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Sat, 12 October 2024
イギリス・ロンドンのイベント紹介

100 YEARS OF JAPANESE CINEMA

過去の名作が勢ぞろい 英国で目覚める 日本映画の魅力 2021年10月18日~12月30日 / BFI Southbank

100 YEARS OF JAPANESE CINEMA

British Film Institute (BFI) では「100 Years of Japanese Cinema」と銘打ち、年末まで続く大規模な日本映画祭を開催する。このうち、パート1(10月18日~11月30日)では日本映画の黎明期から1960年代前半までの作品を紹介。黒澤、溝口、小津の3巨匠が次々に名作を発表する一方で、ゴジラも登場した日本映画の黄金時代、1950年代を中心としたラインナップとなっている。パート2(12月1日~30日)では1960年代後半~20世紀末までの作品が紹介される予定だが、本号では、パート1の見どころに加え、世界の中の日本映画の立ち位置や、欧米に影響を与えた作品について考察する。これを機会に、「題名は知っているけれど実は観たことない」という過去の名作に挑戦してみては?(文: 英国ニュースダイジェスト編集部)

上映会場

BFI Southbank (National Film Theatre)
Belvedere Road, South Bank, London SE1 8XT

チケット入手方法

オンライン
公式ウェブサイトから直接購入
https://whatson.bfi.org.uk/Online/default.asp
電話:Box Office
Tel: 020 7928 3232(毎日11:30~20:30)

チケット料金

スタンダード・チケット
£6.00-13.75

1921-1945 近代日本映画のはじまりから終戦まで

日本で初めて映画が上映されたのは1896年(明治29年)。トーマス・エジソンが米国でキネトスコープを発明したのがそのわずか数年前であり、映画の父と呼ばれるフランスのリュミエール兄弟が初めて映画館で動画を発表したのが1895年であることを考えれば、かなり早い導入だといえる。ただ、初期の作品の多くは歌舞伎や人形浄瑠璃の影響を受けた、いわば演劇を再現したものだった。やがて日露戦争(1904~05年)が起こると戦地に撮影班が赴き、その映像がドキュメンタリーとして発表された。クローズ・アップやカットバックなどの映画ならではの手法が導入され始めたのは1910年代後半。このころには「活動写真」という呼称は「映画」にとって代わり、一般にも浸透した。

やがて、1918年(大正7年)に映画は演劇の模倣ではないとする「純映画劇運動」が起こるほか、この頃に米ハリウッド作品が次々と日本に上陸。こうした動きに影響され日本でも映画会社が相次いで設立され、1920年には歌舞伎を扱う松竹が映画製作に参入。ハリウッドのスター・システムを採用した俳優養成所も作り、多くの人気女優が誕生した。日本映画の歴史が本格的に始まるのはこの時期からといってよいだろう。

1921年作品、「路上の霊魂」の撮影風景。冬の軽井沢でロケが行われた1921年作品、「路上の霊魂」の撮影風景。冬の軽井沢でロケが行われた

路上の霊魂
Souls on the Road(1921年、112分)

Souls on the Road

10月22日(金)18:00 NFT2
10月30日(土)15:30 NFT2

監督: 村田実
出演: 小山内薫、鈴木傳明、澤村春子

演出家で劇作家の小山内薫が製作総指揮、主演も務めたサイレント作品。ヴィルヘルム・シュミットボンの「街の子」とマクシム・ゴーリキーの「どん底」をもとにしたドラマで、D.W. グリフィス監督の「イントレランス」など、当時のハリウッド作品の影響を多大に受けている。日本映画を歌舞伎や新派の延長として捉えていた観客には非常に西洋的に映り不評だったものの、実験的な手法を散りばめた画期的な作品で、後の日本映画界に影響を与えた。

狂つた一頁
A Page of Madness(1926年、70分)

