ロック・ケーキ
Rock Cake
「トード・イン・ザ・ホール」や「バブル& スクイーク」など、英国には名前を聞いただけでは一体どんな食べ物なのか想像もつかないようなものがありますが、今回ご紹介する「ロック・ケーキ」は、名前がそのまま姿形を表している、ゴツゴツとした岩のようなケーキです。とはいっても、岩のように硬いわけではないのでご安心を。ただし、ケーキと呼ぶにはちょっと違和感があるかもしれません。というのもこのお菓子、拳くらいの大きさで、干しぶどうが混ざった、食感がスコーンにとてもよく似ているものなのです。ミックス・スパイスが入っているので、スコーンに比べより風味があります。そしてぼそぼそとした食べ心地は紅茶にぴったり。というより、紅茶を飲まずしてこれだけで食べると、ちょっと口の中がパサパサしてしまうかもしれません(!)。
また、世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」ファンの方ならば、食べたことはなくても、「ハリー・ポッターと賢者の石」で、たっぷりとヒゲをたくわえた大男ハグリッドがハリーたちに作ってあげたお菓子として(このときは、岩のように硬かったのですが!)名前を知っているかもしれませんね。
記録に残っているレシピは1860年代までさかのぼれるようですが、それには、ナツメグを覆う皮、メースというスパイスや、レモンの皮、ブランデーなどのフレーバーが付けられていたというので、その名残で現在ではミックス・スパイスが加えられているのかもしれません。
もう一つの大事な材料は干しぶどう。たいていのレシピではサルタナが使われていますが、カランツやレーズンを使ったものもあります。ところでこのサルタナ、カランツ、レーズンですが、私は英国でベイキングをするようになるまで、干しぶどうにこのような種類があるとは知りませんでした。というのも、日本ではレーズンしか買ったことがなかったからです。
カランツはコリント・レーズンとも呼ばれ、ギリシャ原産で種無しの小さな濃い赤紫色のぶどうから作られます。レーズンやサルタナに比べてかなり小さめです。サルタナは蜂蜜色をしていて、白ぶどう(皮は緑ですが)から作られます。トルコ産のものが多く、チャールズ皇太子が創設したことで知られるオーガニック・ブランド「ダッチー・オリジナル」で購入したサルタナも、やはりトルコ産と表記されていました。レーズンは日本でもおなじみの焦げ茶色の干しぶどうです。
それぞれの干しぶどうでロック・ケーキを作り比べてみましたが、私はやっぱりサルタナが好みでした。干しぶどうの味が強すぎないのが良いのかもしれません。ただし、表面に出ているぶどうはオーブンで焼かれて焦げてちょっと苦い味がしてしまいます。でも、それも紅茶と一緒に流し込めば、まったく問題なくおいしくいただけます。
ロック・ケーキの作り方(約12個分)
材料
- セルフ・レイジング・フラワー ... 220g
- カスター・シュガー ... 70g
- バター ... 120g
- ベイキング・パウダー ... 小さじ1
- サルタナ ... 130g
- ミックス・スパイス ... 小さじ1
- 卵 ... 1個
- 牛乳 ... 大さじ1
- デメララ・シュガー ... 適量
作り方
- セルフ・レイジング・フラワー、カスター・シュガー、ベイキング・パウダーをボウルに入れて混ぜる。
- さいの目に切ったバターを❶に入れ、そぼろ状になるまで全体を混ぜる。
- ❷にサルタナを混ぜる。
- 別の器で混ぜ合わせた卵と牛乳を❸に入れ、木べらで混ぜ合わせる。
- ベイキング・シートを敷いたベイキング・トレイの上に、スプーン2つを使って、ゴルフ・ボール位の大きさに生地を置く(それぞれがあまりくっつき過ぎないように間隔をあけて)。
- ❺の上からデメララ・シュガーを振りかける。
- 190℃に予熱したオーブンで15~20分焼く。表面がき つね色になったら出来上がり。
memo
ロック・ケーキは英国で子供たちが学校や家庭で初めてベイキングを習うときによく使われるレシピと言われます。難しい成形など必要なく、出来上がりの形も楽しいので、ぜひお子さんと一緒に作ってみてください。