コーラスの夜、歌好きが集まる合唱の祭典

3 August 2018 Nr.1079 文・写真 井野 葉由美

去る6月16日に、今年で27回目を迎える「コーラスの夜(Nacht der Chöre)」が聖ペトリ教会で行われました。15時スタートで24時までノンストップ、全部で25団体が参加していたので、大体1時間に3団体が演奏する計算になります。ハンブルクにこんなにもたくさんの合唱団があるなんて知りませんでした。もちろんドイツには至る所に教会があって、それぞれの教会には聖歌隊があるのですが、この催しの参加合唱団は、教会とは関係ない一般合唱団が大半でした。小学生の子ども合唱団やその保護者も加えた合唱団、少人数のルネサンス・アンサンブルもあれば、ゴスペル・クワイヤーやミュージカル・ナンバーもあって、聴衆を飽きさせません。音楽の完成度の高さを競うのではなく、それぞれの合唱団の特色を出し、楽しんで演奏していることが伝わってきて、まさに「合唱の祭典」という感じでした。またドイツではブラス・アンサンブルのことも「コーラス(Posaunenchor)」と呼びますので、トーマス教会のブラス・アンサンブルも参加して、華を添えていました。

ラッツェブルク大聖堂
演奏するアルト・ラールシュテット合唱団。青少年とその両親たちで構成されています

入場無料で、常に出入り自由なので、お目当ての合唱団だけを聴きに来て、すぐに帰る人もいれば、ずっと聴き入っている合唱が大好きな人まで、聴衆はさまざま。入れ替わりはあっても、会場は常に人であふれていました。プログラムの最後には、割りとよく知られたいくつかの曲の楽譜が載っていて、合唱団の入れ替えの合間に、教会音楽監督の指導により、会場の皆さんで一緒に歌ったり、カノンにしたり。さすがに聴衆も合唱好きが集まっているので、教会堂全体に、良い感じに響いていました。こうやって聴衆にも歌う機会を与えて下さり、聴くだけでなく歌う楽しみも味わえるところは、心憎いばかりの配慮です。合唱は聴くよりも歌う方が楽しく、聴いているうちに自分も歌いたくなってくるというのは、経験者ならきっと納得されることでしょう。さらには「コーラスの夜プロジェクト合唱団」に飛び込みで一緒に歌う人も募集していました。当日の2時間で、ブラームスとメンデルスゾーンの合唱曲を練習し、本番に乗せるというのです。この企画が毎年恒例なら、そのつもりで聴きに来ている人もいるのかもしれません。

大聖堂の中庭にあるバーラッハの作品
聖ペトリ教会に集まった聴衆の皆さんも、演奏の合間に合唱します

主催はプロテスタント州教会のハンブルク地区教会音楽部。教会音楽に限らず、一般の音楽愛好家に広く門戸を開き、教会が人々の集まるところになっているのは、さすがにキリスト教歴史の長いヨーロッパだなと感じました。


井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
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