A Page of Madness

10月23日(土)13:00 NFT2
11月15日(月)20:50 NFT3

監督: 衣笠貞之助
出演: 井上正夫、飯島綾子、中川芳江

ドイツ映画「カリガリ博士」の影響を受けた、日本初のアヴァンギャルド作品。精神病院を舞台に、患者である妻の側で暮らすため、病院の使役夫になった男性の幻想と現実を交錯させて描く。映像の純粋性を保つ理由から全編無字幕となったサイレント映画だ。「オブザーバー」紙は「衣笠貞之助はガンス、エイゼンシュテインと並び映画の神殿に祀られるだろう」と評し、「タイムアウト」誌も「今でも見ることのできる最も過激で挑戦的な日本映画の一つ」としている。

隣の八重ちゃん
Our Neighbour, Miss Yae(1934年、76分)

Our Neighbour, Miss Yae

10月24日(日)12:40 NFT2
11月1日(月)18:15 NFT2 *
* intro by season co-programmer Alexander Jacoby

監督: 島津保次郎
出演: 井上正夫、飯島綾子、中川芳江

小津安二郎の映画に代表される、庶民の慎ましやかな日常を描いたホーム・ドラマ。「蒲田調」「小市民映画」とも呼ばれるこうしたジャンルは、小津の師である本作の島津保次郎が開拓した。隣に住む兄弟に淡い恋心を抱く少女だが、嫁ぎ先から出戻ってきた姉も、兄弟に興味を示し始めたのに気付いてしまい……。日本映画研究家で批評家のドナルド・リチー氏が、「人生そのものを盗聴するような」と形容した、松竹の初期トーキー作品だ。

人情紙風船
Humanity and Paper Balloons(1937年、86分)

Humanity and Paper Balloons

10月24日(日)15:00 NFT2
11月2日(火)20:45 NFT2

監督: 山中貞雄
出演: 河原崎長十郎、中村翫右衛門、山岸しづ江

本作の封切り当日に召集令状が来て中国に出兵し、翌年現地で赤痢のため28歳で死去した山中貞雄の遺作。5年間の監督生活で山中が発表したのは24本だが、現存する作品は3本のみ。そのなかの1本が本作だ。舞台は江戸時代でありながら、現代劇と変わらないセリフや会話を取り入れ、形式的だった時代劇に新風を吹き込んだことで知られる。フランソワ・トリュフォー監督は、かつてこの作品を「一分のすきもない完璧な画づくりに成功している」と絶賛した。

花ちりぬ
Fallen Blossoms (aka Flowers Have Fallen)(1938年、74分)

Fallen Blossoms

10月31日(日)13:00 NFT3
11月3日(水)18:20 NFT2 *
* intro by Japanese film scholar Alejandra Armendáriz-Hernández

監督: 石田民三
出演: 花井蘭子、水上伶子、三條利喜江

国家総動員法が公布され、戦争の足音が迫る昭和13年に発表されたガールズ・ムービー。尊皇派と佐幕派が争う幕末の京都を舞台に、あるお茶屋で働く舞妓や芸者、下働きの女性たちなどの姿を現代的に描く。男性は全く出てこず、乱闘シーンなども聞こえてくる声だけで表現するユニークな手法で、混乱の時代を女性の目を通して描き、争いの愚かさを暗示した。映画評論家のノエル・バーチは「最も注目に値する群像劇の一つ」と評した。

無法松の一生
The Life of Matsu the Untamed (aka The Rickshaw Man)
(1943年、79分)

The Life of Matsu the Untamed

10月26日(火)20:40 NFT2
11月7日(日)11:49 NFT2

監督: 村田実
出演: 小山内薫、鈴木傳明、澤村春子

岩下俊作の同名小説をもとに、戦況が悪化し日本本土への空襲が始まった昭和18年に製作されたヒューマン・ドラマ。陸軍将校の未亡人への秘めた愛情から、一家に献身的に尽くす人力車夫の姿を描く。脚本は伊丹十三の父親で自身も名監督の伊丹万作が担当。戦意昂揚のための宣伝やスローガンが出回り、滅私奉公を善とした時期にあって、珍しいほどに繊細で人間的な作品といわれている。何度か映画化されたが、本作がオリジナル。

