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Sun, 22 December 2024

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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英国の家にある不思議の間

英国の家にある不思議の間

もう20年近く前、夫と結婚する前の年のクリスマスに、初めて義父母の家に泊まらせてもらいました。初対面のときから、まるでずっと前から知っているかのように気さくで優しく接してくれていた義父母。英国における一大行事ともいえるクリスマス・ホリデーに一緒に過ごすことでさらに打ち解け、自分の家にいるようにリラックスして滞在させてもらっていました。

そのときは滞在が数日におよびました。そのため、滞在3日目にバスタオルに新しいものと交換してくれようとした義母が、「マミ、タオルはエアリング・カバードにあるのを使ってね」と言いました。

エアリング・カバード(airing cupboard)が何かを知らなかった私は「エアリング・カバードは何?」と聞くと、バス・ルームにあるドアの付いた小さな部屋を見せてくれました。部屋というよりも、日本人的には「押し入れ」と呼びたくなるような場所です。その「秘密の隠れ間」みたいな小さな空間には、大きなタンクが置かれていて、木製の棚のようなものが同居していました。カバードは棚という意味で、棚があるからこう呼ぶのかもしれませんが、ここは、温水をためるタンクが設置してある場所でした。1メートルを越える高さの円筒形のタンクは、触ると温かく、その空間全体もほんわかとした空気が漂っています(義父母の家ではバス・ルームの中に設置されていますが、家庭によってエアリング・カバードのある場所は違います)。


義母に教えてもらったところ、ここに洗濯物をかけておくと1日もたたずに乾かすことができるのだといいます。洗濯物を屋外で乾かせるのが1年のうちでわずか数カ月という英国の家庭には、たいてい乾燥機がありますが、乾燥機を使うと、乾きすぎて生地が縮んだりしてしまうのもよくあること。でも、このエアリング・カバードで乾かすと、その心配はないのだとか。たくさんの洗濯物を干すスペースはありませんが、義母は、乾燥機で半乾きにした段階で、最後の仕上げにこのスペースを使うことが多いのだと教えてくれました。

また、畳んだタオルをここにしばらく収納しておくと、使うときにふんわりとして気持ちがいいので、お客さんが来たときに、ここからタオルを出してあげることがあるのだとも教えてくれました。

夫と結婚した当初に住んでいたモダンなフラットにはエアリング・カバードがなかったのですが、今の住まいではまだ畳んでいない洗濯物を一時収納する場所として活用しています。ほかにもわが家では、パンを焼くときに生地を発酵させる家庭用パン発酵器としても活躍してもらっています。

 


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。音声メディアVoicyパーソナリティー。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して
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