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Sun, 22 December 2024

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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アイスクリーム大好き!

アイスクリーム大好き!

「タラララリララン、ラリララン~」遠くの方から、少し高いキーの、どこか哀愁を感じさせるような音が聞こえてきたら、アイスクリーム・バンの合図です。アイスクリーム・バンとは、英国内で見掛けることのできるアイスクリームの移動販売車のこと。日本でもバンと呼ばれる屋根付きの貨物自動車がありますが、まさにそれと同じような形の車。キャラクターや風船など、さまざまな絵でカラフルに装飾されていることが多く、遠目からもすぐに「アイスクリーム・バンだ!」と分かります。

昨日も、わが家のあるエリアにこの音楽が近づいてくると、「ハーフ・ターム」という学期半ばで休暇中の子どもたちは「アイスクリーム買っていい~ ?」と、飛び出していきました。こんなふうに、英国では、公園やフェスティバルなどの場所だけでなく、突如として、一般の住宅街にもアイスクリーム屋さんが登場するのです。また、お日さまが照りつけて、誰もがアイスクリームを必要とする日には、小学校の通学路にアイスクリーム・バンが止まっているというのも、よく見る光景です。

英国の夏は気温が高くなったとしても、乾燥しているために、それほど強烈な暑さを感じるというわけではありません。とはいえ、英国の人はアイスクリームが大好きなので、アイスクリーム・バンが止まっているところには、たいてい行列ができています。そして子どもだけでなく、大人ももちろん、お気に入りのトッピングをしたアイスクリームを頬張っています。


英国の食文化についての歴史家で、その名も「アイスクリーム(Ice Cream)」という著書があるアイヴァン・デイ氏によれば、英国でアイスクリームが食べられるようになったのは17世紀のこととか。以来、その形はいろいろと変わってきているものの、英国の人々はアイスクリームを食べ続け、件のアイスクリーム・バンが登場したのは1950年代終わりごろでした。

英国のアイスクリーム・バンといえば、冒頭でも書いたように、「チャイム」と呼ばれる独特の音楽がつきものです。子ども時代の郷愁を誘う音楽ですが、騒音公害になるということで、その音量や時間に対し、政府によって厳しい制限がつけられたことがありました。その後、規制は緩和され、現在では音楽を12秒間続けて鳴らすことができるようになったそうです。

音楽の種類はさまざまですが、最もよく知られるものの一つが「グリーン・スリーヴス」という曲。アイスクリームはワクワクする食べ物なのに、哀愁漂うこの曲を聞くとなぜか胸がキュンとしてしまいます。アイスクリームを買うたびに、この先、英国以外のどんな場面でこの曲を聞いても、英国のアイスクリーム・バンを懐かしく思い出すに違いないと確信している私です。

 


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。音声メディアVoicyパーソナリティー。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
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