ドイツに広がる日本文化、「Tenjikai」主催の着物販売会

1 Juni 2018 Nr.1075 文・写真 ユゴ さや香

フランクフルト郊外のディーツェンバッハに拠点を置くインテリアとコンサルタント会社「Tenjikai」では、定期的に着物販売や日本関連のイベントを開催しています。代表のノルマン・ザイデルさんは、30年以上にわたってテキスタイルやインテリア業界に従事し、日本のデザインや雑貨に精通しています。ドイツで和風インテリアの提案や設計、ドイツ進出をサポートする傍ら、20年ほど前から着物を集めはじめ、今では草履や帯など着物関係の小物まで幅広い和装コレクションを取り揃えています。

古典柄からモダンまで、センスの良い着物コレクションを持つノルマン・ザイデルさん
古典柄からモダンまで、センスの良い着物コレクションを持つノルマン・ザイデルさん

着物のセール会場に入ると、まずは草履や襦袢などの和装小物が目に入りました。いずれもザイデルさん自らが日本で仕入れたアイテムばかり。さすが調度品やファブリックの仕事に長年携わってきただけあって、いずれも趣味の良い美品が揃います。さらに奥の部屋へ進むと、着物や帯がずらりと並び、品定めをする来場者で賑わっていました。ドイツに住む日本人の着物愛好家から、初めて着物を着るというドイツ人まで、目当ての和装を吟味します。ドイツとは思えないほど充実した品揃えで、品質や状態によっては上質なものでもお値打ち価格だったりするので、掘り出し物を見つける楽しみもありました。色や柄の合わせ方に迷ったらプロの着付け師のアドバイスも受けられるので、初心者でも失敗なく気軽に買い物を楽しめます。まだ一度も着物を着たことがないというドイツ人女性2人組は、「ずっと着物が好きだったから、やっと買えて嬉しい」「これから家で着る練習をしたい」と語ってくれました。

着物セール
帯の合わせ方や着物の着こなしまで、実際に試着してアドバイスがもらえる着物セール

日本文化に感銘を受けたザイデルさんは、剣道歴も長く、会場の地上階に剣道場を持っています。着物販売だけでなく剣道の実演やワークショップ、また本誌1059号で取り上げたAtelier Wabi Sabiの和菓子やお弁当の販売ほか、日本の飲料や日本酒などのグルメ、充実したプログラムで楽しめるイベントでした。

この春からは、さらに総合的に日本の内装や調度品をドイツに広めようと、日本の書道や古い写真などをメインにしたレーベル「Kanoko」を設立しました。また若いデザイナーを起用したファッションレーベル「Yakitori」を運営し、漫画やアニメなどのポップカルチャーをモチーフにしたオリジナルTシャツやバッグなどを制作・販売しています。とにかく日本が「かっこいい」と語るザイデルさん。ドイツで日本文化を広めるべく、今年8月17日から19日には「マイン祭り」と題した日本のお祭りを開催予定だとか。日本食はもちろん、三味線や太鼓、踊りのパフォーマンスからコスプレ大会とワークショップまで、食と芸能の分野で、日本の伝統とポップカルチャーを網羅した楽しいイベントになりそうです。

Tenjikai:www.tenjikai.de
マイン祭り:www.main-matsuri.com

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。