1946-1955 戻ってきた日常を描きながら戦争を振り返った時代

小津安二郎監督のかけた魔法

英国の映画専門誌「サイト・アンド・サウンド」が10年ごとに選出する「史上最高の映画トップ100」で、現在第1位に選ばれているのが小津安二郎監督の「東京物語」。サイレント映画のころから作品作りをしていた小津だが、戦後になってからは親子の分断や家庭の崩壊を「小津調」と呼ばれる独特のスタイルで繰り返し描いた。1950年代前半から、黒澤明や溝口健二の作品が海外の映画祭で評価を受けるようになったものの、小津作品の多くは伝統的な日本の家庭生活を描いたものであることから、外国では理解されないだろうと思われていた。そのため海外での紹介が遅れ、最初に評価されたのは、1957年のロンドン・フィルム・フェスティバルで上映された「東京物語」だった。翌年にはBFIが設立したその年の最も独創的で創造性に富んだ映画監督に贈られるサザーランド杯の第1回を受賞し、海外での小津作品の評価が高まるきっかけとなった。

構図へのこだわりや独特な演出について多く語られる小津作品だが、国を問わず誰もが持つ感情や、家族に関する出来事を描いたことが人気の秘密。

麦秋
Early Summer(1951年、125分)

Early Summer

10月18日(月)14:30 NFT3
10月19日(火)20:35 Studio
10月20日(水)17:50 NFT3
11月18日(木)20:20 NFT3 *
* intro by Professor Alastair Phillips, University of Warwick
11月21日(日)11:30 NFT1

出演: 原節子、笠智衆、菅井一郎

お茶漬けの味
The Flavour of Green Tea over Rice(1952年、115分)

The Flavour of Green Tea over Rice

10月18日(月)18:10 NFT2
10月20日(水)20:40 NFT2
10月21日(木)14:40 Studio
11月8日(月)14:30 NFT3

出演: 小暮実千代、佐分利信、淡島千景

東京物語
Tokyo Story(1953年、136分)

Tokyo Story

10月18日(月)20:20 NFT3
10月21日(木)14:30 NFT1
11月13日(土)14:10 NFT1
11月30日(火)14:00 Studio

出演: 笠智衆、東山千栄子、原節子

蜂の巣の子供たち
Children of the Beehive(1948年、86分)

Children of the Beehive

10月25日(月)20:45 NFT1 *
* intro by season co-programmer Alexander Jacoby
11月8日(月)18:20 NFT2

監督: 清水宏
出演: 岩波大介、夏木絢子、御庄正一

戦争が日本の子どもたちに与えた壊滅的な影響を、清水宏監督が自ら引き取って育てていた戦争孤児たちを主人公に描いたドラマ。もともと清水は過度の演技を嫌い、作為ではないあるがままなものを好んだため、子どもや素人を好んで起用した。同時期にイタリアで盛んだったネオリアリズムの潮流にも近く、その日本版であるともいわれている。本作は孤児のグループと、復員して来たが帰るべき家のない兵士によるロード・ムービー。

わが恋は燃えぬ
My Love Has Been Burning (aka Flame of My Love) (1949年、84分)

My Love Has Been Burning

11月5日(金)18:30 NFT2
11月15日(月)17:40 NFT1

監督: 溝口健二
出演: 田中絹代、水戸光子、菅井一郎

日本社会における女性の窮状を記録するような作品を撮り続けた溝口健二の、最も政治的な作品の一つで、19世紀後半のフェミニストの先駆者である影山秀子の生涯を描いたパワフルなドラマ。「女性の勝利」「女優須磨子の恋」に続く女性解放3部作の第3弾で、溝口作品の常連、田中絹代が女性解放運動に苦闘する影山を演じる。日本では失敗作と呼ばれ、なかなか上映されることがない。原案は野田高梧、脚本は映画監督デビュー前の新藤兼人が担当した。

