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Wed, 20 November 2024

英国ニュース解説

最終更新日:2012年9月26日

失業者減少示す雇用統計が発表

「非労働力人口」の増加など
失業者減少示す雇用統計が発表

景気回復の兆しは見えつつあるものの、経済が確実に上向きになるまでにはまだ長い月日がかかると思われる英国。そうした中、国立統計局がこのほど、雇用に関する新たなデータを発表し、失業者数、失業率が共に減少したことが明らかにされた。今回は、この統計について紹介し、英国の現在の雇用情勢を探る。


英国の失業者数の推移

英国の失業者数の推移

就労年齢人口の雇用率の変遷

2008年11月~2009年1月
bar  74.0%
2009年2月~4月
bar 73.2%
2009年5月~7月
bar 72.5%
2009年8月~10月
bar 72.5%
2009年11月~2010年1月
bar 72.2%

(*)「就労年齢人口(working age)」とは、16歳から年金受給開始年齢までを指す。現在の年金受給開始年齢は、女性は60歳、男性は65歳。

非労働力人口(economically inactive people)の内訳

学生
bar  231万1000人
家族の世話をしている
bar 225万3000人
一時的に病気治療中である
bar 18万5000人
長期的に病気治療中である
bar 200万7000人
就職する意欲をなくした
bar 7万4000人
既に引退した
bar 59万5000人
その他
bar 73万3000人

(*)2009年11月~2010年1月の非労働力人口815万7000人の内訳


求職者手当申請者が最も多い地域及び
最も少ない地域の選挙区別統計

求職者手当申請者が最も多い地域ワースト6

選挙区名(カッコ内は地方名) 就労年齢人口に求職者手当
申請者が占める割合
Birmingham, Ladywood
(ウェスト・ミッドランズ地方)
11.6%
Birmingham, Hodge Hill
(ウェスト・ミッドランズ地方)
11.0%
Birmingham, Sparkbrook & Small Heath
(ウェスト・ミッドランズ地方)
9.9%
Birmingham, Erdington
(ウェスト・ミッドランズ地方)
9.6%
Wolverhampton South East
(ウェスト・ミッドランズ地方)
9.6%
Kingston upon Hull West & Hessle
(ヨークシャー&ハンバー地方)
9.6%

求職者手当申請者が最も少ない地域ベスト5

選挙区名(カッコ内は地方名) 就労年齢人口に求職者手当
申請者が占める割合
West Aberdeenshire & Kincardin
(スコットランド)
1.1%
Gordon
(スコットランド)
1.3%
Westmorland & Lonsdale
(イングランド北西部)
1.4%
Orkney & Shetland
(スコットランド)
1.5%
Buckingham
(イングランド南東部)
1.6%

(*)2010年2月時点の求職者手当申請者の数をもとに順位付けしたもの。
Source: ONS


失業者が3万3000人減少

3月中旬、雇用に関する新データが国立統計局(ONS)から発表された。それによると、2009年11月〜2010年1月の失業者数は245万人。前期比3万3000人減と、2007年5〜7月以降で最大の減少幅を示した。

失業率は前期比0.1%減の7.8%。小幅ながら、2008年3〜5月以降で初の減少となった。また、求職者手当(JSA)の申請者数も減少し、2010年2月の申請者は、前月比で3万2300人減の159万人であった。

総選挙を控えた政府にとっては喜ばしいニュースのようであるが、実はそうでもない。それは、失業者数、失業率は減少しているものの、仕事に就いている人の数も減っているためである。今回の統計によると、2009年11月〜2010年1月の英国における被雇用者数は、前期比5万4000人減の2886万人。就労年齢人口(*)の雇用率は前期比0.3%減で72.2%と、1996年9〜11月以降で最低の数字を記録した。

背景に「非労働力人口」の増加

失業者が減っているのに、仕事に就いている人も減っているという不思議な現象の理由は、「非労働力人口(economically inactive people)」と呼ばれる人々が増えているためである。「非労働力人口」とは、就労年齢にありながら、家族の世話をしている、学生であるなどの理由で就労していない人々を指す。「就職する意欲をなくし、求職していない人々」もこの枠に含まれる。2009年11月〜2010年1月の「非労働力人口」は、前期比14万9000人増で約816万人と、過去最高を記録。背景には、不況で職を失って社会人から学生に戻ったり、学校を卒業しても就職できず、学生を続けることを選んでいる人が増えていることがある。

また、これとは別に、失業者数が抑えられている一因には、フルタイムの仕事が見つからないため、パートタイムで働いている人が増えていることがあるとも言われる。

「雇用なき回復」に直面か

今回の統計の発表を受け、クーパー労働・年金相は、失業者数減少のニュースを歓迎しながらも、「まだ危機を脱したわけではない」「1980、90年代は、景気回復後、何年にもわたって失業者数が増え続けた」として、今後の雇用情勢を楽観視する見方をけん制している。まるでこうした警告の言葉を裏付けるかのように、人材紹介大手「マンパワー」は最近、英企業2100社を対象にした調査結果として、「2010年第2四半期に人員増を予定している企業は、人員削減を予定している企業より1%多いに過ぎない」ことを明らかにした。この理由としては、経済情勢の改善見通しが確かになるまで雇用を控えている企業が多いためであるとの説明がなされている。

英国は今後、景気回復を遂げたとしても、失業率は高止まりする「雇用なき景気回復(jobless recovery)」と呼ばれる現象に向かうとの声が聞かれている。この国の厳しい雇用情勢は、まだ当分続きそうである。

(*)16歳から年金受給年齢まで。現在の年金受給年齢は、女性は60歳、男性は65歳。

Jobseeker's Allowance

失業中であり、積極的に仕事を探している人に対して支払われる福祉手当。「求職手当」などと訳される。受給資格の年齢制限は、18歳から年金受給年齢に達するまで。また、就労していても、就労時間が週平均16時間以下であれば受給資格がある。求職手当には2つの種類があり、過去2年間の国民保険料(NI)の納付額に応じて支払われるタイプと、収入及び貯蓄額に応じて支払われるものがある。前者は最高182日間支給され、25歳以上の場合、週当たりの支給額は最も多くて64.30ポンド(約8800円)。後者も、独身で25歳以上の場合の週当たりの最高支給額はやはり64.30ポンドとなっている。

(猫)

 

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