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Mon, 23 December 2024

第65回 小鳥はとっても歌が好き

シティの東北側、ショーディッチの聖レオナルド教会はサクソン時代から存在し、1740年にシティの建築主事、ジョージ・ダンス・ジ・エルダーにより現在の建物に建て替えられました。彼はシティ市長公邸の設計者で、確かに教会の正面が市長公邸に似ています。また、過去には英国初の常設劇場と言われる「シアター」(1576年) やその次に古いとされる劇場「カーテン」( 77年)が近く にあり、多くの劇場関係者が祀られているので「俳優の教会」とも呼ばれます。

聖レオナルド教会
聖レオナルド教会

先日、この教会で催された、中世の行商人の呼び売りをコラージュした音楽会に出掛けました。確かに日本でも「竹屋~、竿竹~」といった行商人の呼び売りは当時の世相を表し、歴史を蘇らせます。中でも興味を引いたのは、小鳥を売る商人でした。と申しますのも、この周辺はユグノー(フランス新教徒)が17世紀末から多く移民して出来た街ですが、小鳥とも関係が深いからです。

鳥かご
小鳥を鳥かごで飼う習慣はユグノー移民が持ち込んだ

この辺りが絹職人街に発展したのは、彼らの絹織技術によるものですが、鳥かごを持ち込んできたのも彼らと言われます。絹職人の家の窓には鳥かごが吊られ、小鳥の歌声が通りからいつも響いていました。その影響か、教会南のスクレーター・ストリートは18世紀から20世紀後半まで小鳥販売の市場として賑わい、その脇のクラブ・ロウでは小鳥に限らず、犬やウサギといった小動物が売られ、ロンドン唯一のペット市場として栄えました。

標識
スクレーター・ストリートの標識はロンドン最古とも

ちなみに歌鳥の人気者はカナリア。語源はスペインのカナリア諸島です。野犬が多く生息していたためか、ラテン語で「犬の島(Insula Canaria)」と呼ばれ、大航海時代以降、同地から輸入される小鳥がカナリアと呼ばれました。偶然にもヘンリー8世の猟犬を飼育していた場所が「犬の島(Isle of Dogs)」で、そこに建設された新金融街、カナリー・ワーフはカナリア諸島から運ばれる果物を荷揚げする波止場が語源です。

カナリー・ワーフ
新金融街カナリー・ワーフの名称の由来はカナリー諸島

さて冒頭の話に戻り、聖レオナルド教会の北には以前ご紹介したコロンビア・ロード・フラワー・マーケット(花市場)があります。実はこの市場が出来る前、ここはユグノーの鳥かごを連想させる「バードケージ・ウォーク」という小道でした。ちなみにバッキンガム宮殿近く、セント・ジェームズ・パークの南側を同様に呼ぶのも、絹織産業を支援したジェームズ1世がそこに飼鳥園を作ったことに由来します。絹職人も王様も小鳥も歌が大好きのようです。

モザイク
コロンビア・ロード・フラワー・マーケット前にある小学校の壁のモザイク

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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