恋文
Love Letter(1953年、97分)

Love Letter

11月6日(土)12:30 NFT2
11月21日(日)14:40 NFT1 *
* intro by Irene González-López, co-editor of Tanaka Kinuyo: Nation, Stardom and Female Subjectivity

監督: 田中絹代
出演: 森雅之、久我美子、宇野重吉

すでに大女優としての地位を築いていた田中絹代が挑んだ、初の監督作品。丹羽文雄の同名小説を木下恵介の脚本で製作。復員後、東京で米兵へのラブレターの代筆で糊口をしのいでいた男 性は、あるとき幼なじみの女性が客として現れたことにショックを受ける。昔、2人は互いに好意を抱いていたものの、親の反対で結ばれず、女性は別の男性と結婚したはずだった……。スター俳優が多数カメオ出演し、カンヌ映画祭出品作ともなった。

大阪の宿
An Inn at Osaka(1954年、122分)

An Inn at Osaka

11月6日(土)15:30 NFT2
11月21日(日)18:00 NFT1 *
* pre-recorded intro by Professor Hiroshi Kitamura, College of William & Mary

監督: 五所平之助
出演: 佐野周二、川崎弘子、水戸光子

大阪の中心地にある旅館とその周辺に住む庶民の様子を、ユーモアを交えてリアルに描いたドラマ。清濁併せ呑んだ人間賛歌は、批評家のドナルド・リチーに「物事はこれ以上悪くなりようがない、だから後は良くなるだけ」というとても日本的な感覚に満ちた作品であるといわせしめている。監督は「最も不当に無視されている日本の監督の一人」と呼ばれる五所平之助、原作は「貝殻追放」などの随筆で知られる水上瀧太郎の同名小説。

ゴジラ
Godzilla(1954年、96分)

Godzilla

11月7日(日)15:50 NFT3
11月23日(火)20:40 NFT2

監督: 本多猪四郎
出演: 志村喬、平田昭彦、宝田明

当時社会問題となっていた、ビキニ環礁の核実験に着想を得て製作された特撮怪獣映画。多くの続編を生み出し、近年ハリウッドでもリメイクされたが、原子爆弾によってゴジラが長い眠りから覚める本作は、エンターテインメントと原子力時代への批評の両方を兼ね備えた名作。ギレルモ・デル・トロ監督は、2013年の米映画「パシフィック・リム」の最後に「この映画をモンスターマスター、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」と献辞を出している。

山椒大夫
Sansho the Bailiff(1954年、124分) 

Sansho the Bailiff

11月8日(月)20:40 NFT1
11月28日(日)18:20 NFT1

監督: 溝口健二
出演: 田中絹代、花柳喜章、香川京子

「安寿と厨子王丸」の童話でも知られる説話、「さんせう太夫」をもとにした森鴎外の小説を溝口健二が映画化した、ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞作。BFI は「日本の全ての映画の中で最も優れたヒューマン・ドラマ」、「これまでに撮影された映画の中で最も息をのむようなエンディングの一つ」と最大限の賛辞を送っている。ジャン=リュック・ゴダールは「気狂いピエロ」で最後の海のシーンを再現し溝口にオマージュを捧げた。

夫婦善哉
Marital Relations(1955年、120分)

Marital Relations

11月7日(日)18:20 NFT2
11月25日(木)18:00 NFT2

監督: 豊田四郎
出演: 森繁久彌、淡島千景、司葉子

谷崎潤一郎や川端康成など、文芸作品の映画化を得意とした豊田四郎監督の代表作。本作の原作は織田作之助の同名小説で、大阪を舞台に裕福な家庭の跡取り息子としっかりものの芸妓の恋愛関係を描く。BFIは「日本映画の中でも最も成熟したリアリスティックなカップルの描写」と説明し、森繁久彌と淡島千景という主演2人の演技に拍手を送っている。

