日本の約半分ほどの面積しかない英国。しかしその中では実にさまざまな訛りが話されている。未だに階級意識が強く残る英国では、訛りイコール出身地イコール階級、と見なされることが多く、単に地域の特色という一言では片付けられない部分もあるのだが、逆に自分たちの訛りを誇りとし、守り続けている人たちも多い。今回は、英国各地の代表的な訛りをご紹介。各地方出身の有名人情報も満載です!(本誌編集部: 村上祥子)
スコットランド
独自の歴史や文化を持つ誇り高きスコットランド人。当然言語にもはっきりとした特徴がある。元々ケルト系のアイルランド、ウエールズ、そしてスコットランドの訛りには共通点が多い。特にゲール語に由来する言葉は独特で、これは英語とは全くの別物。例えば恐竜で有名なネス湖は「Loch Ness」。読み方は「ロッホ・ネス」となる。「ch」の発音がドイツ語同様、「ハ」をのどの奥から出すような発音となる。「Bach」をご想像いただくとわかりやすいだろう。
特長
「lilt」または「sing-song」と言われる独特のイントネーションがあるリズミカルに上下動するイントネーションはケルト系共通の特徴。
「r」は巻き舌発音する
米語と同じく巻き舌ではっきり発音する。そもそも米国に初めて移住した英国人はアイルランド系スコットランド人だったと言われているから、それも納得。
こんな人がしゃべってる!
スコットランド出身の有名人と言えばずばりこの人、ユアン・マクレガー。いまや英国を代表する人気俳優ユアンはスコットランド出身であることに誇りを持ち、映画のプレミアに民族衣装のキルト(お馴染みのタータンチェックのスカートである!)を着てくるほど。言葉の節々にスコットランド訛りも健在だ。一方、元祖スコットランド出身俳優と言えばショーン・コネリー。彼の場合はどんな役を演じていてもアイルランド訛りが残ってしまうということで、映画専門誌「エンパイア」の「訛りの下手な俳優」アンケートでは、栄えある1位に輝いている。北西部
リバプールやマンチェスターを含む、スコットランドからウエールズに至るまでの北西部の訛りは、その他の北部訛りとほぼ同じ。リバプールの訛りは「Scouse」(スカウス)と呼ばれ、アイルランド訛りに強い影響を受けている。リバプールにはアイルランド出身者が多いためで、同じくアイルランド移民が多い米ニューヨークでも似たような訛りがみられる。湖水地方で有名なカンブリアで、「shag」(元の意味は「セックス」)と言われても驚かないように!これはサンドイッチのことなのだ。
特長
「r」は巻き舌発音する「r」は米国同様、必ず発音される。
「th」の発音が「t」、「d」 となる
代表的なアイルランド訛りで、 「three」と「tree」の発音が同じになる。
こんな人がしゃべってる!
北西部にはリバプールが含まれている。こう言えば誰もが思い出すのがリバプール出身のビートルズだろう。意識的に訛りを取ろうと努力していたポール・マッカートニーに対し、ジョージ・ハリソンはかなり長い間リバプール訛りが抜けなかったようだ。ボーカルを取った時でも訛りは全開だったというから、北西部訛りを勉強したいならジョージの歌を聞いてみては?北東部
数ある英国方言の中でも、最もわかりづらいと言われるのがこのダーラムやノーサンバーランドを中心とした北東部の訛り。特にニューカッスルの英語は「Geordie」(ジョーディー)と言われ、同じ英国人でも聞き取れないほどの難易度を誇る。第二次大戦下、英国第8軍が南アフリカに駐留していた際、ジョーディーの連隊は他の連隊とは異なり、暗号を使う必要がなかったという嘘か本当かわからない言い伝えまであるほど。確かに「Divvent dee that! Hadaway!」なんて言われても、欠片かけらも理解できない……(ちなみに答えは「Don't do that! Get lost!」)。
特長
多くの特徴は北中部の訛りと同様。その他、「r」をフランス語やドイツ語のように発音する
英国英語では省略されることが多い「r」だが、ここ北東部でははっきり発音される。舌をかなり奥の方まで入れて、こもったような音を出す独特な発音方法は、フランス語やドイツ語のそれと近い。
こんな人がしゃべってる!
