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英国ニュース解説

最終更新日:2012年9月26日

新高速鉄道「HS2」が建設へ - ロンドン−バーミンガム間が45分

ロンドン−バーミンガム間が45分
新高速鉄道「HS2」が建設へ

前労働党政権が政権末期に発表し、現連立政権が引き継いだ形になった高速鉄道の建設計画が遂に実行されることになった。今回は、英国内の陸の移動を飛躍的に便利にさせる一方、環境面での影響や巨額の費用などで物議を醸しているこの計画について説明する。

新高速鉄道「HS2」のルート

「HS2」の開通前と開通後の鉄道での移動所要時間の比較

  現在の所要時間 「HS2」開通後の所要時間
ロンドン〜バーミンガム 1時間24分 45分
ロンドン〜マンチェスター 2時間8分 1時間8分
ロンドン〜リバプール 2時間10分 1時間46分
ロンドン〜リーズ 2時間20分 1時間28分
ロンドン〜サウス・ヨークシャー 2時間9分 1時間10分
ロンドン〜ニューカッスル 3時間9分 2時間18分
ロンドン〜エディンバラ 4時間30分 3時間39分
ロンドン〜グラスゴー 4時間30分 3時間37分
Source: DfT

数字で見る高速鉄道「HS2」

400キロメートル 最高時速
最長400メートル 一つの列車の長さ
最高1100座席 一つの列車の座席数
最高2万6000人 1時間に運ぶことができる人間の数
327億ポンド(約3兆9240億円) 総工費
340億ポンド(約4兆800億円) 開通から60年間での運賃収入見込み

「第1段階」は2026年開通

政府は先月10日、ロンドンからイングランド中部バーミンガム、及び同北部のマンチェスターとリーズまでを結ぶ新高速鉄道の建設計画を承認した。新鉄道は、「High Speed 2」を略した「HS2」との通称で呼ばれている。計画は2段階にわたって実行され、今回は、第1段階であるロンドン−バーミンガム間の鉄道建設が承認された。第1段階の工事は2017年までに開始され、2026年に開通の予定である。

新鉄道のロンドンでのターミナル駅はユーストン駅になる。最高時速は約400キロで、ロンドン−バーミンガム間をわずか45分で移動できるようになる。また、ロンドン西部のオールド・オーク・コモン(Old Oak Common)に新たに建設される駅から、現在建設中のロンドン横断鉄道「クロスレール」に乗り換えることが可能。更に、高速鉄道用線路「HS1」とも接続し、欧州への足が更に便利になる(「HS1」については「関連キーワード」を参照)。

沿線住民から強い反対の声

この計画は、もともとは前労働党政権の構想であったのを、現政権が引き継いだ形になったものである。しかし、同計画に対しては、前政権が発表した当初から、新鉄道の沿線に位置することになる地域の自治体や住民などから、騒音等の環境面での影響などを理由に、強い反対の声が上がっていた。同計画への反対運動を行うために設置された住民グループの数は、実に70にも上ったという。こうした多くの人々の反発を考慮し、政府が今回発表した計画では、従来の案より、鉄道がトンネルを通過するルートが増えていた。ベッドフォードシャー州などにまたがり、「自然美指定地域」(*)に指定されているチルターン・ヒルズ(Chiltern Hills)を通るルートも、トンネル部分が増えた。

ヒースロー空港行き支線も建設予定

新高速鉄道への反対意見に対し、政府は、「鉄道サービスの輸送能力を高めるために不可欠である」などとして反論している。例えば、鉄道インフラ会社「ネットワーク・レール」によると、ロンドン−スコットランド間を結ぶウェスト・コースト本線の南側路線は、2024年までに輸送能力の限界に達する見込みだという。政府は、こうした現状を考えると、1時間当たり最高2万6000人を輸送できる新高速鉄道の建設は、既存の鉄道システムの改修などに勝る最良の選択肢であると主張している。

計画の「第2段階」であるマンチェスター及びリーズ行きの路線については、2014年後半に詳細が発表され、2032〜33年に開通する見込みである。第2段階の路線は、イースト・ミッドランズ、サウス・ヨークシャーにも停車し、またヒースロー空港行きの支線も建設される。更には、リバプール、エディンバラ、グラスゴーなどへ行く既存の鉄道とも接続する。今後も反対意見は聞かれるだろうが、HS2が、英国の公共交通サービスを飛躍的に発展させ、国内の移動が更に便利になることは間違いなさそうである。

(*) 政府の外郭団体である「ナチュラル・イングランド」が、美しい自然美が残るエリアとして認定した地域。

High Speed One(HS1)

ロンドンのセント・パンクラス駅からケント州、英仏海峡トンネルの英国側出口までを結ぶ全長109キロメートルの高速鉄道用線路。2007年11月開通。時速300キロメートルまでの鉄道に対応する。現在、HS1を利用している鉄道は、ユーロスターのほか、ロンドンとケント州を結ぶサウスイースタン鉄道の列車、及び貨物線である。HS1の沿線上の駅には、ストラットフォード・インターナショナル駅、アシュフォード・インターナショナル駅などがある。2012年ロンドン・オリンピック期間中は、高速鉄道「ジャベリン」がHS1を走ることになる。。

(猫山はるこ)

 

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