野菊の如き君なりき
She Was Like a Wild Chrysanthemum(1955年、92分)

She Was Like a Wild Chrysanthemum

11月9日(火)18:20 NFT2
11月30日(火)20:40 NFT1

監督: 木下惠介
出演: 有田紀子、田中晋二、杉村春子

歌人の伊藤左千夫による小説「野菊の墓」を木下惠介が監督・脚色したドラマ。信州の美しい自然を背景に、ある少年と少女のはかない恋の行方を描く。1955年度キネマ旬報ベスト・テン第3位と、当時も大ヒットした作品。メロドラマの専門家である木下が、幼い2人の純愛をサイレント映画にも似たフラッシュバックの形式で表した。年老いたかつての少年による回想形式で物語が進んでいく。

1956-1964 あらためて日本の在り方を考えた高度成長期

黒澤明監督の心意気

米国の西部劇を愛し、トルストイやシェイクスピアの作品を下敷きに戦国時代の日本を描いてみせた黒澤明だが、そもそもの始まりは1954年の第15回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した「七人の侍」だったといえる。「生きる」(1952年)の製作後、次はリアルな時代劇を作ろうと黒澤は考えたという。それまでの時代劇は歌舞伎の影響を受け、形式にのっとって立回りを美しく演じ、衣装や風俗なども時代考証を無視して美化されたものばかりだった。黒澤はこうした既成の時代劇の作り方を排除し、劇的かつリアリスティックな作品を作り上げた。

英専門誌「サイト・アンド・サウンド」の選出トップ100では小津監督の「東京物語」が1位を獲得したが、BBCが2018年に行った同様のベスト100「外国語映画トップ100」では、黒澤明の「七人の侍」が1位に輝いている。戦国時代を舞台に、野武士の略奪に悩む百姓たちに雇われた7人の侍が野武士の襲撃から村を守るストーリーは、「荒野の七人」「スター・ウォーズ」をはじめ多くの作品に影響を与えた。

七人の侍
Seven Samurai(1954年、207分 休憩あり)

Seven Samurai

10月29日(金)各地で上映
10月29日(金)18:30 NFT1
10月30日(土)14:00 NFT1 / 18:40 NFT1
10月31日(日)11:40 NFT2 / 17:00 Studio

出演: 三船敏郎、志村喬、津島恵子

蜘蛛巣城
Throne of Blood(1957年、110分)

Throne of Blood

10月18日(月)20:35 Studio
10月19日(火)18:10 NFT1
10月21日(木)20:35 NFT2 *
10月27日(水)20:30 NFT2
11月9日(火)20:40 NFT2
11月12日(金)14:15 NFT3 *
11月27日(土)20:50 NFT1
* Inside Cinema: Akira Kurosawa

出演: 三船敏郎、山田五十鈴、志村喬

用心棒
Yojimbo(1961年、110分)

Yojimbo

10月19日(火)20:45 NFT1
10月21日(木)17:55 Studio
11月19日(金)14:30 Studio *
11月26日(金)18:10 NFT3
11月28日(日)12:00 NFT1 *
* Inside Cinema: Akira Kurosawa

出演: 三船敏郎、仲代達也、山田五十鈴

早春
Early Spring(1956年、145分)

arly Spring

10月19日(火)14:30 NFT2
10月20日(水)20:15 Studio
10月21日(木)17:30 NFT2
11月20日(土)14:50 NFT3
11月23日(火)17:40 NFT2

監督: 小津安二郎
出演: 淡島千景、池部良、岸恵子

若いサラリーマン夫婦の危機と2人をめぐる人間模様を描いた、1950年代 5作目の小津作品。いつも決まった俳優たちを使う小津には珍しく、主演に東宝の淡島千景と池部良、そして「君の名は」で松竹の看板俳優となった岸恵子を起用している。また、不倫という題材を扱っており、これまでの小津の家族ドラマとは異なる設定。家庭内から職場へと微妙に重点を移したところも新鮮だといえる。

