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Sun, 10 November 2024

第78回 お散歩編:再生と共生、スロー・ライフは水辺から

シティ2000年の歴史において、街が火の海に囲まれて崩れたことがこれまで3度ありました。第二次大戦での空襲、1666年のロンドン大火、そして西暦60年のブーディカ女王の反乱。いずれの惨事からも不死鳥のようにシティは復活しましたが、寅七が気になったのはブーディカ女王がローマの鎮圧軍に追い込まれ、自決したという伝承の残るバトルブリッジ村。そこはシティから北に約2キロ、都市再開発が進むキングス・クロス周辺です。

ブーディカの像
チャリオットに娘たちを乗せ、両脇に従えて勇敢に戦ったブーディカの像

その村は低地にあり、雨が降ればハムステッドの丘から流れるフリート川の氾濫でよく浸水しました。現在はバトルブリッジ・ベイスンと呼ばれる大きな舟留まりになっています。産業革命時代、英国全土に運河の交通網が敷かれますと、この場所もリージェンツ運河の一部に組み込まれました。この運河はジョージ4世が摂政(リ- ジェント)時代に認可されたのでその名称が付き、ロンドン北部の産業の発展には欠かせない交通網になります。

オアシス
バトルブリッジは現在、舟が係留 する都会のオアシス

というのもパディントンでグランド・ユニオン運河と結ばれるので、産業革命の中心地、バーミンガムとロンドンを結ぶ大幹線の支線になるからです。また運河の東端は東ロンドンのライムハウスでテムズ川に合流するため外洋にも繋がります。産業の発展に感謝し、ジョージ4世が崩御すると運河のそばに記念像(キングス・クロス) が建てられました。しかし1842年、鉄道と駅舎を建てるために撤去され、駅名にその名が残ることになります。

キングス・クロス
キングス・クロス塔は今や駅舎に替わり、駅名に名が残された

舟を係留できるベイスンの周辺に物流施設と鉄道駅を設け、それ以外の運河沿いには広い敷地を要するガス工場や製造工場を建設する、というロンドンの都市構造の基本設計がここからうかがえます。水運と陸運、物流空間の調和が産業革命の成功を支えました。ところが20 世紀以降、英国病のせいか国内の製造業は価格競争力を失い、運河沿いの工場は軒並み閉鎖。運河の水は汚れ、キングス・クロス駅周辺も寂れた街となっていきました。

ガス・タンク
かつてのガス・タンクが住居ビルと公園に

でもここから始まる再生の話。馬が舟を曳くために作られた側道を含め、運河は英国水路管理局の管轄ですから、側道の下に電信線などを埋めて賃料を稼ぎ、国を挙げて自然との共生、運河のレジャー利用を呼び掛けました。

水辺
水辺の再生からスロー・ライフは始まる

実際に現在、この側道を歩きますと、水質が改善し、水鳥や草木が戻って自然が再生していることに気が付きます。かつての古びた工業地帯キングス・クロスでは、自然と歴史に根付いた再生ストーリーが水辺から始まっているのです。

自然
都市は自然との共生なしには再生できない

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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