第8回 人物写真の印象を変える
~シャッター・スピードと絞りの関係 (2)
「シャッター・スピード」と「絞り」は非常に密接な関係にあり、どのような撮影状況でも必ず一定量が必要とされる「光」と共に、よく「水道の蛇口とバケツ」に例えられます。
必要な光の量をバケツ一杯の水としてみましょう。水道の蛇口が大きく開いていると、勢いのある水はバケツにすぐに溜まります。逆に蛇口が小さく閉められていると、バケツはゆっくり満たされていきます。この蛇口の開き加減が「絞り」、バケツが水でいっぱいになるまでの時間が、「シャッター・スピード」に当てはまるのです。
このように両者は、常に均衡を保ちながら影響し合っており、絞りが大きく開いた状態ならシャッター・スピードは速くなり、反対に絞りが閉じた状態ではシャッター・スピードは遅くなります(シャッター・スピードができあがりの写真にどう影響するかは、前回を参照)。絞りはf値という値で表され、レンズとボディー(本体)の接続部に程近いレンズ側面(第1回目を参照)に、f2.8、4、5.6、8……といった数字で示されています(デジタル・カメラでは液晶部分やファインダーの画面上に表示される機種も多い)。そして絞りが絞られるほど、この数字は大きくなり、ピントの合う範囲(奥行き)も広がっていきます。
今回の撮影は、絞りに重点を置いてみました。写真1と写真2を比べてみましょう。全く同じアングルで撮影していますが、f値を大幅に変えています。写真1ではf値を小さくし、ピントの合う範囲を狭くしました。背景は場所の特定ができないほどぼやけています。写真2では、f値を大きくしました。結果、被写体から背景に至るまではっきりと写っています。
(写真1) 絞りf2.8/シャッター・スピード1/800秒
ポートレイト撮影でよく使用される技法。ピントの合う幅を浅くすることで、人物の表情が際立ってくる
(写真2) 絞りf32/シャッター・スピード1/8秒
写真1に比べ、背景のディテールがはっきりと見えている
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