本場ドイツで経験を積む日本人ハンドボール選手

3 August 2018 Nr.1079 文・写真 勝又 友子

ハンドボールの腕を磨くために、本場ドイツへやって来た日本人選手がいます。ドレスデンのチームHCエルプフロレンツ2部で活躍する野口剛(のぐちごう)さん(23)に、ドイツでプレーする魅力を聞きました。

野口剛選手
エルプフロレンツ(エルベ河のフィレンツェ)の景色を背景に、野口剛選手

ハンドボールに出会ったのは、中学生の頃。お兄さんの影響だそうです。強豪高校で経験を積んだ野口選手は、大学でもこの競技を一筋に続けてきました。当初教員を目指して進学しましたが、将来の進路を考え始める大学生活の後半に恩師の影響を受け、本場ドイツで腕を磨きたいと思うようになったそうです。2017年の冬にドイツにやって来た彼は、過去に恩師がプレーしていたザクセン地域でチーム探しを始めました。チームでプレーしたいという意思を慣れないドイツ語で監督に直接伝え、技能を見てもらい、実力を認められました。それ以来、ドイツ語をはじめドイツでのチーム作りや練習方法など、日本との違いを意識しながら日々学び続けています。ドイツでは、練習や試合以外でもチームのコミュニケーションを豊かにする試みが多々あります。野口選手も、チームのメンバーと食事をしたりテレビを観たりボートの大会に出たりして、積極的に関わり合っているそうです。練習は、試合に向けて細かい戦術をきっちり準備した内容になっており、選手一人ひとりが考え、思考の転換を求められます。また、試合開始直前にチームでお酒を回し飲みして士気を高めるなど、メンタル面の安定を図ることも新鮮な体験だったそうです。

HCエルプフロレンツ2部の選手たち
試合後、観客の声援に応えるHCエルプフロレンツ2部の選手たち

選手として活動する期間が限られるスポーツでは、早くから人生の岐路に立たされます。日本で学生を終え、実業団に入りハンドボールを続けるという選択もありますが、ハンドボールだけに費やせる時間や自分を高めるための時間は取りづらくなるのだそうです。さらにハンドボールを極めていくために海外へ出る道を選んだ野口選手は、「ほかの人とは異なる道を選んだけれど、後悔はありません」と真っすぐに答えてくれました。

次シーズンは9月から始まり、2019年の4月まで続きます。「ハンドボールは『コート上の格闘技』と言われるほど、選手同士の接触が多く激しいスポーツ。スピードがあり、多くの駆け引きもある魅力的なスポーツです。言葉では伝わらないハンドボールの良さをぜひコートで味わってください」と、野口選手から皆さんへのメッセージです。

HC Elbflorenz 2006 e.V.: www.hc-elbflorenz.de/startseite
2部チームの試合チケットは会場での購入がおすすめ: www.ballsportarena-dresden.de

勝又 友子
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。