花の都、パリ。ロンドン市内から、最短で約2時間半弱にて気軽に赴くことができるこの街を、既にもう何回も訪れたという方は少なくないだろう。でも、ルーブル美術館やエッフェル塔といった名所を強行日程で駆け巡るだけが、パリ観光ではない。
むしろ、ゆっくりと気ままな散歩を楽しみながら、ふと立ち寄った小さなカフェで、新鮮なオレンジ・ジュースや濃厚なコーヒー、そして焼き立てのクロワッサンを口にするといった素朴な営の中にこそ、パリという街の魅力はある。海外旅行といえば、急ぎ足で駆け巡ってばかりになりがちな日本人観光客がまだ知らない、本当の贅沢を味わうための、パリの隠れ家カフェをご紹介する。
(本誌編集部)
フランスの上流階級の人々が、社交の舞台として利用してきた飲食空間を、サロン・ド・テと呼ぶ。内装やメニューにそれぞれの店ならではの独自の工夫が凝らされていて、私たちが普段、「カフェ」と呼んでいるものよりも華麗で優美な雰囲気を醸し出す、特別な場所だ。
パリ市内に数多くあるサロン・ド・テの中で、簡素な内装に、席数わずか16席の「Un Thé à Paris」が隠れた名店とされるのには、理由がある。叩き上げのケーキ職人が添加物などを一切使わずに作る、本物のそして新鮮なケーキがここでは味わえるのだ。メニューは、フォンダン・オ・ショコラ、さくらんぼのクラフティ、レモンのタルト、オーナーお勧めのピスタチオとアプリコットのパウンド・ケーキなど。どれも、手作りならではの優しい味がする。紅茶やコーヒーの種類も豊富だから、至福のコーヒー・タイムを味わうことができるだろう。
高野 千春さん 「週末の午後に、散歩がてらによく立ち寄っています」 マイバス フランス |
マレ地区 徒歩6分 パリの高級住宅街として知られる地区。ユダヤ人街やベトナム人街もあり、ショッピングにも便利。 |
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サン・ルイ島 徒歩8分 貴族の館が立ち並ぶ、閑静な場所。サロン・ド・テが数多く存在する、散歩に最適の地区。 |
エッフェル塔の目の前に隠れ家
Café Carlu
水〜月 11:00-18:30(木のみ20:30まで)
Cité de l'Architecture et du Patrimoine
1 Place du Trocadéro 75116 Paris Trocadéro
www.laffiche.fr
ある店が「隠れ家」と呼ばれるようになるためには、少なくとも2つの条件を満たす必要がある。第一に、当然ながら、いまだ広く知られていない、隠れた存在であるということ。さらに重要なのは、限られた人々だけが知る、特別な価値を持っているということだ。
「Café Carlu」は、まさにこの2つの条件を満たした隠れ家カフェ。まず、エッフェル塔の向かいに建つシャイヨー宮右翼の入り口から入って奥の突き当りで、セキュリティー・チェックを受ける。そこで「カフェに行きたい」と言うと、この「隠れ家」へと到着だ。テラス席に腰を下ろせば、目の前にそびえ立つのは、かのエッフェル塔。ときに耳障りに聞こえる観光の中心地ならではの雑踏に気をそがれることなく、パリを象徴する風景を前にして一服できる。強いて言えば、エッフェル塔の下から吹き込む風が強いのが難点。ただその分、天気の良い日は、心地良い空気を肌で受け止めることができるはずだ。
橋場 志穂子さん 「日本から旅行に来た友人をここに連れていくと、必ず喜んでもらえます!」 ボヤージュ・アラカルト |
シャイヨー宮 徒歩1分 海洋博物館、人類博物館、文化財美術館などが入っている。上記カフェのみへは、無料で行ける。 |
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エッフェル塔 徒歩5分 1889年のパリ万博開催を記念して建築された塔。高さ276メートルを誇るパリのランドマークとなっている。 |
パリ郊外でロマン派の息吹を吸いながら
Le Salon de Thé de Cathy
火〜日11:30-17:30
16 rue Chaptal 75009 Paris
Saint Georges、Pigalle、Blanche
www.vie-romatique.paris.fr
ロンドンと同じく、パリもその郊外へと足を延ばしてこそ、観光客が知らない、その街の本当の雰囲気に触れることができる。パリの郊外に、静かに佇むように建っているのが、パリ市立ロマン主義美術館。もともとは、ロマン派の画家アリ・シェフェールの自宅兼アトリエだったというこの場所には、画家のウジェーヌ・ドラクロワに、音楽家のフレデリック・ショパンやフランツ・リスト、そして作家のジョルジュ・サンドといった各界のロマン派芸術家たちが集った。その地に設けられた、小さいながらも美しい緑の庭園がカフェになっていると聞いただけで、言葉にならない、豊かなイメージが湧いてくる。
雰囲気だけのサロンではない。メニューには、毎朝市場で仕入れているという材料を使った手料理が並んでいる。自家製レモネードは、英国では決して味わえない、農業大国フランスならではの素朴だが本物の味がする。夏の日に木陰の下で飲むだけで、幸福感を覚えるはずだ。
ヴェロニック・ポトル・アンティーさん 「非常に静かな場所にあるので、まさに隠れ家という印象を抱くでしょう」 フランス観光局 |
オランジュリー美術館 徒歩5分 フランスを代表する印象派画家クロード・モネが日本式庭園を描いた大作「睡蓮」に出会える美術館。 |
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モンマルトルの丘 徒歩10分 白亜のドームを持つサクレ・クール聖堂が頂上にそびえる丘。パリ市内の風景を見渡すことができる。 |
パリ市民たちが愛する異国情緒
Le pain de la Bourse
月〜日7:30-19:00(月は17:00まで)
33 Rue Vivienne 75002 Paris Bourse
Tel: 0033(0)1 42 36 76 02