英国内で爆発的人気となった映画「リトル・ダンサー」。この映画の主人公、ビリーを演じたのは、役柄同様北東部ビリンガム出身のジェイミー・ベル。現在は俳優の仕事で米国に滞在することも多く、かなり米語のアクセントも会話に混じるようになった。一方、先日オリビエ賞を受賞し、目下ウエスト・エンドで人気ナンバー・ワンとなっているミュージカル版では、現在も北東部訛りがしっかりと受け継がれている。映画の監督も務めた演出家のスティーブン・ダルドリーいわく、ビリーを演じる上で「完璧な北東部訛りは必須」。いかに訛りが北部の生活を描く上で大切な要素なのかがうかがえる。北中部
ヨークシャーやイースト・ミッドランズを含むこの地域では、かなりきつい訛りがみられる。英国では北中部のみならず、北部訛りに対する偏見が根強く残っているが、この地域の人々は自分たちの言葉に誇りを持っていて、自らの訛りを「tyke」(タイク)と呼び、守ろうとする傾向が強いとか。ロンドン近辺では全く耳慣れない単語や、使い方が異なる言葉も多く、知らなければお手上げ状態。リーズなどで時間を聞き、おじさんが「Half past ten, love」と言っても、それは別にナンパされているわけではない。この地域では「mate」のように単なる相づちのような感覚で「love」が使われるのだ。女性に対しては「duck」もよく使われる。別にアヒルに似ているというわけではないからご安心を。
特長
「h」を発音しない
「t」が詰まった「ッ」になる
ただし、コックニーと比べると大ざっぱで、たまに発音されることも。
「bath」や「fast」の母音が[ae] となる
標準語ではこれらの母音は[a:]と伸びるのに対して、[ae]となる。どちらかというと米語に近いイメージ。
しばしば「the」を抜かす
文中の「the」を省略し、その代わりに詰まった「t」の音を入れることがある。つまり、「in the car」だと「イント・カ」のように聞こえる。
[^] という母音がない
軽く「ア」と言う母音がなく、スペルのまま発音する。有名なところでは「bus」。「バス」ではなく「ブス」となる。
こんな人がしゃべってる!
上流階級臭をぷんぷん漂わせているサッチャー元首相。実は彼女、北中部リンカンシャーの労働者階級の出身だった。学生時代に徹底的に発音の特訓を受け、見事RPを話すようになったのだが、議会でも激昂するとつい本来の北部訛りが出てしまい、冷笑されていたとか。ウェールズ
もともとケルト系であるウエールズ人は、歴史上さまざまな民族の侵略を受けながらも決して同化されることのない、独立心に満ちた民族だった。1535年、正式に英国に統合された後も、独自の言語、文化を守ってきたウエールズ人の公用語には、英語と共にウエールズ語が採用されている。それ故、英語にもウエールズ語の影響が色濃く残っている。
特長
スコットランド同様、「lilt」または「sing-song」と言われる独特のイントネーションがある
「h」を発音しない
これはコックニーや北部など、主に労働者階級の訛りに多く見られる特徴。
「r」の発音に「震え音」を使う
「震え音」とは、舌先を連続して歯茎に弾く発音法で、もともとはケルト系の訛りに多くみられる特徴だったが、現在その他の地域ではあまり使われていない。
こんな人がしゃべってる!
