Prick Up Your Ears(1987 / 英)
プリック・アップ
60年代のロンドンに実在した劇作家ジョー・オートンと、彼の恋人で同居人のケン(ケネス)・ハリウェルの半生を綴ったドラマ。
Yoshihiro Kogure
監督 | Stephen Frears |
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出演 | Gary Oldman, Alfred Molina, Vanessa Redgrave ほか |
ロケ地 | Embassy Theatre |
アクセス | 地下鉄Swiss Cottage駅から徒歩 |
- 先週に引き続き、シアター絡みの作品ですね。ビートルズの人気が絶頂に達していた60年代に疾風のごとく現れ、辛辣なブラック・コメディー作品を生んだ劇作家ジョー・オートンと、彼の男色趣味及び作家としての才能を開花させるきっかけを作った、7歳年上の恋人で同居人のケン・ハリウェル。この2人の愛憎に満ちた半生を、ユーモラスかつリアルに描いています。
- 愛憎劇はサユリの担当じゃないのか。
- 今回はゲイものなので、デカ長で。
- ち、ちょっとジロー君、誤解を招くような言い方は控えるように。
- 何を取り乱してるんですか。さてはデカ長……。
- ち、違うわい。
- いいじゃないですか、隠さなくても。今は同性婚だって許される時代ですよ。片や60年代、同性愛は犯罪だったんですから。
- だから隠してないっつーの。しかし犯罪だった時代は、公衆トイレに警察が見回りに来てたんだなー。
- 公衆トイレはゲイ用語で、英国人には「コテージ」、米国人にはなぜか「ティー・ルーム」と呼ばれていたそうです(笑)。第2作目「Loot」が大ヒットして、その受賞パーティーの帰りにジョーがフラッと立ち寄る「コテージ」のシーンは、Tower Bridge Road沿い、Bermondsey Squareの交通島にある地下のトイレで撮影されてます。
- ジョーはRADA(王立演劇学校)でケンに出会い、ゲイの世界に目覚めてしまうが、そもそもケンよりずっと積極的というか、 今週の映画 第63回 デカ長性的にオープンな人だったんだよな。ケンと一緒にいるときでさえ、好みの男を見つけるとナンパして……っていう。
- RADAは実際にはGoodge Street駅近くのGower Streetにありますが、本作ではSwiss Cottage駅近く、Eaton Avenue 64番地にある「Embassy Theatre」が使われています。数々の名優を輩出している名門演劇学校「Central School of Speech and Drama」が入っている建物ですね。
- それから2人が1959年から住んでいたイズリントンのフラットは、Noel Roadの25番地です。映画ではそこから歩いて数分の位置にあるSt. Peter's Streetの10B番地のフラットが使われました。
- 2人の付き合いは16年に及ぶそうだが、うち8年をそのフラットで過ごしたんだよね。
- はい。もともとケンの方が作家志望で、家にこもって作品を書いては応募していたのですが、全然芽が出なかった。そんな中、暇つぶしにやっていた悪戯が見つかって、2人とも逮捕されてしまう。
- 2人はイズリントンの図書館から借りた本を盗んだり、また70冊以上の表紙に落書きや切り貼りをして遊んでいたんですね。まるで愉快犯です。ちなみに本作においてこの場面は「Chelsea Library」で撮影されています。また彼らが悪戯した本は今も保管されていて、一部が「Islington Museum」で公開されているそうですよ。
- しかし半年の禁固刑は厳しいなあ。
- でもこの件で2人は、しばらく離ればなれになるわけです。そしてその間に、今度はジョーが戯曲を書き始めます。そこで実は彼にこそ才能があったということが露呈するんですね。
- ジョーが急激に売れっ子になる一方で、2人の関係は、そこから徐々に歯車が狂っていく。ケンが最後に言う台詞「俺は自分の人生が分からない」が何とも切ないね。
本作のタイトルは、オートンが手掛けた未発表の戯曲の題名だったらしい。劇中でも言っているけど、彼の作品のタイトルの多くはケンが考え出していて、これもその一つだったんだとか。このフレーズの本来の意味は「聞き耳を立てる」だけど、「prick」は男性器を表している上、「ears」も「arse」のアナグラムになっていて、ゲイ的な内容を示唆する巧妙でキワドいタイトルなんだよね。
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