Fahrenheit 451(1966 / 英)
華氏451
読書が禁止された世界で違法者を取り締まり、本の焼却を行っていたファイヤーマンのモンターグ。真面目な隊員である彼は昇進を間近に控えていたが、ある日、クラリスという女性と出会い……。
監督 | François Truffaut |
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出演 | Julie Christie, Oskar Werner, Cyril Cusack ほか |
ロケ地 | Black Park |
アクセス | London・Paddington駅から最寄駅のLangley駅まで列車で約30分 |
- 本作の舞台となるのは本の所持と読書が禁止された管理社会だけど、今の時代、本が読めなくなって困る人ってどんだけいるんだろうね。
- さあ、どうでしょうねえ。インターネットの使用やケータイの所持が禁止されたら死ぬほど困るっていう人は、無数にいるでしょうけど……。
- 今や本もPCで読む時代ですしね。面白いのは、ここで描かれている世界では、情報は音声と映像のみで流されているということです。つまりテレビは禁止されていないんですね。しかし本が禁止されたことで人々の感受性は鈍り、また記憶力も弱まってしまうんです。みんな異常に物忘れが激しく、あいまいな記憶しか持っていない。
- テレビばっかり観ていると──現代においてはネットで疑似体験ばかりしてると、とも言い換えられるかもしれんが──想像力と思考力が圧倒的に奪われるってことなんだろうな。原作者のブラッドベリもそういうことが言いたかったんじゃないのかな。
- はい、こちら米国のSF作家、レイ・ブラッドベリの同名小説を基に「大人は判ってくれない」のフランソワ・トリュフォー監督が映画化した作品であります。トリュフォー監督はご存知のとおりフランス人ですが、舞台は英国です。監督にとって初めての、全編英語による作品なんですね。
- 多くはロンドン郊外にある映画スタジオ「Pinewood Studio」で撮影されているようですが、いくつかの場面はロケ撮影されています。まず冒頭でファイヤーマンの一隊が乗り込む団地は、ロンドン南西部のRoehampton地区、Danebury Avenueに立つ「Alton Estate」です。
- ちなみにここで言う「ファイヤーマン」は、文字通り一見、消防士だが、実体はその逆で、砲火隊なんだな。密告によって発覚した「反逆者」の家に押し掛け、室内に隠された本を見つけ出しては焼却する。
- さらにタイトルの「華氏451」は、紙が燃え始める温度だそうです。マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画のタイトル「華氏911」は、この映画から取っていることでも知られています。
- また、モンターグの自宅はバークシャー州CrowthorneはLinkwayの14番地だそうです。今も同じ住居が残っているとは考えにくいですが……。そしてラストの「本の人々」が暮らす森のシーンは、バッキンガムシャー州のWexhamにあるカントリー・パーク「Black Park」で撮られていますね。ここは 「Pinewood Studio」から程近いこともあって、007シリーズやハリー・ポッター・シリーズ、「バットマン」「スリーピー・ホロウ」など数多くの映画で使われています。
- その森に住む「本の人々」は、まるでコードネームか何かのように、それぞれが有名な本の名前で呼ばれているんだけど、その中にレイ・ブラッドベリの「火星年代記」っていう男の子がいるんだよね(笑)。そんでもってモンターグが持参した本は、エドガー・アラン・ポーの「怪奇と幻想の世界」……。あ、そういえばモンターグとクラリスが通勤で使っていたモノレールって、一体どこで撮られたの?
- 実はあのシーンのみフランスのオルレアン近郊で撮影されています。フランスの企業連合SAFEGEが開発した、当時の新型モノレールの実験線だったらしく、本作に出てくるモノレールのシーンは、そのテスト走行の記録映像としても貴重みたいですよ。
オープニングのタイトルやクレジットが、文字で出る代わりにすべてナレーションで紹介されるという演出で、しょっぱなから管理社会の雰囲気がよく出てるよね。隊員の様子も服装から何からナチスのようで、まさにあの時代に行われた焚書を思わせる。また、トリュフォー監督は大のヒッチコッキアンとしても有名で、この映画でもバーナード・ハーマンの音楽を始め、ヒッチコック映画の影響が多分に見受けられるよ。
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