2011年の国勢調査で判明
イングランドとウェールズで過去最高の人口増
少子化に悩む日本とは対照的に英国では人口が増加しており、その事実が数字で証明されるのが、10年に1回実施される国勢調査である。最近、昨年の3月に行われた国勢調査で分かったデータが発表され、英国社会の変化を垣間見せてくれた。
2011年3月の国勢調査で分かった
イングランドとウェールズに関する人口などのデータ
総人口 | 5607万5900人 |
女性の総人口 | 2850万人 |
男性の総人口 | 2760万人 |
65歳以上の総人口 | 922万3000人(総人口の16.4%) |
90歳以上の総人口 | 43万人(総人口の0.76%) |
5歳以下の総人口 | 350万人(総人口の6.2%) |
全世帯数 | 2340万世帯 |
1世帯当たりの平均人数 | 2.4人 |
1平方キロメートル当たりの平均人口密度 | 371人 |
ロンドンのみの1平方キロメートル当たりの平均人口密度 | 5200人 |
イングランドとウェールズの人口推移
— 過去200年の国勢調査の結果より
Source: Office for Nantional Statistics
人口増加率が最も高かった10自治体
自治体 | 地域名 | 2011年3月時点での人口 | 2001年国勢調査実施時からの人口減少率 |
---|---|---|---|
Tower Hamlets区 | ロンドン | 25万4000人 | 26.4% |
Newham区 | ロンドン | 30万8000人 | 23.5% |
Manchester市 | イングランド北西部 | 50万3000人 | 19.0% |
Hackney区 | ロンドン | 24万6000人 | 18.9% |
Hounslow区 | ロンドン | 25万4000人 | 17.6% |
Greenwich区 | ロンドン | 25万5000人 | 17.1% |
Milton Keynes市 | イングランド南東部 | 24万9000人 | 17.0% |
Leicester市 | イングランド中部 | 33万人 | 16.7% |
Peterborough市 | イングランド東部 | 18万4000人 | 16.6% |
Waltham Forest区 | ロンドン | 25万8000人 | 16.3% |
人口減少率が最も高かった10自治体
自治体 | 地域名 | 2011年3月時点での人口 | 2001年国勢調査実施時からの人口減少率 |
---|---|---|---|
Barrow-in-Furness市 | イングランド北西部 | 6万9000人 | -4.0% |
Knowsley市 | イングランド北西部 | 14万6000人 | -3.5% |
Sefton市 | イングランド北西部 | 27万4000人 | -3.2% |
Sunderland市 | イングランド北東部 | 27万6000人 | -3.2% |
South Tyneside市 | イングランド北東部 | 14万8000人 | -3.1% |
Redcar and Cleveland市 | イングランド北東部 | 13万5000人 | -2.9% |
Burnley市 | イングランド北西部 | 8万7000人 | -2.8% |
Kensington and Chelsea区 | ロンドン | 15万9000人 | -2.2% |
Middlesbrough市 | イングランド北東部 | 13万8000人 | -2.0% |
West Somerset市 | イングランド南西部 | 3万5000人 | -1.1% |
1801年から10年ごとに実施
国民統計局(ONS)は先月16日、昨年3月27日に実施された国勢調査(census)で分かった人口などのデータを発表した。英国では、10年に1回、国勢調査が行われており、その時点での英国在住者に関する様々な情報を集めている。ONS が今回発表したのは、イングランドとウェールズに関する統計であり、北アイルランドの結果は、やはり先月16日に、北アイルランド統計・調査局(NISRA)が発表した。スコットランドの結果は、今年12月に明らかにされる予定である。本稿では、イングランドとウェールズの結果について紹介する。
発表によると、2011年3月27日時点でのイングランドとウェールズの総人口は、2001年の国勢調査実施時から370万人増え、約5610万人であった。増加率は7.1%で、国勢調査が開始された1801年以降、過去最大である。ONS によると、人口増の原因の一つは、出生数が死亡数を上回ったことである。2001年3月から2011年3月までのイングランドとウェールズ内の出生数は660万人であったのに対し、死亡数は500万人であった。もう一つの理由は、移民の流入及び国内での人口の移動(スコットランドまたは北アイルランドからのイングランド及びウェールズ内への移動)である。
五輪会場周辺で人口増
自治体別に2001年からの人口増加率を比較した統計では、上位10自治体に、ロンドンのタワー・ハムレッツ区、ニューアム区、ハックニー区、ウォルサム・フォレスト区と、ロンドン東部の五輪会場周辺の自治体が4つも含まれた。タワー・ハムレッツ区のラトファー・ラーマン区長は、この結果について、「オリンピックが東ロンドンに新たな成長をもたらした事実が反映された」と述べている。逆に、人口が減少したのは、イングランド北西部及び北東部の自治体が多かった。人口減少率が2001年比でマイナス4%と最も高かったイングランド北西部のカンブリア州バロー・イン・ファーネス(Barrow-in-Furness)市は、かつては鉄鋼業や造船業で栄えた街である。
高齢化の傾向が顕著
また、高齢化の傾向は、今回発表されたデータでも如実に現れており、65歳以上の人が人口全体に占める割合は16.4%と、国勢調査開始以来、最高を記録した。90歳以上の人口数は43万人との結果になり、100年前(1911年)の1万3000人から、実に33倍も増えていることが分かった。さらに、一世帯当たりの平均人数は、2.4人と、1911年の4.3人から約半分に減っていることも明らかになった。
一見すると単なる数字の羅列のように見えても、その背景に、英国社会の変化を読み取ることができる国勢調査のデータ。2021年に次の調査が実施されるときまでに、英国はいかなる変化を遂げ、これらの数字はどのように変わっているのだろうか。そうした想像に思いをめぐらせながら、これらのデータを眺めてみるのも面白いかもしれない。国勢調査に関する更なる情報は、ONS のウェブサイト(www.ons.gov.uk/ons/guide-method/census/2011/)を参照のこと。
Census
国勢調査。英国では1801年以降、10年ごとに実施されている(ただし戦時中の1941年を除く)。目的は、政府が地域の人口の増減を把握し、公共支出の分配に反映させることなどである。調査の実施方法は、各世帯に調査用紙が配布され、居住者が、名前、性別、生年月日、国籍、人種、婚姻の状態、健康状態などを含む質問に答える。2011年より、インターネットでも回答できるようになった。国勢調査で回収された調査票は、調査実施から100年は公開されない。既に実施から100年経った1911年の国勢調査の結果は、インターネットで公開されている(www.1911census.co.uk)。(猫山はるこ)
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