ファゴット
Faggot
先日、世界遺産の街バースにあるマーケット内のカフェで、「ファゴット」という珍しい料理を見つけました。名前に驚きつつも、とりあえず1人前注文して、その食べ物について質問しました。カウンターにいた女性は「豚の臓物にパン粉を混ぜた肉団子みたいなもの」と言い、「観光客の中には珍しがって注文する人が結構いる」とのことでした。
待つこと10分ほど。出てきたのは、小さめのテニス・ボールほどの塊2つ。それにフライド・ポテトとグリンピース、小振りの白いジャグに入ったグレービーが添えられています。「見た目はよくないけれど、食べてみると意外においしいですよ」と、お皿を置きながら店員さんが付け加えたのには、ちょっと笑ってしまいました。確かにプレゼンテーションでの高得点は狙えなさそうです。
まずは一口、何も付けずに食べてみました。口当たりは意外なほど柔らかく、ほろほろと口の中に溶ける感じです。若干肉の臭みがありますが、それを凌駕する迫力なのが「しょっぱさ」。たっぷり水を飲んでから、次はグレービーをかけて試しました。つやつやのグレービー(インスタントと思われる)がいい仕事をして、塩分をまろやかに緩和させ、今度はほっこりした食べ心地に。
カフェを出たあと、街中にある肉屋さんのウインドーに「ホームメイド・ファゴット」の文字を見つけました。1つ70ペンス。肉屋さんの手作りとなれば、もちろん試してみないわけにはいきません。早速2つ注文し、店の人に食べ方を質問すると、そのままでもオーブンで温めてもどちらでも良いとのこと。ちなみに彼は、チーズ&オニオン味のポテトチップと一緒に、冷たいままスライスしたファゴットを食べるのがお気に入りだとか!
さて、家に戻って早速試食。カフェで食べたものとの違いは、中身が締まっていて弾力があり、より肉団子らしいこと。そして、外側が腸の周りに付いている白い網脂で包んであること(食べられるが、これは外して食べる人も)。ただし、しょっぱさは同様だったので、ファゴットに使われている塩の量は相当なものと推定されます。
歴史的には、この名が初めて印刷物に登場するのは19世紀のことですが、それ以前から食されていたと考えられています。イングランド中部や、バースを含むイングランド南西部、ウェールズ地方にも同様のものがあり、臓物などの安い部位を使うことから、貧しい労働者階級などがよく食べていたようです。
ところで、ファゴットという名称ですが、最近ではホモセクシャルの人に対する蔑称として使われることがあります。私が最初にカフェでこの名前を見たときに驚いたのもそのためでした。でも本来は、「棒や木を束ねて縛ったもの」という意味があり、豚の肉や臓物を束ねて作ったこの食べ物に、その意味を当てたのではないかと言われています。
ファゴット風肉団子の作り方(6個分)
材料
- ポーク・ベリー ... 250g
- ポーク・レバー ... 100g
- 玉ねぎ ... 1/2個
- パン粉 ... 15g
- ナツメグ ... 適量
- タイム ... 適量
- オールスパイス ... 適量
- 塩・胡椒 ... 適量
作り方
- ポーク・ベリーとポーク・レバーを、ミンサー(ひき肉機) またはフード・プロセッサーでひき肉程度に細かくする。
- ❶にみじん切りにした玉ねぎ、パン粉、スパイス類、塩・胡椒を混ぜ、ハンバーグを作る要領で手でよくこねる。
- ❷を6等分し、それぞれを小さめのテニス・ボールくらいのボール状にまとめる。
- 160℃に余熱したオーブンで約1時間調理する。
- 表面がこんがりと焼け、中まで火が通っていれば出来上がり。グレービーをかけて召し上がれ。
memo
スーパーの冷凍食品コーナーではMR BRAIN'S (http://mrbrains.co.uk)というブランドのファゴットが購入できます。こちらも試食してみましたが、残念ながら「口福」とは程遠く、ひと口でギブアップしてしまいました(あくまでも私個人の感想ですので、勇気のある方はぜひチャレンジを)。