ご存知BBC1の大人気コメディ「リトル・ブリテン」。その中の人気エピソードに、自分が町で唯一のゲイであることを誇りに思い、他のゲイをどうしても認めようとしないダフィドという人気キャラがいる。このダフィドが住んでいるのがウエールズの「フランデュイ・ブリッフィ」(Llanddewi Brefi)という町なのだ(ちなみにこのllの発音はウエールズ語でも最も難しいらしい)。ウエールズ出身の有名人で、世界的に有名なのは、アンソニー・ホプキンスやキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。両者に共通しているのは、さまざまな訛りを使い分けて英国のみならず米国でも活躍していること。自分たちの訛りに誇りを持っているはずのウエールズ人が、華麗に訛りを使い分けるというのも面白い話だ。ロンドン及び南東部
世間で言われるところの英国英語のイメージに最も近いのがこの地域の英語。大別すると「容認発音」、「コックニー」、「河口域英語」の3種類に分けられる。
コックニー
コックニーとは、ロンドンの労働者階級の人々が話す英語のこと。本来はセント・ポール寺院のそばにあるボウ教会の鐘の音が聞こえる範囲で育った人のことを指していたとか。労働者階級の英語というだけに、英国人の中では低く見られがち。かの有名な映画「マイ・フェア・レディ」で、花売りの娘イライザが話すコックニーに対して、言語学者のヒギンズ教授が「醜い」、「無教養だ」とこき下ろし、RPを叩き込んで上流社会に受け入れさせたのがわかりやすい一例だ。特長
[ei] が[ai] になる
「today」だと「トゥダイ」、「make」は「マイク」と発音される。
単語の途中および最後の「t」を発音しない
「t」の代わりに、声門閉鎖音といって喉が詰まったような「ッ」が入る。つまり「button」だと「ボッ・ン」、「butter」だと 「バッ・ア」のように聞こえる。
「h」を発音しない
語頭の「h」は発音しない。「have」だと「アブ」、「Harry」だと「アリー」となる。
「th」が「f」「v」になる
「mother」だと「マザー」ではなく「マヴァ」、「thought」は「フォート」と発音される。
こんな人がしゃべってる!
英国サッカー界の貴公子、ご存知ベッカム。マンチェスター暮らしが長い彼だが、ロンドンの労働者階級出身のベッカムが話す英語はコックニーだ。独特の高音ボイスと相まって、実に味のある英語となっている。彼のインタビューを聞くと、確かに「three」が「free」、「another」が「anover」と聞こえる。米国映画「メリー・ポピンズ」では、コックニー を話す煙突掃除人バートの役を米国人のディック・バン・ダイクが演じた。演技自体は絶賛を浴びたのだが、訛りに関しては非難轟々。ショーン・コネリ-が1位だった「エンパイア」誌の「訛りの下手な俳優」アンケートでは、第2位に選ばれてしまった。
コックニーでは「rhyming slang」と呼ばれる押韻スラングが有名。その昔、コックニーたちは非合法な商売をする際に、自分たちだけに分かる暗号を作り出し使っていた。その発展形がこの押韻スラングというわけ。簡単に言えばゴロ合わせ。本来の言葉を使う代わりに、その言葉と韻を踏む2語以上の言葉を使うのだ。さらに韻を踏んでいる語は削除されることも多く、知らなければわけがわからない。
becon & eggs → legs
Brad Pitt → shit(!!)
容認発音(Received Pronunciation: RP)
いわゆる上流階級の英語。ここで言う「容認」とは、「上流階級の人間に容認された」という意味になる。俗に言うクイーンズ・イングリッシュのイメージに一番近いのがこの容認発音で、BBC英語、オックスフォード英語などが含まれる。18世紀の上流階級の人々が、地域の訛りを恥ずかしく思ってつくったのが始まりだとか。特長
母音の前以外で「r」を発音しない
例えば「door」などは「ドー」と聞こえる。
母音を短く発音したり、音節を切り詰めた発音をする
有名なところでは「schedule」が「セジュール」となる。
こんな人がしゃべってる!
