Interview
劇作家 / パフォーミング・アーティスト
小林賢太郎
ショーを楽しむのに
予備知識は要らない
シンプルな衣装と舞台装置、日本語の言葉遊びなどで独自のスタイルを築いたコント・ユニット「ラーメンズ」から始まり、演劇プロジェクト「K.K.P.」、ソロパフォーマンス「Potsunen」など、様々な形で「笑い」を追求してきた小林賢太郎。
そんな彼の作品が、初めてロンドンで上演される。最新作「ポツネン氏の奇妙で平凡な日々」は、絵本に出てくる昆虫博士のような風貌のポツネン氏の、端から見ると奇妙だけれど、本人にとってはいたって平凡な日常を描いたコメディー。
現代美術を見ているような、不思議で美しい作品の創作秘話を聞く。
小林賢太郎
1973年4月17日生まれ、神奈川県出身。96年、多摩美術大学在学中に同級生の片桐仁とラーメンズを結成。脚本・演出・出演のすべてを手掛ける。2002年に演劇プロジェクト「K.K.P.」、05年にソロパフォーマンス「Potsunen」を始動。12年には「Potsunen」で、フランス、モナコにて初の海外公演を成功させる。09年、NHK-BSにて「小林賢太郎テレビ」がスタート。最近作では美術全般も自ら手掛けるなど、舞台を中心に独自の活動を展開している。http://kentarokobayashi.net3年ぶりとなる海外公演で、東京のほかにロンドンやパリでも公演が行われますが、創作の過程で海外を意識された部分はありますか。
以前、パリとモナコで上演したときは、コントで言葉の壁を越えるための研究発表のような内容でした。ですが今回は、その辺りはあまり意識せず、僕が今やりたいことを詰め込んだ結果がこれなので、海外のお客さんがどのように受け取ってくれるのか、今から楽しみです。初めての海外公演という気負いがなくなった分、臆することなく、自分のやりたいことを思いっきりぶちまけた作品になりました。もちろん日本語が分からない方にも楽しんでいただける内容にはなっていると思います。
東京公演のカーテン・コールでおっしゃっていましたが、今回の作品は小林さんが見た夢を具現化した部分もあるんですよね。
3年くらい前に見た夢なんですが、セミを捕まえて育てたら、フクロウになったんです。そのフクロウがとても悲しそうな顔をしていたので、ゆすったり、面白い顔をして見せたりしていたら、ニコーッと笑ったのでうれしくなったところで、泣きながら目が覚めました(笑)。でも最初からその夢を題材にしようと思ったわけではなくて、途中で「そういえばあの夢が種になっているのか」と感じたんです。夢って支離滅裂ですよね。台所のドアを開けたら急に海だったり、いつの間にか時間や場所が変わってたり、ありえないことも夢の中では何の違和感もなく受け入れられる。今回のこの作品は、見終わった後で「夢を見ていたみたい」と思っていただければ成功なのかもしれません。
山高帽にスーツといった衣装から受ける印象もあると思うのですが、小林さんのソロパフォーマンスにはどこかヨーロッパ的な雰囲気を感じます。
ヨーロッパというよりも、大正時代の日本人を意識しています。大正時代の、和と洋が良い具合に混ざり合っている感じがすごく好きなんです。だからヨーロッパ的な雰囲気を取り入れているつもりはなかったのですが、大正はヨーロッパからの影響を大いに受けた時代だとは思うので、そう見えるのかもしれませんね。
「Potsunen」では、パントマイム、マジック、イラスト、映像といった様々な手法が使われています。今回は物語性が加わり、ますますコントなのか、演劇なのか、アートなのか、とジャンルが混沌としてきた気がします。
僕の表現は一言で言うと「ビジュアル・サーカス・コメディー」でしょうか(笑)。アートもあって手品もあって笑いもある。色々とやることが多くて大変ですが、やっただけ手応えもあるので、楽しんでいます。ものすごく疲れますけど……(笑)。「ポツネン氏の奇妙で平凡な日々」は、僕が今まで積み重ねてきたことが合わさったような、集大成的な作品になっていますが、何も知らずに観に来ていただいても大丈夫です。僕のショーを楽しむのに予備知識は要りません。国籍も性別も年齢も関係ないので、面白そうだなと思ったら、ぜひ劇場に足をお運びください。
(インタビュー: 石本真樹)
Kentaro Kobayashi:
Mr Potsunen’s Peculiar Slice of Life
2015年2月3日(火)、4日(水)
19:30
£15
Leicester Square Theatre
6 Leicester Place, London WC2H 7BX
Tel: 0844 873 3433
Leicester Square駅
www.leicestersquaretheatre.com