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15の春、16の夏
1676号の記事でご紹介した英国のGCSE(General Certificate of Secondary Education)、全国共通試験の結果発表が8月21日にありました。デジタル全盛の時代ですが、GCSEの結果はそれぞれの学校に出かけていって封筒に入った成績表を受け取る、というのが英国の伝統。今もほとんどの学校が生徒たちに成績表を手渡ししているので、6月後半から続いている長い夏休中、子どもたちは皆、久しぶりに登校することになります。GCSEの結果発表日は、毎年、全国ニュースで特集され、テレビやラジオでのライブ報道や、スタジオでの専門家による解説、地域別の特集などが報道されます。前日、校長先生からのメールでわが家の子どもたちの通う学校にも取材が入るという連絡がありました。保護者のFacebookグループ内では、結果発表の日に親も学校について行くかどうかについて意見が交わされていました。子どもたちに「マミィとダディに来てほしい? それとも来られたら困る?」と聞くと「どっちでも構わないよ」というので、英国での暮らし全てに興味がある私としては、自分では経験したことのないGCSE 結果発表日の様子を体感するためにも、学校に同行させてもらいました(もちろん、子どもたちの努力の結果を一緒にお祝いするためでもありますが!)。
午前9時前から続々と集まってくる生徒たち。親が同伴しているのは三分の一くらい。子どもたちは友だち同士で並んで会場に入っていきます。中庭で待っている親たちは穏やかな笑顔で待っていましたが、内心はドキドキしていたかもしれません。
数十分すると、1人、2人と生徒たちが会場から出てきました。晴れやかな笑顔の人、友だちと笑い合いながら封筒の中身を見せ合う人たち、涙目でお父さんの元へ一直線に走っていく女の子。十代の若者たちの様子を見ながら、頑張った一人ひとりに拍手を送ってあげたい気持ちになりました。
ところでこの日は、英国各地のファストフード店やレストランがGCSE取得者向けの特別特典を用意していると宣伝していました。夫の時代にはなかったサービスとのことですが、飲食産業のプロモーションの一環とはいえ、「頑張った自分にご褒美(Treat)」という英国らしいイベントだと思います。
なお、1678号で英国のセカンダリー・スクールでは卒業式がないとお伝えしましたが、GCSEの結果を受け取る日が学校に行く最後の日ということもあり、友だちや先生との別れを惜しむ卒業のイベントともいえる気がしました。また日本と英国で教育制度に違いはありますが、15~16歳という年齢は、どちらの国の若者にとっても大切な時期だということをGCSE結果発表に立ち会って、あらためて強く感じる機会となりました。