今ではロンドン市内にも数店舗を構えるようになったベルギー生まれの人気カフェ、Le Pain Quotidien。パリ市民の間での認知度はやはり相当高く、昼前の時間には、行列ができるほどの賑わいを毎日見せている。さて、隠れ家として紹介したいのは、このカフェ・チェーンからの独立を果たした、パリの日本人街からそう遠くない位置にある店。オペラ座の横道から入ったところにあるこのカフェで、観光客の姿を見かけることは、まずない。
まるで日曜大工で仕上げたような柔らかい香りのする木のテーブルに、太陽の光が差し込む大きな窓、天井から吊るされた照明。温かさとほんの少しの遊び心が混じった雰囲気に包まれたこの場所は、パリの人々が、友人や恋人とのひとときを過ごすために集う、いわば市民のカフェだ。
店内では、自家製ジャムやピーナッツ・バター、オーガニックのフルーツ・ジュースなども販売している。洒脱なパリの日常空間が、ここにある。
メリッサさん 「日曜日も朝早くから開いているから、休日を過ごすのにはとても便利」 女優 |
ガルニエ宮 徒歩5分 通称「オペラ座」。パリ国立オペラの公演会場となっている。 |
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Debaube&Gallais 徒歩1分 カフェの真横にある、フランスの王室ご用達のチョコレート屋さん。 |
超高級子ども服店の下にも隠れ家が
Bonpoint
月〜土11:00-18:00
6 rue de Tournon 75006 Paris Odeon
Tel: 0033 (0)1 40 20 10 55
パリ在住のセレブの子どもたちが着る、「超」がつくほどの高級子ども服ブランドが「Bonpoint」。ここでは、大人の高級服とも遜色ないほどの高品質の素材とデザインを扱った子ども服が、奥行きの深い洒落た美術館のようなスペースに飾られている。すぐに買い換えが必要となる子ども服にまでもこだわりを持つ、パリの上流階級の文化を覗くことができるはずだ。
最近では日本でも大きな人気を集め出したこのブティックの地下に、実は隠れ家カフェがある。室内中央とカウンターにスイーツ類が並べられた、ごく普通のカフェ。奥へと足を進めれば、ガーデンへとつながっている。店内に、小さなお子さんを座らせるためのスタンド・チェアが置かれているところなどはさすが。カフェ・メニューのほかに、オーガニック素材を使ったイタリア風の料理も提供している。一味違った、パリ観光を楽しむには最適。
Wさん 「入り口が超高級なこども服専門のサロン風になっています。奥の地下にあるカフェは、本物の隠れ家カフェです」 在仏日系大手旅行会社社長。出張や会議などで、日々、世界中を飛び回っている。その他、ヴォージュ広場近くにもお菓子の美味しい高級カフェを知っているとか。 |
リュクサンブール公園 徒歩5分 パリ市内で最も大きい公園。中央には、フランス元老院が建っている。 |
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ギャラリー・ラファイエット百貨店 徒歩10分 ルイ・ヴィトン、シャ ネル、カルティエなど、フランスの高級ブランドが入った人気デパート。 |
その他のパリの人気カフェ店
A Priori Thé
月〜金 9:00-18:00
(土は18:30まで)、日12:00-18:30
35-37 Galerie Vivienne 75002 Paris
Bourse
Cafe des 2 Moulins
7:00-23:00
15 rue Lepic 75018 Paris
Blanche
Hotel Costes
6:00-3:00
239 rue St Honore 75001 Paris
Opera
www.hotelcostes.com
月日が流れるのは早いもので、もう6月。この夏に日本への一時帰省を予定している人は、そろそろ航空券の手配をしなければいけない時期だ。そこでお勧めしたいのが、ロンドンー日本間を、パリ経由で移動する方法。滞在24時間以内であれば、追加料金なしでパリ市内を観光できるのだ。花の都パリを中継地点として使うことができるという、英国在住者の特権。日本に帰国する前に、パリのカフェで一服、なんて最高の贅沢だ。
07:35 | ロンドン ヒースロー空港発航空便が出発 |
09:50 | パリ シャルル・ド・ゴール空港着 |
11:30 | パリ市内に到着 (空港よりエール・フランス・バスにて所要約1時間) |
21:00 | パリ市内を出発、シャルル・ド・ゴール空港へ |
23:35 | パリ シャルル・ド・ゴール空港発航空便で東京へ |
もちろん、パリの市内へ立ち寄らずに、パリ経由でロンドンー日本間を移動することもできる。エール・フランスの航空便であれば、パリでの乗り換えは同じターミナルにある同じゲート内での移動で済む。
パリの空港に到着 シャルル・ド・ゴール空港に到着後、飛行機を降りると、乗り換え口へと出る。ストップ・オーバーする場合でも、預け荷物を受け取る必要はない。そのまま出口へと向かう。 |
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空港バスや鉄道でパリ市内へ 到着出口から、歩いて50メートルほどの場所に空港バス発着所がある。ここからパリ市内へと移動するエール・フランス・バスが、30分ごとに運行。またユーロスターが発着するパリ北駅まで鉄道が走っている。 |
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パリ市内に到着 パリ市内までの空港バスの所要時間は約50分。凱旋門前とオペラ座前に到着する2つのルートがある。 |
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パリの隠れ家カフェで一服 散歩とカフェめぐりで半日を費やすためにパリを訪れることができるなんて、最高の贅沢。 |
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