7月16日現在)と答えている。8割以上の回答者が現行システムに疑問を抱いているという残念な結果だ。特に分かりにくいとされている例をいくつか挙げてみよう。そこから、システムの矛盾も見えてくる。

どのコンテナに、どうやって捨てる?

1.魚などの骨:生ゴミ用・茶色コンテナ(Biomüll)

筆者がスーパーマーケットで入手する無料のBiomüll用の紙袋には、魚の骨や肉の骨を入れることを禁止するマークが印刷されている。しかし、ニュルンベルクの清掃局のウェブサイトには、これらは生ゴミコンテナに入れて良いとする説明があり、矛盾している。

2.歯ブラシ:その他のゴミ用・黒コンテナ(Restmüll)

リサイクリング可能なはずのプラスチック製であるにもかかわらず、包装にのみ緑の再生マークがあり、製品自体には付いていないという理由から、黄色コンテナには入れられない。しかし、周囲のドイツ人たちに質問したところ、歯ブラシは黄色コンテナに捨てているという声も。また、緑の再生マークが付いている場合、包装紙は黄色コンテナに入れることが許されているが、青色の古紙コンテナ(Altpapier)に入れた方が、紙のリサイクリングに回されるので環境に優しい選択となる。

3.食用油:その他のゴミ用・黒コンテナ

家庭の調理で出る1~2リットル以内の油は、黒コンテナに捨てられる(ミュンヘンの清掃局のウェブサイトを参照)。その場合は、回収車がゴミ袋を圧縮する際に油が飛び出したりしないよう、新聞紙などに浸み込ませてから捨てるといった対応が必要。配管を詰まらせる原因にもなるので、決してトイレや流し台などの排水口には捨てないこと。

4.青いビン:緑色グラス用コンテナ(Grüner Glascontainer)

透明や茶色のグラス用コンテナに入れるよりは、リサイクリングの処理工程における支障が少ないという理由から、透明・茶色以外のすべての色のビンは、緑グラス用コンテナに捨てる。ただし、ガラス製の食器は、その品質によっては処理に支障を来す場合(高級ガラスが鉛を含むなど)があるので、黒コンテナへ。

5.容器洗浄の有無

Pfand(デポジット)付きのグラスに入った食品:Pfandグラス用の返却機やレジにて返却。容器は工場で洗浄され、そのまま再利用するため、家庭では簡単にすすぎ、ふたをして返却。ふたがないとビンの口が欠け、リサイクリング不能となる。

プラスチック容器に入った食品:黄色コンテナに入れる。容器はそのまま利用するわけではないため、食べ切っていれば洗浄しなくて良い(水の節約のため)。容器同士を重ねて捨てないこと。

※1~5は、筆者が在住するニュルンベルクの場合。都市によって分別方法が異 なることがあります。

リサイクルシステムの改善案

ベルリンでは、2013年から「オレンジコンテナ(Wertstofftonne:資源ゴミ用コンテナ)」を試験的に導入している。これは、緑の再生マーク専用の黄色コンテナに代わり、緑のマークを含むリサイクリング可能なすべての製品(プラスチック、金属など)を捨てられるコンテナである。大連立政権は今後、本格的にオレンジコンテナをドイツ全土に普及していくこと決め、リサイクリングの効率化とゴミの仕分けの明確化を進める考えだ。


包装や製品にある様々なマークやコード

包装や製品を手に取って見ると、1つのマークだけではなく、様々なマークやコードと一緒に印刷されているのが分かる。よく目にするものを中心に紹介しよう。

Recyclingsymbol Recyclingsymbol (インターナショナル)
リサイクル可能製品。
Recyclingsymbol mit Prozentangabe Recyclingsymbol mit Prozentangabe (インターナショナル)
表示数字の%はリサイクルされた割合。この画像では75%。
Grüner PunktGrüner Punkt (インターナショナル)
お馴染みの緑のマーク。購入時に、包装をリサイクル処理する会社DSDに費用を支払っている。
Recycling-Code Recycling-Code (欧州)
中心の番号が原料を表す(三角形の下は略称)
01: ペットボトル(PET/PEPE) 05: ポリプロピレン(PP)
07: その他(O)
81: 紙とプラスチック(C/PAP), 独スターバックスの紙コップはこれ
durchkreuzte Mülltonnedurchkreuzte Mülltonne (欧州)
電気製品を家庭ゴミコンテナに捨てるのは禁止。
MehrwegpfandsymbolMehrwegpfandsymbol(ドイツ)
洗浄してそのまま再利用するビン。
EinwegpfandsymbolEinwegpfandsymbol(ドイツ)
使い捨てのビン、潰すなどしてからほかのものへリサイクルする。
TidymanTidyman(インターナショナル)
ゴミは最適な方法で捨てること。

※ 上記のマークやコードは使用国が異なります。( )内を参照下さい。

用語解説

デポジット(預かり金)
Pfand

缶やビンなどに保証金を上乗せして販売し、それらの回収時に保証金を返金する制度のこと。主に再利用のグラスやプラスチックボトル、使い捨てペットボトルに適応。ほかにも、お祭りの屋台で提供される食器類にも掛けられていることがある。資源のリサイクルや、ゴミの散乱などの公害から環境を守るための方法の1つである。

<参考>
www.welt.de “Was Sie über die M g wissen müssen“(08.05.2015)
www.welt.de “Das große Müll-Missverständnis soll ein Ende haben“(13.06.2015)
https://daserste.ndr.de “Merkwürdige Mülltrennung: Was darf in den Gelben Sack?“(14.02.2013)
www.umweltbundesamt.de “Verpackung überall“(22.06.2015)
■ ドイツニュースダイジェスト「緑の再生マーク誕生から20年」(第848号、2010年12月24日発行)
■ ミュンヘンの清掃局: www.awm-muenchen.de

筧 美恵子(かけい・みえこ) 大学卒業後、婦人服のパタンナーとなる。その後一転し、電機メーカーにて主に輸出関連業務に10年間携わる。その頃からドイツとの馴染みが深い。2006年4月からニュルンベルク在住。幅広い視野を持って、分かりやすい記事の発信を目指す。健康のため、ジムで筋力トレーニングに日々励んでいる。

最終更新 Dienstag, 04 Juni 2019 16:06  
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