新型コロナウイルス 世界中で感染者拡大、英国は大丈夫か - イベント中止、休校措置、経済の不透明感も
日を追うごとに、新型コロナウイルスが世界中に感染を拡大させています。昨年12月に中国中部の都市武漢(Wuhan、人口約1090万人)で第一例目の感染者が公式に報告されて以来、「世界保健機関(WHO)」の調べによると、3月2日時点で合計8万8913人の感染者と3043人の死者が出ています。そのうち、中国内では感染者が8万人を越えています。
英国に住む私たちの多くが新型コロナウイルスに注目しだしたのは、武漢が封鎖された1月末前後ではないでしょうか。その後、日本にとっても身近な問題となりました。1月20日、横浜港から出発した大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号の乗船客の一人が、同25日、香港で下船。2月1日、香港の病院でこの人物がコロナウイルスに感染したことが分かりました。そこで、数日後に横浜港に戻った際に乗客にウイルス検査をしたところ陽性反応が出た人が10人いたのです。それから2週間以上、クルーズ船は横浜港に停泊し約3700人の乗船者は隔離状態に。本格的な下船が始まったのは同19日です。同船に関係した新型ウイルスの感染者は600人を超え、ダイヤモンド・プリンセス号は集団感染の発生場所となってしまいました。厚生労働省によると、日本国内の患者は217例、死者は5人です(3月1日時点)。
クルーズ船での検査に時間がかかっていたことを問題視した米政府は、2月16日、米国民の乗船者をチャーター機で帰国させる措置を取りました。続いて英政府も重い腰を上げてチャーター機を準備し、22日には英国人30人とアイルランド人2人が無事帰国しました。でも、翌日には帰国者のうち4人に検査で陽性反応が出てしまいました。現在、英国での感染者は36人。死者が1人出ました(3月2日時点)。
新型コロナウイルスはもはや特定の地域・国でのみ広がる感染症ではなく、感染症が世界的に大流行する「パンデミック」のレベルに近付いているようです。日中以外では韓国、イラン、イタリアなどを中心に、他の国でも感染者が続々と発生しています。学校が休校となったり、スポーツ大会の中止、あるいは観客を呼ばずに試合を行ったりなどの緊急事態となっています。
さまざまな情報が飛び交う毎日ですが、こんなときこそ、落ち着いて対処したいものですね。
NHSによると、新型コロナウイルスに感染した場合、発熱、高熱、息切れなどの症状が出てきます。風邪やインフルエンザの症状に似ていますね。この状態が1週間ほど続く場合、医療機関に駆け込む前に、NHSの専用ダイヤル「111」にかけて容体を話してみましょう。
新型コロナウイルスの感染は「飛沫感染」(感染者のくしゃみや咳、唾液などによる感染)や「接触感染」(ウイルスに触れた手で口や鼻を触ることによる感染)の2つが考えられるそうです(厚生労働省)。感染拡大を防ぐためには、NHSによれば、「咳をするときは口と鼻をティッシュなどで覆う」、「せっけんで手を頻繁に洗う」、「手が汚れている場合は、目、鼻、口を触らない」など。厚労省のサイトでは「正しいマスクの着用を含む咳エチケット」を感染予防対策の一つとして挙げていますが、NHSの説明サイトにはマスク着用についての表記が特にありません。英国では、医療関係者以外はマスクをつける習慣がないことを反映していそうです。WHOは新型コロナウイルスについてのQ&Aのサイトで、くしゃみや咳をする人にマスクの着用を勧めてはいますが、「頻繁な手洗いも同時に行う限り、効果が出る」と書いています。
世界では新型コロナウィルスを原因とする株価の暴落が記録され、経済の先行きに不透明感が漂いだしたこの頃です。
Coronaviruses (CoV)(コロナウイルス)
発熱や上気道炎を引き起こすウイルスの一つ。球形で表面には突起があるため、王冠(crown)に似た形となっており、ラテン語の王冠を意味する「corona」という名前が付く。今回のコロナウイルスはこれまでに感染者を出したことがない種類。WHOはこの新型ウイルスを「Severe acuterespiratory syndrome (重症急性呼吸器症候群)coronavirus 2 (SARS-CoV-2)」、これによる疾患を「COVID-19(コビッド・ナインティーン)と命名した。日本では「新型コロナウイルス感染症」。