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博物館・美術館が無料
「大英博物館ってタダなのー? 知らなかった。すごいね、英国って」。この春、日本から来てくれた友人を観光案内したとき、とても驚かれました。私自身、渡英前はそのことを知らなかったので、ロンドンに暮らすようになって、大英博物館はもとより、V&A、自然史博物館、テート・ブリテンなど多くの博物館や美術館が無料だと知ったときには感激しました。なにせもともとはロンドンで芸術大学に通いたいと思っていたアート好きの私。そのため英国に暮らすようになって最初の半年くらいは特に、ロンドン中の博物館や美術館を足しげく見て回っていました。また、ロンドン大学の外国人学生向け英語コースに通うようになったころには、入場無料なのをいいことに、大英博物館のトイレを借りるためだけに、あの天井の高いグレートコートを何度も訪ねていました(この真似はお勧めしませんが)。
さて、英国における国立博物館・美術館の入場を無料にすることは、DCMS(デジタル・文化・メディア・スポーツ省)による予算によって、2001年から実施されました。とはいえ、それ以前も英国内の国立博物館・美術館の入場料は無料だった時期もありました。ところが1980年代に保守党政権が有料化を進めたところ、施設への入場者数が半減したというケースもあったといい、97年に労働党が国立博物館・美術館の入場無料化を宣言し、それが2001年になって実施されたことになります。そして、入場料が無料になった施設は、平均70パーセントと来場者数が大幅に増加したといいます。
無料でロンドン中の博物館や美術館に好きなだけ出入りできることを喜んでいた私ですが、英国人たちとそうした施設に出掛けるようになって、気付いたことがありました。それは、入場料が無料でも、訪問者は施設の入り口にある募金ケースに何がしかの募金をしているということでした。
「みんな必ず寄付するんだね?」と聞く私に友人は「入場無料を維持してもらうためにも寄付しないとね」と笑って言いました。
実際のところ、博物館や美術館の入場無料の維持は議論の的になっています。というのも、各施設の維持にあたっては多大な費用を要するためです。政府からの資金だけでは運営が賄えない状況のため、大英博物館の前臨時館長であったマーク・ジョーンズ卿は今年になって、4〜5億ポンドかかるといわれる大英博物館の莫大な再開発資金を賄うために観光客に20ポンドの入館料を導入するように提言しました。英国人と25歳以下の人は現状通り無料という案ではありますが、もしかしたら、日本からの観光客は有料という日が来る可能性もあるかもしれません。