Dance With A Stranger
ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー(1985 / 英)
1955年に英国で最後に死刑となった女性、ルース・エリスの実話に基づいた壮絶な愛憎物語。
Shuhei Nakayama
監督 | Mike Newell |
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出演 | Miranda Richardson, Rupert Everett, Ian Holmほか |
ロケ地 | The Three King |
アクセス | 地下鉄Farringdon駅から徒歩 |
- お久しぶりー、サユリです。2011年初のお呼ばれにして、ヘビィな愛憎劇とはこれいかに。年始から重いわね。
- いやーすいませんね。でもほら、サユリさんは我が特捜部の愛憎担当ですから。
- いつの間にそんな担当に!? まあいいわ、そういうことなら今年もたっぷり愛憎劇を見届けていこうじゃないの。
- なんて頼もしい開き直り方でしょう。というわけで今回は「フォー・ウェディング」のマイク・ニューウェル監督が初期に手掛けた、英国最後の女性死刑囚として知られるルース・エリスの物語です。若くして紆余曲折の人生を送っていたルースは、一人息子を抱えながらロンドンでナイトクラブのママをしていました。そこにアッパー・ミドル・クラスのおぼっちゃん、デービッド・ブレイクという青年が訪れます。名門出身で育ちは良いが、酒飲みで自己中心的な彼はカー・レーサーでもあり、また婚約者がある身でルースと付き合い、彼女のフラットに寝泊まりするような男だったのでした。
- ナイツブリッジ駅近くのPark Closeという小道に立つ「Wellington Court」というアパートメント・ビルでこのナイトクラブのエントランスが撮影されていますね。
- 気の強いルースは娼婦でもあり、客と一夜をともにすることも日常茶飯事だったのですが、それだけに誰かを真剣に愛するというようなタイプではなかった。しかしデービッドにハマっていくんですね。
- うーん、出会っちゃいけない2人っているのよねえ。ルースは根本的に男を信用してないようなところがあるし、デービッドはルースに惚れてるんだけど、同時に蔑んでもいて、思わせぶりなことを言っては約束をすっぽかしたり、口論の末カッとなって彼女に暴力を振るったりするのね。でも2人ともお互いに強く惹かれていることは確かで、だからこそ激情してしまう。
- そして迎えたのは悲劇的な結末でした。自分のことを放ったらかしにして友人らとパーティーに興じるデービッドに激しい怒りを覚えたルースは、彼がパブから出てくるのを待ち伏せし、至近距離で銃を発砲します。
- この現場となったのは、ハムステッドのSouth Hill Parkに現存する「Magdala Tavern」というパブの前です。こちらなんと、タイル張りの壁に今も銃弾の跡が生々しく残っているそうですよ。
- ええっ、そうなの? 私あの辺り、よく散歩するのよ。今度見てみなくちゃ。
- しかしながら、このシーンの撮影は別の場所で行われています。Farringdon駅近く、Clerkenwell Closeの7番地にある「The Three Kings」というパブですね。
- ルースはここで銃弾がなくなるまでデービッドを撃ち、その後、騒ぎを聞きつけ店から出てきた人たちに向かって「警察を呼んでちょうだい」と言う冷静さでした。
- ちなみに彼女に銃を渡したとされているのが、同じくナイトクラブの常連客で彼女のことを真剣に愛し、支えようとしていた——と言っても彼女よりずっと年上で、傍からは彼女を囲っているようにしか見えなかったのかもしれませんが——デズモンドという男です。弁護士は死刑執行前日になってこの事実を突き止め、彼女を死刑から救うため申し立てを行いますが却下され、予定通りHolloway Prisonで死刑が執行されました。
- この判決は物議を醸し、今も論争の的になるほどなのよね。英国で死刑が廃止されるのは、この10年後のことよ。
ルースは受刑前にデービッドの母に宛てて「私はあなたの息子さんをいつも愛していました。今も彼を愛しながら、この世を去ります」と綴っていて切ない限りね。でも個人的に最も同情を寄せるのは、ルースの息子で当時10歳だったアンディ。本件がトラウマになってしまった彼は20代で自ら命を絶ってしまう。ルースは母親としては最低だった。この事件の一番の被害者は彼じゃないかと思うわ。
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