The Duchess(2008 / 英・伊・仏)
ある公爵夫人の生涯
18世紀、英国の社交界で華々しい存在感を放っていたデボンシャー公爵夫人ことジョージアナ・キャベンディッシュの、波瀾に満ちた生涯を描く伝記映画。
監督 | Saul Dibb |
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出演 | Keira Knightley, Ralph Fiennes, Charlotte Ramplingほか |
ロケ地 | Kedleston Hall |
アクセス | 最寄駅Derbyからバス |
- 今週は久しぶりに時代物です。豪華絢爛コスチューム・プレイについて、男3人で談義してみようじゃないですか。主演は我らがキーラ・ナイトレイです!
- いや、私は別にファンではないが。
- 僕も特に……。
- あれっ、好きなのは僕だけでしたか。まあそれはいいとして、本作は英・米両国で活躍中の伝記作家、アマンダ・フォアマンが自身の博士号論文を基にして書き上げた、初の著作本を映画化した作品です。
- 主人公の公爵夫人とは、18世紀後半に実在したジョージアナ・キャベンディッシュですね。スペンサー家の長女で、17歳の時に世界有数の富豪で名門貴族のデボンシャー公爵のもとに嫁いだ女性ですが、故ダイアナ妃の祖先にあたる人なんですよね。
- そればかりか、この2人は似たような運命を辿ったことでも知られており、本作の劇場公開時には、その事実が宣伝材料に使われていました。
- ジョージアナとダイアナは、まず存在感が似てるよな。社交界の花形で、国民からも広く愛されていた。しかしその一方で、夫とは愛を育めなかった、という……。
- 当時の世継ぎ問題を考慮したとしても、デボンシャー公爵のジョージアナに対する仕打ちはひどいですね。彼女の親友ベスを愛人にし、さらには同居させていたなんて、ちょっと考えられません。
- まあね。でも本作ではジョージアナの別の一面——ギャンブル好きでかなりの借金を抱えていたという事実や、政治への介入についてもあまり詳しく描かれていないから、何とも言えない部分があるよね。
- 何にせよ美しく聡明な女性であったことは間違いなく、そんな彼女の生き様をキーラちゃんが体現しているわけですが、ひときわ目を引くのはゴージャスでエレガントなコスチュームの数々です。さすが第81回アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞しただけのことはありますね。
- そして当然ではありますが、ロケ地が軒並みアッパークラスです。まずジョージアナらが、広大な庭で男子に駆けっこレースをさせてギャンブルの真似事を楽しむ冒頭のAlthorp Estateでのシーンは、ダービーシャー州にあるカントリー・ハウス、Kedleston Hallです。そしてジョージアナが嫁いだロンドンのデボンシャー・ハウスは、サリー州にありますClandon Park、さらにダイニングのシーンは、バークシャー州のBasildon Park内にあるパラディオ様式のマンションが使われています。
- デボンシャー・ハウスの場面は部分的にさまざまなロケ地が採用されていますね。門や前庭、建物の外観はロンドンのSomerset Houseですし、建物内に入ってすぐの天井が高いロビーと階段の部分は、ノーフォークにある18世紀のカントリー・ハウス、Holkham Hallが使われています。
- 英国上流階級の歴史と伝統がぎっしり詰まっている感じだね。バースのシーンも、ジョージアン建築の建物が眼に焼き付くようで非常に美しかったな。
- 舞踏会の場面はBath Assembly RoomsのTea RoomとOctagon Roomで撮影されていますね。また後にジョージアナがチャールズ・グレイと逢い引きする場面の建物の外観には、Holburne Museum of Artが使われました。こちらは現在閉鎖中ですが、2011年に再オープンの予定です。
特にキーラ・ナイトレイのファンではないと言ったが、この映画の彼女が今まで観た作品の中で一番良かったな。しかしとりわけ、レイフ・ファインズのデボンシャー公爵が印象的だった。ジョージアナは女性に参政権が与えられていない当時から政治に介入したり、ギャンブルに興じたりした先進的な人だが、対するデボンシャー公爵もまた別の意味で時代にそぐわず、当時の風潮や慣習にうまく自分を合わせていけない人だったように感じられたよ。
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