Atonement(2007/ 英)
つぐない
英国のブッカー賞受賞作家イアン・マキューアンの「贖罪」を基にした悲恋の大河ドラマ。
監督 | Joe Wright |
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出演 | Keira Knightley, James McAvoy, Saoirse Ronanほか |
ロケ地 | Stokesay Court, Shropshire |
アクセス | 電車: Ludlow駅からタクシーで約10分 *見学には予約が必要 |
Web | www.stokesaycourt.com |
- デカ長、今回「つぐない」を取り上げるにあたり、女刑事・浅宮サキコが少々、物申したいと名乗り出て参りました。
- おっ、何事だ。
- 彼女、本作でロビーを演じたスコットランドの俳優ジェームズ・マカヴォイの大ファンらしいんですよ。ね、浅宮さん。
- どうもこんにちは。私がマカヴォイ君と初めて出会ったのは映画「ナルニア国物語」でした。気の良さそうな半身半獣のタムナスさんを演じていたんです。
- おおっと、誰も聞いてないのに一人で喋り出してるぞ。
- でも彼にグッと惹かれたのは、何と言ってもこの「つぐない」だったんですねえ。
- ううむ、ツッコミも無視する語りっぷり。これは相当熱いな。で、彼のどんなところにそんなに惹かれているのかね。
- まず、あの滲み出るような色気です。穏やかな表情の裏に見え隠れする妖しさ。いわゆる草食系の魅力とでも言うんでしょうか。しかも本作で演じているのは、無実の罪を着せられて刑務所送りにされ、愛する人と離ればなれになるという不遇の青年。色っぽい人が苦しむ姿がもうたまりません。
- うわー、浅宮さん、かなりのSですね。
- フフ……。実は私、彼の舞台も観に行ったの。しかも最前列ど真ん中、かぶりつきです。そこで彼は対照的な性格の二役を演じていたんですが、どちらも甲乙付けがたく……。一方では彼の狂気を宿した射るような視線にシビれ、もう一方では気弱で繊細な雰囲気に母性本能くすぐられまくり。小柄ながら存在感抜群、英国の俳優で今一番熱いのは彼でしょう。そしてこの「つぐない」も、彼でもっていると断言します!
- どわー、言い切ったあー。
- 盛り上がってるところ恐縮ですが、ここでロケ地情報です。物語前半の舞台となるタリス家の豪邸は、シュロップシャー州にある1889年建造のヴィクトリアン・ハウス「Stokesay Court」が使われています。ちなみにここでは現在も本作にちなんだガイド・ツアーが予約制で行われております。
- 個人的に印象深かったのは「ダンケルクの撤退」のシーンだな。
- ステディカムを使って約5分半にわたり長回し撮影を行ったという圧巻のシーンですね。あれは実はフランスではなく、英国北東部のリゾート、Redcarで撮影されています。2000人もの兵士たちはすべてエキストラとして参加した地元の人々なんだそうですよ。また、ダンケルクへの道のりも、リンカンシャー州やノーフォーク州など、英国各地で撮影されています。例えば、歩いて行くロビーの後ろ姿が印象的な、鮮やかなポピーが咲き誇る野原は、グロスタシャー州のCheltenhamで撮影されました。映画「プライドと偏見」のスタッフによるものだけあって、映像美が際立っていますね。
- そう、その美しい映像にマカヴォイ君がまた映えること。爽やかな草原も、悲壮な戦争の場面も、どちらも見事にハマってしまうところに彼のカメレオン度の高さが表れています。本作の後に出演したアクション映画「ウォンテッド」ではややマッチョな体になっていて、それはそれで釘付けだけど、でもマッチョは程々に、演技派の道を極めてほしいと切に願っています。
- って、勝手に締めに入ってるしー。今日はすっかりマカヴォイの名前を刷り込まれたわい。
今回は浅宮君の乱入でマカヴォイ三昧であったが、この映画、見終えた後に何とも言い難い感慨をもたらす作品だ。特に13歳のブライオニーを演じたシアーシャ・ローナンが素晴らしい。ブライオニーの嘘は罪悪だが、大人たちの無神経さやはしたない行為が、私にはそれ以上に罪悪に見えるぞ。彼女は結局、老境を迎えるまで一人ぼっちでその罪と闘ってきた。最後の衝撃の告白に、罪悪感や自尊心を含めた彼女の心の葛藤が表れていて、胸が締め付けられるな。
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