ニュースダイジェストの制作業務
Fri, 05 September 2025

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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15の春、16の夏

15の春、16の夏

1676号の記事でご紹介した英国のGCSE(General Certificate of Secondary Education)、全国共通試験の結果発表が8月21日にありました。デジタル全盛の時代ですが、GCSEの結果はそれぞれの学校に出かけていって封筒に入った成績表を受け取る、というのが英国の伝統。今もほとんどの学校が生徒たちに成績表を手渡ししているので、6月後半から続いている長い夏休中、子どもたちは皆、久しぶりに登校することになります。GCSEの結果発表日は、毎年、全国ニュースで特集され、テレビやラジオでのライブ報道や、スタジオでの専門家による解説、地域別の特集などが報道されます。前日、校長先生からのメールでわが家の子どもたちの通う学校にも取材が入るという連絡がありました。保護者のFacebookグループ内では、結果発表の日に親も学校について行くかどうかについて意見が交わされていました。子どもたちに「マミィとダディに来てほしい? それとも来られたら困る?」と聞くと「どっちでも構わないよ」というので、英国での暮らし全てに興味がある私としては、自分では経験したことのないGCSE 結果発表日の様子を体感するためにも、学校に同行させてもらいました(もちろん、子どもたちの努力の結果を一緒にお祝いするためでもありますが!)。

午前9時前から続々と集まってくる生徒たち。親が同伴しているのは三分の一くらい。子どもたちは友だち同士で並んで会場に入っていきます。中庭で待っている親たちは穏やかな笑顔で待っていましたが、内心はドキドキしていたかもしれません。

数十分すると、1人、2人と生徒たちが会場から出てきました。晴れやかな笑顔の人、友だちと笑い合いながら封筒の中身を見せ合う人たち、涙目でお父さんの元へ一直線に走っていく女の子。十代の若者たちの様子を見ながら、頑張った一人ひとりに拍手を送ってあげたい気持ちになりました。


ところでこの日は、英国各地のファストフード店やレストランがGCSE取得者向けの特別特典を用意していると宣伝していました。夫の時代にはなかったサービスとのことですが、飲食産業のプロモーションの一環とはいえ、「頑張った自分にご褒美(Treat)」という英国らしいイベントだと思います。

なお、1678号で英国のセカンダリー・スクールでは卒業式がないとお伝えしましたが、GCSEの結果を受け取る日が学校に行く最後の日ということもあり、友だちや先生との別れを惜しむ卒業のイベントともいえる気がしました。また日本と英国で教育制度に違いはありますが、15~16歳という年齢は、どちらの国の若者にとっても大切な時期だということをGCSE結果発表に立ち会って、あらためて強く感じる機会となりました。

 
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マクギネス真美マクギネス真美
在英ライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。ポッドキャスト「The Real You with Mamita」とVoicy「英国からの手紙」のパーソナリティー。英国人義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して
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