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Mon, 23 December 2024

辻井 伸行 / 諏訪内 晶子 / 庄司 紗矢香 - ウィグモア・ホールで開催されるエイベックス・リサイタル・シリーズに出演

辻井伸行 諏訪内晶子 庄司紗矢香

ロンドン有数の繁華街にありながら、静けさが漂う瀟洒な建物。客席数は550とコンサート・ホールにしてはこぢんまりとしているが、1901年の開場以来、歴史に名を残す演奏家たちが極上の音楽を奏でてきた。この空間で4、5、6月の3カ月にわたり、「エイベックス・リサイタル・シリーズ」と銘打って日本を代表する音楽家3人のリサイタルが開催される。今回は、4月に行われたコンサートを大成功に導いたピアニスト辻井伸行に加え、5月と6月にそれぞれ演奏を行うヴァイオリニストの諏訪内晶子と庄司紗矢香にインタビュー。演奏活動、そして普段の生活などについて話を聞いた。

avexWigmore Hall
36 Wigmore Street, London W1U 2BP
Tel: 020 7935 2141
Bond Street/Oxford Circus 駅
https://wigmore-hall.org.uk

ヴァイオリニスト 庄司紗矢香

日本、イタリア、ドイツ、フランスと世界数カ国に生活の拠点を置いた経験を持つ庄司紗矢香は、複数の文化を内包した深みのある表現力で世界の大舞台をうならせてきた。ビジュアル・アートに興味を持ち自らも筆を取って絵画を描き、自分の音色を映像化する試みも行うという多角的なアプローチで芸術を見据える彼女は、同時に日本人であることの意味も自身に問い掛けながら自分の音楽を追求している。

言語は音楽と深く結びついている

PROFILE
SAYAKA SHOJI
東京都出身、フランス・パリ在住。3歳からイタリア・シエーナへ。2年後に帰国し、小学校6年生のときに全日本学生音楽コンクール全国大会で第1位を獲得。1998年からヨーロッパを拠点に活動。99年にはパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで日本人初、史上最年少優勝を果たした。2004年にケルン音楽大学卒業。現在はソリストとして世界各地で著名指揮者 / オーケストラと共演しつつ、室内楽活動にも力を入れている。

日本に加え、ヨーロッパ各国で生活されたご経験をお持ちですが、今はどちらを拠点にされているのでしょうか。

2005年からパリを拠点にしています。

複数の文化圏で生活し、複数の言語を話す作家の中には、言語を変えることにより自ら書く文章の雰囲気が変わるという方がいらっしゃいます。庄司さんは演奏される際、そのような違いを感じられることはありますか。

言語は音楽と深く結びついていると思います。言語は文化やメンタリティーにつながっていると同時に、その国の音楽の根源である詩や歌に根付いているものです。したがって、作曲家の話す言語を知ることは、作品の世界観の理解への初めの一歩であると思います。チェコ語やハンガリー語のように少しもマスターしていない言語圏の作曲家の曲を弾く場合は、せめてその言語の抑揚やリズム感だけでもよく聞いて学ぶようにしています。

英国での活動についてご質問させていただきます。これまで英国では頻繁に演奏されていらっしゃいますが、演奏活動を行う上での英国、ロンドンについての印象をお聞かせいただけますか。

2001年、バービカンでユーリ・テミルカーノフ指揮ボルティモア交響楽団のコンサートで代役としてデビューしてから、定期的にロイヤル・フェスティバル・ホールやバービカンで、ロンドン交響楽団やフィルハーモニア管弦楽団と演奏してきました。ロンドンはオーケストラが大変プロフェッショナルで、リハーサルの時間がとにかく短いのが印象的です。そのほか、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団との英国ツアーに参加したこともあります。ウィグモア・ホールは今回が初めてで、とても楽しみにしています。

音楽活動以外でロンドンについて印象に残っているのは?

やはり美術館ですね。テート・モダンはお気に入りで、ほとんど毎回、ロンドンに来るたびに行っています。

演奏活動でお忙しい毎日を過ごされていますが、音楽以外でお好きなこと、趣味などはありますか。絵を描かれると伺ったことがありますが。

絵を描くのは、ヴァイオリンの練習と同じくらいの精神的な集中力が必要になるので、練習を終えて元気が余っているときに取り掛かります。音楽の映像化を試みたエクスペリメンタル・ビデオ・プロジェクト「シンエステジア」も同じく、かなりの時間とエネルギーを要するので、2007年から始めてまだ4作しかできあがっていません。息抜きには料理やヨガ、散歩などをしています。移動中は、起きていれば本を読みます。

庄司 紗矢香さん

5月に開催されるラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2016では、マックス・リヒターがリコンポーズしたヴィヴァルディの「四季」を演奏されると伺いました。クラシック音楽に新しいアプローチを取り入れることについてはどのようにお考えですか。

リヒターはヴィヴァルディの「四季」に、21世紀の息吹をかけました。普遍的な名曲にこのような形で手を加えることは大変な挑戦だと思いますが、これは成功した例だと思います。単に新しいだけでなく真に優れた芸術は、現代の芸術のビジネス化という危機を乗り越えて、これからもずっと受け継がれていくものと強く信じています。

2015年には桐朋学園大音楽学部の「特命教授」に着任され、自ら演奏するだけでなく、後進の指導にも当たられています。音楽を「教える」上で大切にされていることは何でしょうか。

まだ教えることは定期的な活動ではありませんが、そのような機会があるときには、生徒さんが上手に弾くことではなく、その作品が何を伝えたいのか、そのためにどんな音やフレージングが欲しいのか、ということにフォーカスができるように、と思っています。

ウィグモア・ホールで6月に行われるコンサートで共演されるピアニストのジョナサン・ギラードさんについてお聞きます。フランス系イスラエル人ピアニストとのことですが、以前から一緒に演奏される機会などがあったのでしょうか。

だいぶ前にフランスで行われた音楽祭で共演して去年、再共演しました。自然と息が合ったので今回お願いしました。大変誠実な音楽家であると同時に、学者でもあるという一風変わった経歴の持ち主です。

コンサートで演奏される演目は、どのような経緯で決まったのでしょう。現代音楽家の細川俊夫さんの新曲も演奏されますね。

細川俊夫さんとは何年か前にお知り合いになる機会があり、お話を重ねていくうちに、日本人であることとは何かということを考えさせてくださいました。今回書いていただいた曲は、「エクスタシス(脱自)」というタイトルがつけられたソロ曲ですが、「エゴから抜け出る」というメッセージが込められています。それは日本人の強みでもあると同時に、クラシック音楽にアプローチする際、一番大切なことでもあると思っています。

Avex Recital Series
Sayaka Shoji violin; Jonathan Gilad piano

6月18日(土)13:00 £20
Wigmore Hall 36 Wigmore Street, London W1U 2BP
Tel: 020 7935 2141
Bond Street / Oxford Circus 駅
https://wigmore-hall.org.uk


細川俊夫「エクスタシス(脱自)」
モーツァルト「ヴァイオリン・ソナタ第25番 ト長調」
シューマン「ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調」
ブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調」

 

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