Hanacell

世界を動かすビジネスリーダーに聞く!ドイツ発グローバル時代を生き抜くチカラ

海外進出が、大企業だけではなく、中小企業や個人にとっても必要不可欠な選択肢となっている時代。欧州の中心部に位置する地の利を活かして、ドイツを活躍の拠点としているビジネスパーソンが見いだした海外での挑戦の意義や魅力とは?


第14回

ビールで日本の心を伝えたい
KIRIN EUROPE GmbH

和田健一郎 氏和田健一郎 氏
Wada Kenichiro

プロフィール


KIRIN EUROPE GmbH の営業・マーケティングマネージャー。大学卒業後、ビール好きが高じて、キリンビール株式会社に入社。営業およびマーケティング部門で研鑽を積み、キリンのものづくりの精神に感銘を受ける。2016年からドイツ勤務。
www.kirineurope.com

「キリン」といえば、日本人なら誰もが知っている飲料メーカー。100年を超える歴史を持ち、常に品質の良いものを追求してきたパイオニア精神にあふれる企業だ。ここドイツでも、日本食レストランを中心にキリンのビールが楽しめることは周知の通り。ビール大国であえて日本のビールを提供するキリンの挑戦について、キリンヨーロッパの和田健一郎氏に話を聞いた。

商品の魅力を人一倍語れるチカラ

オフィスのあるドイツをはじめとした欧州地域の20カ国以上で、キリンのブランドを広めている和田さん。それまでは、日本のキリンビールで看板商品「キリン一番搾り」のマーケティングを担当していた。欧州で展開するキリンの商品も、まさにキリン一番搾りだ。「キリン一番搾りは、丁寧においしいものをつくる、というキリンのものづくりの精神を一番に体現している商品です。ビール造りは砕いた麦芽をお湯と混ぜるところから始まります。通常は、その後のろか行程で最初に流れ出る『一番搾り麦汁』と、再び湯を加えてろ過した『二番搾り麦汁』を使って造りますが、キリン一番搾りは一番搾り麦汁のみを使用するビール。素材の一番いい部分をどう引き出すか、という醸造技術者たちの思いが、うまみがたっぷり詰まった一番搾り麦汁だけを使うという製法を生み出しました。この丁寧な製法は、キリンならではと言えるでしょう」

キリン一番搾りを製造するバイエルン州立ヴァイヘンシュテファン醸造所
キリン一番搾りを製造するバイエルン州立
ヴァイヘンシュテファン醸造所は、
創業から1000年以上の歴史を誇る

世界でも珍しい本製法で生まれたキリン一番搾りは雑味がなく上品なうまみで、1990年の発売以来、日本で高い人気を誇っている。その高品質なビールは国境を越え、現在は40カ国以上で販売されるまでに。「国や地域ごとに、その土地のお客さんの嗜好に合わせた味を提供するという考えもあると思います。でも、キリン一番搾りはどこにいても同じ品質をお客さんに楽しんでいただくことを目指しています。ビールを届けるうえで大事なのは、鮮度。ドイツの場合は、バイエルン州の醸造所で造られた新鮮なビールを各地へお届けしています。原料となる麦芽や水は欧州産ですが、酵母は日本と同じキリンオリジナル酵母を使用し、もちろん日本と同じ一番搾り製法で造られています」

しかし、日本で人気のあるものが、そのままビール大国・ドイツでも売れるというわけではない、と和田さんは続ける。「特にドイツは、各都市ごとに『おらが街のビール』があるような文化が根付いています。キリンが欧州に上陸してまもない90年代の頃は、そういった文化のなかで日本のビールはなかなか相手にされなかったと聞きました。でも、私たちは自分たちの造ったビールに自信を持っていますから、本場で評価されることが、この仕事のやりがいにほかなりません」

キリン一番搾りの魅力を人一倍知っている和田さん。日本でのマーケティングの経験もきっと、キリン一番搾りという商品への自信につながっているのだろう。

お客さんに日本を体感させるチカラ

近年、キリンは欧州での売り上げが伸びており、なかでもドイツは売れ行きがいい。その理由は日本食レストランだけでなく、人々の日本への関心が高まってきたからだと言う。「キリン一番搾りを日本食と合うビールとして紹介すると、気に入ってくださる方が多いです。なぜ合うのかというと、やはり独特の製法に秘密があります。たとえば、西洋料理はソースを後から足すように味付けをしますが、日本料理はできるだけ素材のいいところを引き出すような作り方をしますよね。それって、とても日本らしい価値観だと思うんです。その日本らしい考え方で造ったビールが、キリン一番搾り。だから、一番搾り麦汁だけを使うんです。言い換えれば、日本食もキリン一番搾りも同じような丁寧な価値観のもとでつくっているから、相性もいいんですね」

ビールに精通するドイツ人だからこそ、こういった説明はおいしさの裏付けとして納得してくれることが多いと言う。日本好きの人であればなおさら、日本のビールで日本の心を感じられるのはたまらないだろう。さらに、レストランでキリン一番搾りを楽しむ際には、ささやかな心配りも。「お客さんにもっと日本を体感してもらいたい……と考案したのが、桜や紅葉をあしらったグラスやマットを使った季節のプロモーション。まだまだキリンを知らないという現地のお客さんが多いので、ブランドの認知度を上げるためにも大事なマーケティングであると思っています」

桜や紅葉をあしらったグラスやマットを使った季節のプロモーション

常に先のビジョンを持つチカラ

これまでは日本食レストランでの販売がほとんどを占めていたが、今後は少しずつ現地の飲食店にもキリン一番搾りを卸していきたいと考えている和田さん。「ワサビやのりなど、日本の食材を料理の一部に取り入れるお店も増えてきましたよね。そんなときに、日本料理と同じ哲学で造られた日本らしいビールとして、西洋料理のシェフの方に気に入ってもらえたらと思っています。それから、キリン一番搾りが一番好きなビールだというお客さんを少しでも多く増やしたいです。ファンの方がキリン一番搾りを自宅でも気軽に楽しめるように、ドイツのスーパーでも購入できるというところまで販路を広げていきたいですね。それが最終的な目標です」

キリングループの理念にこんな言葉がある。「『飲みもの』を進化させることで、『みんなの日常』をあたらしくしていく」。日本の味を背負ったキリンヨーロッパとともに、今後のビジョンをしっかりと掲げて進む和田さん。ドイツ、そして欧州に、これからどんな変化をもたらしていくのだろうか。

 
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