美しく正しい英語と認識されているだけに、テレビや映画で活躍する英国の有名人の多くがこの容認発音を使っている。昔ながらの美しい発音で言うならば、アカデミー賞女優のエマ・トンプソン。シェイクスピア作品にも数多く出演している彼女の発音は、まさに正統派クイーンズ・イングリッシュ。一方ポッシュな中にも現代的な雰囲気を漂わせているのはヒュー・グラント。もともと上流階級出身の彼はインタビューの際、皮肉たっぷりにスタッカートを聞かせて口撃してくるのでよく知られている。また米国人俳優が英国アクセントを話すことにあまり好意的でない英国人だが、「スライディング・ドア」のグイネス・パルトロー、「ブリジット・ジョーンズの日記」のレニー・ゼルヴィガーの発音は、なかなかというお墨付きをもらったようだ。河口域英語
河口域」とは「estuary」、すなわちテムズ川河口域を指し、河口域英語とはその地域で話されている英語のことを言う。しかし現在では、あまりに違いがありすぎる前者2つの中間的存在として、新しい世代の人々に広がりつつある。特長
単語の途中および最後の「t」を発音しない
これはコックニーと同じ。
「l」が「w」になる
つまり「milk」が「ミウク」のように聞こえる。
こんな人がしゃべってる!
完全な河口域英語ではないが、言葉の端々にそのアクセントがみられたのが、故元ダイアナ妃。上流階級出身の彼女の英語は基本的にはRPだったのだが、「t」がなくなってしまう癖があったようで、エリザベス女王もそれにはお冠だったとか。また明晰な発音をすることで知られるブレア首相。彼はスコットランド出身だが、幼い頃から英才教育を受け、オックスフォード大学で学んだため標準的な英語を話す。通常なら完全なRP、と思いがちだが、一般市民の味方、労働党党首として会話のところどころに河口域英語を取り混ぜている。さすがは政治家、アクセントも選挙活動のうち!?小粒ながら味のある名作が多い英国映画。その核を担っているのが地方都市とそこに住む人々だ。今回は各地方の訛りを楽しむのに最適な映画を地方別にご紹介しよう。
北東部の訛りを聞くならこの映画!
Billy Elliot
リトル・ダンサー(2000年)
ストの波が吹き荒れるイングランド北東部の炭鉱の町で、バレエ・ダンサーになるという夢を追い続ける少年の姿を描いたドラマ。11歳の少年ビリーは、バレエ教室のレッスンを垣間見たことがきっかけでバレエを始めることに。しかし厳格な炭鉱夫の父親は、男の子がバレエをやることに強い拒絶反応を示す。
英国一の難易度を誇る北東部の訛りを聞くのならば、何と言ってもこの映画がお勧め。慣れていない人だと、全く聞き取れないほどの濃い訛りを堪能できる。
発音では目立つのは、なんといっても[^] が[u] や[o] になっていること。ビリーのことをお父さんは「my son」と呼ぶがこれは「マイ・ソン」になっているし、「London」は「ルンドゥン」と聞こえる。その他「come」は「コム」、「punch」は「プンチ」となっていて、慣れるのには一苦労。また[ei] が[e:] となるのもよくわかる。ボクシングの先生がクラスに遅れてきたビリーに「You're late」と声をかけるが、この「late」は「リート」としか聞こえない。
ビリーがバレエの先生、ミセス・ウィルキンソンに自分の大切にしているものを見せるシーンでは、次のような会話が繰り広げられる。
Mrs. Wilkinson(以下W): What's this?
ミセス・ウィルキンソン: これは一体何?
Billy(以下B): It's a letter.
ビリー: 手紙だよ。
W: I can see it's a letter.
W: 手紙ってことくらいわかるわよ。
B: It's me mam's. She wrote it for when I was 18, but I opened it.