雪之丞変化
An Actor's Revenge(1963年、113分)

An Actor's Revenge

10月20日(水)14:15 NFT1
11月1日(月)14:30 NFT2
11月11日(木)20:40 NFT3 *
* intro by Jennifer Coates, University of Sheffield
11月20日(土)12:15 NFT3

監督: 市川崑
出演: 長谷川一夫、山本富士子、若尾文子

昭和10年に朝日新聞に掲載されていた三上於菟吉の人気時代小説を映画化。上方歌舞伎の花形女形である中村雪之丞は、舞台で演技中にかつて父を陥れた、もと長崎奉行、土部三斎一味の姿 を見つける。雪之丞は父の仇を討つべく計画を立てるが……。人気時代劇スター長谷川一夫の映画出演300本目を記念して製作された娯楽時代劇で、長谷川の一人二役が見られる。本作は何 度も映画化、テレビドラマ化され、長谷川の当たり役の一つとしても知られる。

夜の鼓
Night Drum(1958年、97分)

Night Drum

11月10日(水)20:50 NFT2
11月16日(火)18:15 NFT2

監督: 今井正
出演: 三國連太郎、有馬稲子、夏川静江

近松門左衛門の1706年の浄瑠璃「堀川波鼓」をもとにした時代劇。監督の今井正は、沖縄戦で看護婦として前線に送られたひめゆり学徒隊の悲劇を描いた「ひめゆりの塔」や、人種差別批判をテーマにした「キクとイサム」などの社会派作品で知られ、本作も、封建時代の武士の妻の姦通事件を扱い、武家社会をリアリズムで描き出した異色作として評価された。脚本は橋本忍と新藤兼人の共同執筆だが、実は今井監督と三國連太郎によるものという説も。

しとやかな獣
Elegant Beast (aka The Graceful Brute)(1962年、96分)

Elegant Beast (aka The Graceful Brute)

11月17日(水)20:50 NFT3
11月27日(土)18:30 NFT1 *
* pre-recorded intro by Professor Yuka Kanno, Doshisha University

監督: 川島雄三
出演: 若尾文子、船越英二、浜田ゆう子

戦後復興から高度成長期を迎えた日本で、表の顔と裏の顔を使い分けながらたくましく強欲に生きる人々の姿を、郊外の高層住宅の一室を舞台に描いたブラック・コメディー。監督の川島雄三は、本作のような卑俗ではあるものの、ハイセンスで人間味あふれる群像劇を得意としており、代表作には「幕末太陽傳」(1957年)がある。評論家のグレゴリー・バレットは「しとやかな獣」を「日本のブラック・コメディーの見本」と評している。

切腹
Harakiri(1962年、134分)

Harakiri

11月10日(水)18:00 NFT1
11月16日(火)20:25 NFT2

監督: 小林正樹
出演: 仲代達矢、石浜朗、丹波哲郎

見知らぬ男が中庭で切腹する許可を求めて一族の邸宅を訪れた。やがて冷酷で非人道的な物語が次第に明らかになっていく。社会派の小林正樹が初めて監督した時代劇。武家社会の虚飾や武士道の残酷性などを容赦なく取り入れ、日本人が尊重していた武士道への批判がこめられた作品。ただ海外ではこれが古典的な悲劇美として評価され、第16回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。

東京オリンピック
Tokyo Olympiad(1964年、170分)

Tokyo Olympiad

11月20日(土)16:40 NFT2
11月24日(水)18:40 NFT2

監督: 市川崑

市川崑が総監督を務めた1964年の東京オリンピックの公式記録映画。脚本に詩人の谷川俊太郎が参加するほか、カメラマンには溝口健二・黒澤明作品で知られる宮川一夫を招いて作り上げた。選手たちの心情の表現を重視した演出など、従来の記録映画とは全く性質の異なる非常に芸術性の高い作品で、一部からは批判も出た。1936年のベルリン・オリンピックを記録したレニ・リーフェンシュタール監督の「民族の祭典」と比較されることも多い。

