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Sun, 22 December 2024

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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サマータイム

サマータイム

早起きが得意というわけではない身ですが、いつも以上に「もうちょっと寝ていたいなー」と思う日が毎春巡ってきます。それは英国でサマータイムが始まる日。今年は3月28日(日)がその日でした。この日は、時計が1時間早送りされます。正確にいうと、3月28日の午前1時になると、それを2時と設定することで、夏時間が発動されます。

私が初めてサマータイムの洗礼を受けたのは、英国に住んで2年目。その春、日本から夫婦で英国留学をしてきたばかりの友人と、ロンドンのピカデリー・サーカスにあった日本食料品店で待ち合わせをしたときのことでした。その日はちょうどサマータイムに変更の当日。渡英ほやほやの友人夫婦より8カ月ほど先に英国に来ていたとはいえ、私自身、サマータイムを経験するのは初めてでした。

友人夫婦と約束の日の朝、下宿先の2階からキッチンに降りていくと、ランドレディーが「マミ、今日はどこかに行くの?」と聞いてきました。数年ぶりに会う日本人の友達との約束について話すと、「そういえば今日からサマータイムって知ってる?」と言うのです。知らないと答える私に、その日から1時間時計が早まっているのだと教えてくれました。「しまった!」と心の中で叫んでいました。まだロンドンでの暮らしに慣れていない友人夫婦を1時間も待ちぼうけさせることになっては申し訳なさすぎます。あわてて最寄駅のバス停の時間を確認すると、どう急いでも約束には間に合いそうにありません。

当時持っていたおもちゃのようなプラスチック製の携帯電話から友人に電話しましたが、そんなときに限って通じません。数年ぶり、それも日本を遠く離れたロンドンでの再会だというのに、ろくにお化粧もせずに、バスに飛び乗りました。

この話のオチは、友人夫婦もサマータイムを知らず、結局お互いが1時間遅れで到着。友人たちを待たせずに済んだのですが、以来、サマータイムに変わる日の予定は、前日に何度も時間を確認する癖がつきました。


元々、サマータイムを考え出したのはニュージーランドの昆虫学者ジョージ・ハドソンといわれていますが、1907年に英国でこの考えを最初に紹介したのはウィリアム・ウィレットという人物でした(なんとコールドプレイのクリス・マーティンの曽祖父だそうです! )。実際に導入されたのは1916年なので、すでに100年以上、この制度は続いています。実は欧州委員会ではサマータイムの廃止が提案されていて、議会で承認されればこの制度は無くなります。ただ、EUを離脱した英国もそれに従うかどうかはまだ分かりません。個人的には夜の9時半まで明るい英国の夏が好きなので、サマータイムは続けてほしい気もします。

 


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。音声メディアVoicyパーソナリティー。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
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