初めまして。今回からコラムを執筆させていただきますグレアム・ロレンスと申します。この連載では、自分が日本人と共に働いた30年間の経験を基に、日英の共同職場における課題について考え、日本人の皆さんの役に立つ記事にしたいと思います。
私が1980年代半ばに日本語を習い始めた時は、日本語の教材は非常に限られており、漢字の物はほとんど手に入りませんでした。そのため、日本語で書かれている英国ニュースダイジェストは大変貴重な情報源でした。辞書を片手に漢字を一つひとつ丹念に調べながら記事を解読していきましたので、進歩は極めて遅かったです。数十年経って自分が同じ誌面に記事を書くことになるとは思いもしませんでした。こういう縁もあるのですね。この機会を与えられ、光栄に思っています。日本語は母国語ではありませんので、多少の拙い日本語をお許しください。
さて、英国人と日本人が一緒に働いている場面を身近で見てきた私には、なかなか目に見えない「壁」があると感じます。
その壁を突破し、真の意思疎通を図るためには、行動の背景にある文化や思考についてお互いにもっと知らなければならないと思います。なぜ相手がその行動を取っているか、なぜそのレスポンスをしているか、を考える意味があると信じています。
日系企業に勤めている多くの英国人社員は日本のビジネス慣習に興味を持っていますが、その知識は時として偏ったテレビ番組などから得られています。日本で生活したことがなければ、それは仕方がないでしょう。従って、日本人社員は日本的な考え方を相手に伝える必要がありますが、その適切な機会はなかなか作れません。また、(そのつもりがなくても)上から目線で話していると思われると、逆効果をもたらします。「日本ではこうだから」という一方的な、英国人の納得が得られない話し方は効果的ではありません。ですが、「日本本社では○○をするために△△が必要だから、こちらからXXの情報を提示する必要がある。それを用意してもらえると大変助かる」のような頼み方、つまり、「その作業が必要とされている理由」や「本社にとってのメリット」を説明すれば、頑固な英国人でも納得して快く動くでしょう。
日本本社に何らかのデータの提示を要求する時に早く返事をもらいたい場合、最初から補足資料をできるだけ付けて依頼すると効果的なはずです。しかし、ここで問題なのは、日本側では依頼の背景説明を期待しているということを、英国人が気付いていない可能性があることです。こうした場合、日本側は自分たちの希望を明確に伝える必要があります。「一を聞いて十を知る」は、英国人スタッフからは期待できませんので。早い段階でコミュニケーションを取ることをお勧めします。
本コラムでは現地の同僚と良い関係を築くコツ、日本人駐在員の悩みを理解してもらうことの大切さ、現地スタッフを戸惑わせる日本人の英語、日系企業と現地企業文化の融合などのテーマで話していきます。今後取り上げてほしい話題や場面について、読者からの投稿も大歓迎です。
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