ロンドン南部のオアシス的存在
開館200年を迎えた
ダリッジ・ピクチャー・ギャラリー
Dulwich Picture Gallery
ロンドン南部にあるダリッジ・ピクチャー・ギャラリーは1817年、イングランドで初めて一般市民に向けて開かれた美術館。所蔵コレクションの充実度もさることながら、自然光を取り入れたその建築は、美術館デザインにおける秀作と言われている。今月、開館200年を迎えるダリッジ・ピクチャー・ギャラリーの魅力を紹介。
ダリッジ・ピクチャー・ギャラリーが出来るまで
17~18世紀の欧州の絵画を集め、1817年に一般市民に向けた美術館として出発したダリッジ・ピクチャー・ギャラリーだが、開館までは紆余曲折があった。
18世紀末、ポーランド・リトアニア共和国のポーランド王の依頼で、フランス人画商とともに絵画の収集を担当していたスイス系英国人画家のフランシス・ブルジョワは、5年をかけて欧州の名画を集めたが、1795年にポーランドが分割され、コレクションは行き先を失う。売却先が決まらぬまま共同経営者の画商が死去し、ブルジョアはすべてのコレクションを1人で抱えることに。自分の亡き後は、教育施設だったダリッジ・カレッジ内のギャラリーへコレクションを寄付するよう遺言を残した。当時ここにはカレッジ創設者エドワード・アレンやコレクターのウィリアム・カートライトによる絵画コレクションが存在していたが、ほこりをかぶっている状態だったという。ブルジョアは、このギャラリーを新装し、デザインは友人の建築家ジョン・ソーンが担うよう指示していた。
新古典主義の建築家として名高いジョン・ソーンは、友人の遺志を継いで1811年にギャラリーの新装に取り掛かる。1817年に一般公開されるが、天窓から自然光を取り入れるスタイルは、20世紀の米モダニズム建築家フィリップ・ジョンソンに「ソーンは我々に絵画の展示方法を教えてくれた」と言わせしめ、後に続く美術館建築に大きな影響を与えた。
200年記念のパビリオンがオープン
6月2日、ギャラリーの中庭にテンポラリー・パビリオンがオープン。これは開館200年を記念して建築されたもので、デザインは新鋭建築家向けコンペティションによって決定された。入賞したのは、ロンドン南部カンバーウェルのデザイン会社「IF_DO」。ガラスや半透明の素材を多用し、周囲の景色に溶け込む空間を作り上げた。このパビリオンは夏の間、イベント・スペースとして利用される。最終日は10月8日(日)で、入場は無料だが18時以降の入場はオンラインで事前予約が必要になる。
夏の夜空に浮かび上がるあパビリオン
また、バー・エリアには南ロンドンのガストロ・パブ「ザ・カンバーウェル・アームス」が出店。カクテルなどとともに、手作りハムやソーセージ、スモーク・サーモン、アイスクリームなどが楽しめる。
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開催中のエキシビション
ジョン・シンガー・サージェントの水彩画展
19世紀末から20世紀初頭にかけて、英国を始め欧州で活躍したイタリア生まれの米国人画家、ジョン・シンガー・サージェントの水彩画を80点近く集めたエキシビション。「マダムX」などの肖像画や、幻想的な油絵「カーネーション・リリー・リリー・ローズ」で知られるサージェントだが、このエキシビションではサージェントが1900~1914年に欧州やトルコなどを旅した時期に描いた、より自由でカラフルな風景画がメインとなっている。
Sargent: The Watercolours
2017年6月21日(水)~10月8日(日)
イベント情報
Dulwich Picture Gallery
火~日 10:00-17:00
£7(特別展込みだと£15.50)
Gallery Road, London SE21 7AD
Tel: 020 8693 5254
West Dulwich/North Dulwich駅
www.dulwichpicturegallery.org.uk