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Fri, 22 November 2024

NHS 現役看護師が語るコロナ時代の医療

本記事に掲載の内容は執筆者個人の見解であり、組織の公式的な見解を示すものではありません。


ピネガー由紀
ピネガー由紀
大学病院で働く現役NHS看護師、フリーの医療通訳者。日本での看護師経験はなく、成人してから義務教育(GCSE)を経て、2013年マンチェスター大学看護学部卒。正看護師として、外科部門で病棟、手術前アセスメント、入院管理、学生指導などを担当。2020年4月から感染状況により新型コロナウイルス感染病棟に招集をされている。自身のYouTubeチャンネルでは医療英語や看護師の日常を発信。
YouTubeチャンネル:イギリス現役看護師Yuki

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NHS医療通訳の裏話

コロナ感染対策の制限が大幅に解除されたことで、日本から英国への渡航者も再び増加してきました。そのためか、私は本業の看護師の傍らフリーランスで医療通訳の仕事もしていますが、最近日本人の方から医療通訳についてお問い合わせを複数いただいています。

言葉の壁がある患者への診察には、病院側が無料で通訳を手配することが患者の権利としてNHSで定められています。しかし、言い換えるなら患者の家族や友人はもちろん、プロの医療通訳であっても、病院では患者が手配をした医療通訳者を使うことはできません。誤訳などの場合の責任の所在、主観が入らない客観性のある通訳でなければいけないことなどが理由です。例外的に、患者側からの説明や確認など短いものは、家族が通訳を務めることもありますが、これはグレーゾーン。特に、検査や治療などのインフォームド・コンセントでサインが必要なときに患者が手配をした医療通訳を使うと、担当の医療従事者が責任を問われます。通訳形態ですが、コロナ以前は対面式が主でしたが、コロナ以降、今現在でも対面式は大幅に減り、代わりに電話通訳が主となっています。

さて、ここで医療通訳の裏話をしてみましょう。私は今まで20カ国以上の通訳者と仕事をしてきましたが、正直そのクオリティーは通訳者で個人差があります。ミスや誤訳というわけではなく、通訳者が単語の意味を英語でも母国語でも知らないなど知識不足だと、そのたびに別の言葉で言い換えていきます。これは通訳者が言葉が分からないときの応急処置としては正しい方法ですが、頻繁にこの方法が取られると、肝心の医療者と患者の会話が乱されてしまいます。ただ、これは通訳者個人の責任ばかりではありません。最大の問題点は病院側が「守秘義務」という名目で通訳内容の概要を事前に一切出さない、つまり通訳は事前準備ができないことにあります。通訳者に事前提供される情報は、基本的に日時と外来、病棟名やユニット名のみ。あとは通訳が始まるまで何も分からないぶっつけ本番なのです。シンプルな通訳の場合はこれで問題ありませんが、がんなどで何度も検査と主治医とのコンサルテーションを受けた後で、突然通訳として呼ばれると本当に厳しいものがあります。この状態で通訳者の実力を決めつけるのは酷ではないか? と感じます。

それではNHS病院で医療通訳者の依頼を検討中の方に考慮すべきポイントを挙げてみましょう。まず、一般会話は問題がないけれど医療用語が心配と思われる方。NHSではトップ・ドクターであっても専門用語は極力使わず、患者が理解できる言葉を使う義務があります。病院によっては模擬診療を行い、医師の説明の分かりやすさを調査するほどです。一般会話ができれば医師の会話とはあまり苦労しないかと思われます。それでも医療通訳者の手配を希望したい場合には、短い箇条書きでもノートをとることをお勧めします。通訳の訳出に抜けや不備があると、後で医師に質問をしたときにつじつまが合わないことで判明します。復唱をしたいときにも役に立ちます。医療通訳をうまく活用して、皆さんが安心できる医療を受けられることを願っています。

 

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