乱れる
Yearning(1954年、96分)

Yearning

11月12日(金)18:20 NFT2
11月26日(金)21:00 NFT1

監督: 成瀬巳喜男
出演: 高峰秀子、加山雄三、草笛光子

死んだ夫に代わり酒屋を切り盛りする女性と、年下の義弟との禁断の恋を切なく描くメロドラマ。女性を撮ることに長けているといわれる成瀬はたびたび高峰秀子を起用しているが、BFI は「高峰秀子は成瀬の偉大なミューズであり、小津の原節子、溝口の田中絹代のそれにあたる」と説明。表情豊かな高峰の顔は、最も生々しい感情を表現することが可能だと賞賛している。また、歌手で俳優の加山雄三は本作で意外なほど繊細な演技を披露している。

鬼婆
Onibaba (1964年、103分)

Onibaba

11月19日(金)20:50 NFT2
11月30日(火)17:50 NFT1

監督: 新藤兼人
出演: 乙羽信子、吉村実子、佐藤慶

南北朝末期、戦乱で男手を失った姑と嫁は、落武者を殺し武具を奪って売りさばくことで糊口をしのいでいた。やがて姑は嫁が戦場から戻った若い男と恋仲になったことを知ると、嫉妬のあまり般若の面を付けて二人を脅し始める……。仏教説話をもとに、人間の業の深さを生々しく描いた名作ホラー。鬼才として知られるウィリアム・フリードキン監督は本作の大ファンとしても知られ、自作の「エクソシスト」もこの作品の影響を受けたといわれている。

同時期に開催のインディペンデント映画祭
レインダンス・フィルム・フェスティバル
29th Raindance Film Festival / 10月27日~11月6日

英最大規模のインディペンデント映画祭「レインダンス・フィルム・フェスティバル」が、第29回目となる今年もロンドン各地で開催される。ここでは今回上映される日本発の長編作品にスポットを当てた。

https://raindance.org/festival

カーヴィング・ザ・ディヴァイン
Carving the Divine: Buddhist Sculptors of Japan(2020年、98分)

仏像を専門に彫る彫刻家、仏師に長期密着して知られざる職人の世界を描き出したドキュメンタリー。急速に変化を続ける日本社会で、1400年にわたる仏像づくりの伝統を守るために奮闘する職人たちの厳しい日々をカメラが捉える。教える者は技術だけではなくそれに見合った精神を後世に受け継がせなければならず、若い世代は師弟制度という昔ながらの方法で、厳しい教えの中から仏像づくりを学んでいく。この作品はその技と心に迫ることで、伝統の本質について考えるきっかけを与えてくれる。

メガホンを取ったのは米国在住の映像作家、関勇二郎監督。生家が仏壇店を営んでいたため、幼いころから仏像が身近な存在だったという経緯もあり、海外で日本人としてのアイデンティティーを考えるにあたり、自然に仏師という日本古来の職業がテーマとして浮かび上がってきたという。

11月2日(火)14:30

監督: 関勇二郎
出演: 斎藤侊琳、関侊雲、紺野侊慶

Genesis Cinema
93-95 Mile End Road, London E1 4UJ

チケット購入
raindance.org/festival-programme/carving-the-divine-buddhist-sculptors-of-japan

映画公式ウェブサイト
www.carvingthedivine.com

関勇二郎(せき ゆうじろう)

群馬県出身。高校を卒業後渡米し、カリフォルニア州立大学バークレー校で映画(Film)の学士号を取得する。モンテシト芸術学院、ミュージックビデオ制作会社レービス101フィルムを経てカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校Extentionで映像撮影学を修めた後、海外を拠点にフィルム・メーカーとして活動している。

 

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