ハイテク建築により、一躍、世界を牽引する立場になった英国建築界。その進化の波は、2000年を機に最高潮に達した。文字通りミレニアムを冠した建物が各地に出現し、中には次世代の建築スタイルを予見させるものもあった。そして新技術の革新により、着実にデザインも進化している。
ミレニアム建築
ミレニアムを冠する建造物には、リチャード・ロジャース卿による「ミレニアム・ドーム(現O2アリーナ)」やウィルキンソン・イアー設計の「ゲイツヘッド・ミレニアム・ブリッジ」、また、ウェールズの首都カーディフにある英国最大級のオペラ・ハウス、「ミレニアム・センター」などが挙げられる。これらはその規模も形体も、1000年を締めくくるに相応しいものが多い。たとえミレニアムという文字を冠せずとも、英国人建築家のグリムショウ卿が手掛けた「エデン・プロジェクト」や、ノーマン・フォスター卿が設計した、大英博物館に架かるガラスの大屋根などは、これまでの常識を覆すのに十分なインパクトがあった。また、2000年にオープンしたテート・モダンのように、既存の名建築を改築し再生させる手法も、実に現代的といえる。
新時代の建築とその担い手たち
英国に限らず、現在、世界中で新しい建築を模索する動きがある。まず先陣を切ったのがオランダ建築だ。英国を代表する建築学校「AAスクール」出身のレム・クールハース率いる設計事務所「OMA」は、常識では思いつかないような斬新なスタイルで世界中を驚かせ、後に、数々の優れた建築家を輩出した。筆頭は「MVRDV」という、同じくオランダ人の建築家集団だ。当初は「OMAの二番煎じ」との悪評も飛び交ったが、時にOMAに勝る勢いで奇想天外な建築を生み出すこともある。
同じくAAスクール出身で目覚しい活躍を見せるのが、現在ロンドンを中心に活躍するイラン人女性建築家、ザハ・ハディド。かつては「『建たない建築』をデザインするペーパー・アーキテクト」と称されたほど、コンペには勝つが実作に欠しかった。劇的なまでに流線的なフォルムと突き刺さるようなシャープなエッジが特徴だ。
また、数々の強豪を抑えてテート・モダンの設計者に選ばれた「ヘルツォーク&ド・ムーロン」は、スイスのバーゼルを拠点に活躍する設計集団だ。軽やかで重力を感じさせない表層のデザインが特徴で、北京オリンピックのメイン・スタジアム「(通称)鳥の巣」も彼らの作品。現在は、テート・モダンの増築案を設計中だ。
新しい建築の時代へ
こうした斬新なデザインが流行する一方で、その土地特有の地域性や場所性に焦点を当てた「ヴァナキュラー建築」も現代建築における主流の1つとして存在する。また、装飾や余分な要素を削ぎ落とした「ミニマル建築」も注目を集めている。そして、環境負荷を抑制し、CO2削減などを謳った「エコ建築」が、時代の主役に躍り出そうとしている。
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