各国でヒット中の映画「ボヘミアン・ラプソディ」英国のシニカルな見方とは - 熱狂的なファンができた国はどこか?
ロック・グループ「クイーン」を題材にした映画「ボヘミアン・ラプソディ」(英国では10月24日、日本では11月9日封切り)が日英で大ヒットとなっているようです。
映画の題名は「ボヘミアン・ラプソディ」というヒット曲(リリースは1975年)に由来していますね。2012年に、民放テレビ局のITVが英国民に過去60年間で最も好きな曲は何かを聞いたとき、堂々と1位になったのがこの曲でした。
クイーンのメンバーはフレディ・マーキュリー(リード・ボーカルとピアノ)、ブライアン・メイ(リード・ギターとコーラス)、ロジャー・テイラー(ドラムとコーラス)、ジョン・ディーコン(ベース)の4人です。1970年に先の3人で結成され、翌年ディーコンが加わりました。
クイーンは、華麗でドラマティックな、そして遊び心もある英国らしいロック音楽を次々と生み出しました。これまでのレコード売り上げ数は1億から3億枚とも言われており、その枚数は世界でもトップ・クラスです。
さて、クイーンといえば、フレディ・マーキュリー。類まれな歌声と作曲能力を発揮してクイーンの要となった人物ですが、1991年、HIV感染合併症による肺炎で惜しくも45歳の若さで亡くなってしまいました。
映画ではこのフレディがほかのバンド・メンバーたちと出会い、グループが大成していくまでを描いています。クライマックスは、1985年にウェンブリー・スタジアムで開催された「ライブ・エイド」コンサートでの、フレディの熱唱です。米俳優ラミ・マレックが演じるフレディの姿に本物を重ねる人も多いかもしれません。映画化の構想は2010年に始まったそうですが、8年越しの完成となりました。
日本での映画の評判を見てみたのですが、絶賛しているものが多く、筆者の友人・知人の間でも「感動した」「泣いた」という声が続々と上がりました。ではクイーンを生んだ国、英国ではどうなのでしょう?
シニカルに物事を見るのが国民の習性となっている英国でも、おおむね好評ではあるのですが、厳しい見方もあります。例えば、星5つが最高点のなかで「星2つ」をつけたのが、「ガーディアン」紙の映画評(10月23日付)です。ほかの批評家が絶賛するマレックの演技は「初めは、当惑させられる」、そのきどった英国アクセントは「過剰すぎる」とケチョンケチョン。ライブ・エイドでのパフォーマンスは「なりきっている」としているものの、「物真似の妙技だね」とバッサリです。
結局、何が気に入らないのかというと、ほかの辛口批評家も指摘しているのですが、ミュージシャンとしてのフレディは描けているものの、バイセクシャルであったことを含めて「人間としての」フレディに迫っていないからだそうです。
英国のテレビはクイーンについてのドキュメンタリー番組をよく放送していますが、辛口批評はこうした番組を凌ぐ「プラスアルファ」を期待した故なのかもしれません。
ところで、クイーンの魅力を早い時期に「発見した」のはどこの国の人でしょう?
実は……日本人だと言われています。英国でも米国でもまだそれほど人気が出ていなかった1974年、雑誌「ミュージック・ライフ」の編集者だった東郷かおる子さんがクイーンのルックスと音楽に感動し、記事を掲載するようになったそうです。そんなこともあり、1975年にクイーンが初来日したときには、熱狂的なファンが空港に詰めかけました。筆者も当時、デビュー・アルバムを聴いてショックを受けた一人です。
筆者はまだ映画を観ていないのですが、観た方が絶賛しているとすれば、その理由は物語というよりも音楽そのものに感動しているからではないでしょうか。音楽はその時々の記憶を呼び起こしてもくれますよね。ぜひ、終わる前に観に行きたいと思っています!