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Fri, 08 November 2024

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

今回は、不法移民を取り締まることを目的として、政府が昨年に概要を発表した移民に関する法案(Immigration Bill)について解説します。同法案が成立すれば、政府は一連の改革を通じて不法移民をより容易かつ迅速に強制退去させることができるようになると謳っています。また同法案は、不法移民だけに留まらず、正規の入国手続きを経た移民にも少なからず影響を及ぼす可能性があります。私たち在英邦人も例外ではありません。今回は、今年1月に下院を通過し、現在は上院での審議の対象となっている同法案が、英国で暮らす外国人の生活にどのような影響を与え得るかについて説明致します。

●大家による入居者の滞在許可確認を義務付け

移民に関する法案について最も注目を集めている内容の一つが、英国内にある貸家の大家に、入居者が適切な滞在許可を所持しているか否かを確認することを義務付けるというものです。この内容が実際に法制化されれば、日本人を含む英国への移民は、ヒースロー空港などからの入国時や滞在許可の延長・変更の申請時に加えて、入居先においても定期的に滞在許可証の確認を受けなければならないことになります。この措置の可否をめぐってはいまだ議論が続けられている最中ですが、実施された場合、その影響は大家や入居者にとっての面倒が増えるということに留まりません。双方それぞれに本格的な対策が必要とされる可能性があります。

例えば現在、英国において日本人を始めとする非欧州連合(EU)国籍の外国人労働者を雇用する場合、雇用者は「スポンサー・ライセンス」と呼ばれる資格を内務省へ申請し、取得することが義務付けられています。煩瑣(はんさ)な手続きを要 するため、多くの企業がスポンサー・ライセンスの取得や更新にはビザの専門家に相談を行っているというのが現状です。そして、移民に関する法案が成立した暁には、規定に反した場合の罰金措置などを回避するために、貸家の大家も同様にビザの専門家に相談することが必要となるかもしれません。

また英国在住者であれば、友人や家族を自宅に呼び寄せて短期的に共同生活を送ることもあるでしょう。こうしたことが気軽に行うことができなくなる可能性もあります。

●短期滞在者によるNHS費用の負担

移民に関する法案の内容でもう一つ話題となっているのが、英国に短期間のみ滞在する移民が国民医療制度(NHS)を利用した場合には、費用の負担を求めるというものです。現在のところ、外国人であってもNHSへの加入が認められた場合は原則的に診察時に支払いをする必要はありません。また緊急治療の大部分は、たとえ短期旅行者であったとしても、国籍や滞在期間を問わず費用は無料というのが通例となっています。しかし、移民に関する法案では、短期滞在者によるNHS利用に際しては、今後は利用者本人または出身国の政府に金銭的負担を求めるという方針が示されています。この方針についても実施すべきか否かをめ ぐっては現在も議論が行われている最中です。

このように、政府は移民の締め付けを強めていく一方です。こうした状況下においては、滞在許可証の取得に際してのちょっとしたミスが命取りとなりかねません。滞在許可の取得・更新・変更などにおいて、今後はこれまで以上に専門家の力が必要となるでしょう。英国への滞在許可証を確実に取得するためにも、手続きは専門家と二人三脚で、そして早い段階で準備を開始することをお勧めします。

 

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