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Sun, 22 December 2024

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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緑がいっぱい、緑が大好き

緑がいっぱい、緑が大好き

「智恵子は東京に空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ。」というのは、高村光太郎「智恵子抄」の中に収められている「あどけない話」という詩の一文です。

この詩を思い出したのは、日本への一時帰国で東京に滞在していたときに、息子が「東京には緑が無い」と言ったときでした。

「確かにロンドンに比べたら東京は公園も緑も少ない気がするね」と息子に答えながら、渡英前に長年東京で暮らしていたころの私は、高層ビルが立ち並ぶその街に緑が少ないとは感じていなかったことに気付きました。でも、英国暮らしが長くなった今、息子に言われるまでもなく、東京滞在中に最も恋しくなったことの一つが自然の中で緑を感じることでした。

今暮らしている英西部ブリストルでは、家から10分もしないところに自然保護区域があり、そこには見渡す限りの緑が広がっています。そして、木々や草花、野鳥たちの姿を好きなときに楽しむことができます。また、以前住んでいたロンドンでも、こちらは東京と変わらない大都会とはいえ、家の裏には公園があり、少し足を延ばせばロンドンに八つある王立公園のうちの一つがあり、ただ散歩をしたり、芝生の上に寝転がったりピクニックをしたり、都心とは思えないほどののんびりした時間を過ごすことができました。


少し古いデータですが、国土交通省による「諸外国における公園の現況」という調査によれば、一人当たりの公園面積でいうと、ロンドンは東京の4倍以上。どうりでロンドンでは、街を少し歩いただけでも公園に出合うはずです。

また、ロンドンでは現在、「ロンドン環境戦略」(London Environment Strategy)として、グリーン・インフラを保全、拡大する計画が実践されています。この計画によると、2050年までにロンドンの面積の半分以上を緑化することが目標とされているそうです。そうなればロンドナーだけでなく、ロンドンを訪れる観光客もさらに緑あふれるロンドンの景観を楽しむことができるでしょう

犬好きが多い英国では、公園や緑のある場所に犬の散歩に行く人も少なくありません。この連載の第32回でご紹介したように、ただ歩くだけ、あるいは新鮮な空気を吸うためという理由だけで、そうした場所にウォーキングに出掛けるのも、英国の人々の専売特許ともいえます。

猛暑の東京では、公園を見掛けても、ゆっくり散歩するという選択肢はありませんでした。だからこそ、英国の(夏でも涼しい)公園や自然保護エリアで緑の空気をいっぱい吸って、のんびり歩く時間が恋しくなったのかもしれません。

 


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。音声メディアVoicyパーソナリティー。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して
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