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やや体育会系っぽいNHS研修医の上下関係
9月に入り英国の新年度が始まりました。新しいクラス、学校が始まる人も多いかと思います。8、9月はNHS病院の研修医の交代時期でもあります。どんなにスキルと経験がある研修医でも、新しく勤務する職場では気疲れもするし緊張もします。今回はNHSドクターに存在するちょっと意外な?上下関係と、「ノー」と言わない研修医について書いてみます。
単に研修医と言ってもランクがあり、大学を卒業して間もない研修医から、特定の専門分野を学び上級医師の監督下で手術も行える専門研修医までさまざまです。共通しているのは、研修医は一定期間ごとにあちこちの病院を回る必要があるということ。新しい職場でスーパーバイザーについて仕事をして、そこの病院で評価を受けていきます。
私は看護学生時代から数えると10年以上NHSにいますが、NHSのドクターの上下関係を見ると、たまに中学高校時代の運動部の、先輩後輩の関係を思い出すことがあります。
研修医の仕事には事務作業も多く、例えば入院病棟での朝の回診前や手術前などは必要と思われる情報収集をしておき、患者の既往歴や普段の服用薬、検査の結果などを把握して質問に答えられるようにしておきます。しかし、上級医からこれらを矢継ぎ早に聞かれ、そのたびに「えーと」と言いながら記録用紙をガサガサ探しまくる段取りの悪い研修医が、上級医師から怒られている姿をたまに見掛けます。
上級医師によって事務作業のやり方が異なり、研修医はそれに合わせていくことも必須です。例えば血液検査の結果を患者ごとに紙に印刷を希望する上級医師、逆にパソコンから直接記録ページを見たい上級医師など方法はバラバラ。ここでも上級医の好むやり方と違う方法をとり、怒られる研修医がいます。手術前であれば同意書などの書類、手術部位に矢印をつけるマーキングペンなど備品を用意するのも研修医の仕事ですが、着任したばかりで備品の保管場所も人に聞きながらやらざるを得ないし、検査結果を印刷中にインク切れや紙詰まりなどの不測の事態が起きるなど、大抵の仕事はスムーズには進みません。それでも上級医師が病棟に来てもまだバタバタしていると、さらに怒られることもあります。なので、前日の勤務終了後に、翌日の準備のために残る研修医も多くいるのが現状です。
以前の職場で、上級医師がある研修医のことを「彼は優秀。ノーと言わないから」と話していて、研修医の立場の大変さを肌で感じました。上級医から言われたことは逆らわずに「はい」と言って聞き入れる姿は、日本の体育会系の部活動をどことなく思い出させます。
こんな大変な研修医たちですが、社交的な研修医ほど仕事が早く上手くいく傾向にあります。着任してすぐに看護師をはじめとした病棟スタッフと積極的にコミュニケーションを取る研修医は、備品の置き場所や印刷機のトラブルなどでも病棟スタッフがその場を快く助け、作業をさっさと終えていけるからです。
毎年この時期になり着任したての研修医をみるたび、社交性やコミュニケーション・スキルはどの職場でも大切なのだと痛感し、自分も見習うようにしています。