B: お母さんが書いてくれたんだ。18歳になったら読みなさいって言われたんだけど、待ちきれなかった。
文字上で見るとなんてことはない文章なのだが、これを実際に聞いてみるとすさまじい。まずは「t」の発音。「t」を発音しないで代わりに詰まった「ッ」が入る。「letter」は「レッ・ア」、「wrote it」は「ロウッ・イッ」、そして「eighteen」は「エイッ・イーン」となる。おまけに「but」は「ブット」になるものだから、簡単な文章のわりには何しゃべってるの?という感じになる。
その他、北東部独特の言い回しもある。内緒でバレエをやっていたビリーを怒鳴りつける父親が、「Lads do football, boxing, wrestling」と言うのだが、この「lads」とは男の子のこと。一方女の子は「lasses」。ビリーの親友マイケルが、バレエを始めたビリーに対して、チュチュを着るのかと尋ねるシーンがあるが、ビリーは「They're for lasses」と答えている。またビリーが友人と別れる時に「Tara!」と声をかけるが、これは「じゃあまたね!」という意味で使われている。
そしてもう一つ注目したいのが、階級意識だ。もともと北部は上流階級の人間には低く見られがちなのだが、同じ北部の人間の中にも階級意識が純然と存在している。それがよくわかるのが、ミセス・ウィルキンソンとビリーの兄、トニーの会話。内緒でバレエをしていたことが家族にばれたビリーに向かって踊るよう強要したトニーは、その後ミセス・ウィルキンソンを罵倒する。
Tony: Dance, little twat! No? So piss off.
トニー: ほら、踊れよ! 踊りたくない? だったらとっとと失せろ!
He's not doing any more fuckin' ballet.
こいつはもうバカげたバレエなんかやらないんだからな。
Go near him again, I'll smack you, you middle-class cow.
いいか、またこいつに近づいてみろ。ぶちのめしてやるからな、中流階級のバカやろう。
W: You know nothing about me, you sanctimonious little shit!
W: 一体、私の何を知っているっていうの、独り善がりのバカがきが!
実にすさまじい言い争いだが、ここにも北部訛りは満載。「twat」は英国英語で「バカ」「とんま」で、「piss off」は「失せろ」。このような罵倒言葉は訛りではないが、労働者階級の会話では日常的に使われる。また北部発音の特徴として、語尾の「-ing」が「-in」となるが、ここでも「fucking」が「フッキン」と詰まって聞こえる。
上品とは言いがたい言葉がこれでもかとばかりに散りばめられたこの映画、小さな子供に見せるのはちょっとためらわれるかもしれないが、素朴で温かい北部の人間のありのままの姿を描いたストーリーは、誰が見ても幸せな気持ちになれる優しさに満ちている。
スコットランド訛りを聞くならこの映画!
Trainspotting
トレインスポッティング(1996年)
スコットランドを舞台に、ヘロイン中毒の若者たちの生活を描いた作品。シビアな現実を題材にしながらも軽快にまとめられた本作は、世界中で人気を呼んだ。ヘロイン中毒の若者レントン。麻薬、ケンカ、セックス……。仲間たちと共にそんなすさんだ日々を過ごす彼だったが、大量のヘロインを売りさばいて大金を獲得し、新たな人生を送ろうとする。
ユアン・マクレガー始め、主要出演者の多くはスコットランド出身。映画では寂れた町での生活にうんざりしたレントンが「スコットランドなんてくそ食らえ!」と叫んでいたが、彼らの繰り出すスコットランド訛りは、現代の若者に「クール」と評判になった。映画の中で何度もスコットランド出身の名優ショーン・コネリーの名前が出されるのがご愛嬌。
北西部の訛りを聞くならこの映画!
THERE'S ONLY ONE JIMMY GRIMBLE
リトル・ストライカー(2000年)
引っ込み思案のサッカー少年が、魔法のシューズを手に入れたことで活躍するようになる姿を温かく描いたスポーツ・ドラマ。マンチェスターで母親と二人暮しをしているジミー。学校ではいじめられ、サッカーの試合では緊張のあまりいつも通りの力が出せない。しかしある時、不思議な老婆からもらったシューズを履いて試合に出てみたら、周りも驚愕するほどの大活躍ができて……。
主人公のジミー少年はサッカー・チーム、マンチェスター・シティの大ファン。しかし周りにはマンチェスター・ユナイテッド(マンU)のファンばかりで、いじめられる一因となる。マンUと言えば大スター、デービッド・ベッカムが在籍していたことで有名な人気チーム。こんなマンチェスターの日常を垣間見られるのもこの映画の魅力の一つだ。
北中部の訛りを聞くならこの映画!
