気球に乗って、バイエルンの空を散歩

7 September 2018 Nr.1081 文・写真 Y. Utsumi

記録的な暑さとなった今年の夏。バイエルンでも連日、青い空が広がりました。その青い空と一体になって景色を楽しみたくなり、8月のある日、熱気球の遊覧飛行(Ballonfahrt)に行って来ました。

バイエルン州内には、気球を体験できるポイントがいくつかあるようです。その中から、ミュンヘンの南東にあるキーム湖(Chiemsee)での遊覧飛行(有料)を予約してみました。余談ですが、ドイツ語では気球に対応する動詞として、「飛ぶ」を意味する「fliegen」ではなく、「(乗り物で)行く」の「fahren」を使うそうです。なんでも、「fliegen」は進行方向をコントロールするものだけど、気球は風のままに飛ぶため厳密な操縦ができないから、だとか。そんなふうに言葉が捉えられていることが、面白いですね。

さて、気球はそのように自然状況に左右されます。そのため、遊覧飛行は大気の状態が安定している時期に限って開催されるので、夏場は早朝と夕方、秋は日中に行われることが多いようです。適切でない天候が予想される場合には予約がキャンセルになることも。7月下旬に予約した時は「雨が予想される」ということでキャンセルとなりましたが、8月の再予約では天候は大丈夫とのことで、無事に体験することができました。

当日は朝早くに集合し、気球の離陸ポイントに向かいます。広い草原で、まずは参加者の男性たちも一緒に、気球を組み上げるところから始まります。準備が終わっている気球に乗るだけじゃないところが、なんだかドイツらしいですね。さて、気球を横たえた状態で、大型送風機で球皮(空気の袋部分)を膨らまし、バーナーを点火して温かい空気が送り込まれます。徐々に浮力を得てきたようで、バスケットが浮かび上がり始めたら急いで乗り込み、空中散歩の始まりです。球皮内の温度と外気温の差、空気の層の特徴を利用しながら、徐々に高度が上がっていきます。小さな街や修道院、農家、森に湖といったバイエルンの風景が眼下に広がり、高さによって見える風景が変わっていきます。この日は高度約2000mまで上がったので、遠くアルプスの山々の連なりを眺めることができました。気球は風と一緒に飛ぶため、体感では無風状態。バーナーの噴射音とパイロットや同乗者の会話だけが聞こえます。バスケットの向きはパイロットが操作できるとのことで、時々向きを変えながら360度のパノラマを堪能していると、あっという間に時間が過ぎていきます。着陸に向けた低空飛行では、道ゆく人が手を振る姿やシカと思われる動物が草原を走る様子などを見ることもできました。

2台の気球で、空中散歩
2台の気球で、空中散歩

バイエルンの自然を上空から楽しむ
バイエルンの自然を上空から楽しむ

湖に囲まれた修道院をゆっくり眺めることができるのも、気球ならでは
湖に囲まれた修道院をゆっくり眺めることができるのも、気球ならでは

こういった遊覧飛行のほかに、アルプスを越えてイタリアまで行く長距離の飛行ツアーなどもあるそうです。冬場のジェット気流を利用するそうで開催可能な日程は限られるようですが、もし機会があれば体験してみたいと思います。

Yoshie Utsumi
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。