気になる1冊

マダム花子
著者：根岸理子

発行元: 論創社
定価: 本体1800円+税

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現在テート・モダンではフランスの巨匠オーギュスト・ロダンの大回顧展が開催中だが、そこにはロダンの唯一の日本人モデルともなった、「花子」の頭部彫刻が多数展示されている。花子という女性は、20世紀の初めに欧米の国々を巡演し日本の演劇を見せ、当時の芸術関係者ばかりか一般市民もが知る、海外で大変な人気を誇った日本人俳優だ。

本書「マダム花子」は、国家や政府に頼ることなく、自力で海外の興行師やエージェンシーと契約し20年近くも活動を続けた、花子のたくましくリベラルな生きざまを多方面から紹介する。また、欧米の演劇研究者の間では有名な花子が日本では知名度が低い理由や、欧州の考える「日本」のイメージの作られ方についても考察する。ロンドンを拠点とした花子が日本料理店を開店するくだりや、帰国後「イギリスのおばあちゃん」と呼ばれるようになる経緯など、英国在住者にとって興味深いエピソードも多数含まれている。