The Full Monty
フル・モンティ(1997年)
失業中の冴えない6人の男たちが、生活のため、明るい未来をつかむためにストリップ・ショーを計画する人情味溢れるコメディ。舞台は北中部の町、シェフィールド。息子の親権を勝ち取るために、多額の金が必要となったバツイチ、職なしのガズ。同じく失業中の仲間5人を誘って、ストリップ・ショーを開き、金を儲けることを思い付く。
この映画で主人公のガズ役を演じているのは、スコットランド出身のロバート・カーライル。本作では味のあるシェフィールド訛りを披露している彼だが、実は「トレインスポッティング」、「ブラス!」、「リトル・ストライカー」など、北部を舞台にした数多くの作品に出演。英国地方ものの映画には欠かせない役者なのだ。
ウエールズ訛りを聞くならこの映画!
The Engishman Who Went Up A Hill
But Came Down A Mountain
ウエールズの山(1995年)
ウエールズの小さな村を舞台に、村自慢の山を地図に載せるために四苦八苦する村民たちの騒動を描いたコメディ。第一次大戦下、ウエールズの小さな村に、2人のイングランド人が山の測量をするためにやって来た。その結果、山として地図に載るには6メートル足りないことが判明し、村民たちは一計を案じる。
原題の「THE ENGLISHMAN WHO WENT UPA HILL BUT CAME DOWN A MOUNTAIN」、これには大きな意味がある。同姓の多いウエールズでは、「鍛冶屋ジョーンズ」、「葬儀屋ジョーンズ」など、姓にあだ名を付けて呼ぶことが多い。とてつもなく長い呼び名の祖父を持つ少年が、その呼び名の由来に興味を持ったことからこのストーリーは始まるのである。
格調高いRPを聞くならコレ!
Pride and Prejudice
高慢と偏見(1995年)
才気溢れる活発な女性と、気難しくて高慢な男性が、次第に惹かれあうようになる過程を描いたドラマ。ベネット家の近所に独身の資産家、ビングリーが越してきて、長女のジェーンと好意を寄せ合うように。一方次女のエリザベスは、ビングリーの友人で同じく資産家のダーシーと知り合うが、彼の高慢な態度に反発心を露にする。
95年にBBCがドラマ化したシリーズ。05年には映画化もされているが、ここでは本作を推したい。主人公のダーシーを演じているコリン・ファースは、同作品のパロディ、「ブリジット・ジョーンズの日記」でもダーシー役に。両作品で美しいRPを披露したコリンが、優雅で知的な英国男性の代名詞となったのは周知の通り。
コックニー訛りを聞くならこの映画!
Harry Potter and the Prisoner ofAzkaban
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(2004年)
ご存知、大人気「ハリー・ポッター」シリーズの第3作。ホグワーツ魔法魔術学校の3年生になったハリー。アズカバン刑務所を脱獄した極悪人のシリウス・ブラックに狙われていると聞き、何故見たことも聞いたこともない犯罪者に目をつけられたのか疑問に思う。実はそこには彼も知らない、両親の過去も絡んだ重大な秘密が隠されていたのだ。
主人公ハリーを始め、主要人物の話す言葉は標準発音。しかし本作品では、ロンドン中を時速160キロ以上で駆け巡るナイト・バスの車掌と運転手がコテコテのコックニー訛りを聞かせてくれる。本シリーズでは、その他にも地方訛りではないものの、立場によってさまざまな訛りが使い分けられているのが実にユニーク。