24 Hour Party People(2002 / 英)
24アワー・パーティー・ピープル
80年代後半〜90年代前半にマンチェスターで起こった音楽ムーブメントを、中心人物の回顧録とともに追うドラマ。
監督 | Michael Winterbottom |
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出演 | Steve Coogan, Shirley Henderson, Lenny Jamesほか |
ロケ地 | Granada Studio |
アクセス | Granada TV Studios, Manchester M60 9EA *現在、見学ツアーは行われていない |
- ♪らぁ〜ぶ、らぁ〜ぶてぃーあすあぱーたげぇぇぇん、っと。
- おお、デカ長、それはもはや伝説のポスト・パンク・バンド、ジョイ・ディヴィジョンの「Love will tear us apart」ではないですか。演歌調なのが気になりますが。
- うむ、久しぶりにマッドチェスターを描いた「24アワー・パーティー・ピープル」を見て懐かしくなってな。
- 念のため説明しておきますと、マッドチェスターとはマンチェスターに「Mad」を掛け合わせた言葉で、かつてここで起こった音楽ムーブメントの呼称です。ニュー・オーダーとかハッピー・マンデーズなんかが代表的なバンドですね。
- そしてそのマッドチェスターを語る上で欠かせないのが、1978年創設のインディー・レーベル「ファクトリー・レコード」と、同レーベルが運営するクラブ「FAC51ハシエンダ」の存在です。本作は、コメディアンのスティーヴ・コーガン扮する「ファクトリー・レコード」の創設者、トニー・ウィルソンを案内役に据え、レーベルおよびムーブメントの興亡を描いています。
- 監督は毎回のように異なるテイストの作品を手掛けているマイケル・ウィンターボトム。事実を基に、噂や伝説、空想なども織り交ぜているほか、当時のライブ映像やローカル・ニュースなども要所に挿入し、一つの時代を巧みに切り取っています。
- トニー・ウィルソンはそもそもマンチェスターのローカル局「グラナダTV」のプレゼンターなんだよな。
- はい、映画内のグラナダTVのシーンは実際に同局のスタジオで撮影されています。ちなみにグラナダ・スタジオは、ソープ・オペラ「コロネーション・ストリート」の撮影現場でもありまして、2008年までヴェラ役を演じていたリズ・ドーンが本作にカメオ出演してるんですよ。
- カメオ出演の数は相当なものですね。トニーがなりゆきで娼婦と絡んでいるのを見た妻のリンゼイが、当てつけにバズコックスの初期のヴォーカリスト、ハワード・デヴォートとトイレでセックスするシーンがありますが、そこに居合わせる清掃員の男は、デヴォート本人です。また前半の「ファクトリー・ナイト」のシーンはマンチェスターのOxford Streetにある「Jilly's」というヴェニューですが、入口でトニーが挨拶を交わすのは、ザ・フォールのマーク・E・スミス。ほかにも縁の人物が数多く登場しているので、探してみると面白いでしょう。
- ところで肝心の「ハシエンダ」は、撮影時には取り壊されていたんだよな。今はマンションになっているらしいが。
- そうなんです。外観は実際にヴェニューがあったWhitworth Street WestとAlbion Streetの角にある建物をきっちり押さえているんですけどね。ちなみにハッピー・マンデーズのPV撮影のシーンは「The Ritz」というクラブで行われていますね。
- 「ハシエンダ」は1982年にオープンし、マッドチェスターで全盛期を迎えますが、実はあのマドンナも1984年にここでUKデビューを飾っているんですよ。
- ヴェニューは結局、1997年に閉鎖となるものの、イベントという形で復活し、今も時々、欧州各地のヴェニューでクラブ・ナイトを開催しているとか。ニュー・オーダーのベーシスト、ピーター・フックも絡んでいるようですよ。
70年代後半以降の英国の音楽シーンの系譜とともに、ムーブメントというものがどんな要因とタイミングで発生するのか、そのケミストリーが垣間見られる一本だね。時代の風潮、大いなる情熱、快楽主義、私利私欲など、そこにはあらゆるものが渦巻いている。なんにせよ「Mr.マンチェスター」ことトニー・ウィルソンに乾杯だ。彼は晩年、腎臓がんを患い、2007年に57歳で逝去。棺にはファクトリー・レコードのカタログ番号「FAC51」が記されたそうだ。
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