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Fri, 20 December 2024

第117回 キャメロンとオズボーンの政権―保守党と自民党

保守党の政策

保守党は、ここ数カ月、労働党を2桁上回る支持率を得ている。英国ではサブプライム以降の景気回復が見えていない。政策効果や中国の回復を受け、世界が製造業を中心に回復を見ているのに対して、英国とりわけロンドンの稼ぎ頭である金融は芳しくない。米国ではサブプライム住宅ローンから商業用不動産向け貸出へと不良債権の中心が移行する一方、欧州では住宅ローンにおける不良債権の処理さえ十分ではない状態が続いている。マーケットにはいまだ活気が戻らない。この状態でポンドは一人負けの状態にあり、ポンド安が続いている。

英国民が感じるブラウン首相への苛立ちは、日増しに大きくなっている。12年間に及ぶ労働党政権への飽きも支持率に見られ始めた。来年5月6日に実施と目される総選挙へ向けて、保守党には追い風が吹いている。

こうした中、オズボーン影の財務相は先々週、政権奪取後の財政政策の骨子を発表した。70億ポンド(1兆円以上)の歳出削減、国民年金支給年齢引き上げ、中間層への減税の取りやめ、50%の最高所得税率の維持、公務員の給与削減などである。選挙前にも関わらず、受益者に取って厳しい施策をはっきりと公約するのは異例とも言える。

またキャメロン党首は、マンチェスターでの党大会で「大きな政府」の失敗を厳しく批判した。これだけだと、歳出を切り詰め、耐乏を強いた80年代のサッチャー政権の再来とのイメージが強くなり過ぎる。そこでキャメロン氏は、「Family, Community, Country」を支援していくと言い、環境や同性愛者にも配慮して、保守党は「Modern Conservative Party」になると言った。

問題は4大銀行の寡占

その方向性は、労働党に対する対立軸として良いであろう。キャメロン氏は保守党大会で、戦後最悪の不況、財政赤字、政治への幻滅、社会崩壊の危機といった諸問題の解決は難しいという厳しい現状認識を示し、歳出削減の必要性を説いた。しかし、歳出削減のみでは選挙は勝てまい。もちろん「Family, Community, Country」だけでは中身が不明だ。前向きな経済回復への動きについて具体的に語る必要があるが、それがない。サブプライム直前からのブラウン政権の経済失策を検証した上で、どう金融を立て直すのかについての具体策が、総選挙で圧勝するためには是非とも必要だ。低成長でも暮らしていけるために何をすべきなのか。保守党が掲げる小さな政府は、結局は民間に頼むということなのだが、民間の誰に頼むのか。

今、4大銀行は寡占にあぐらをかいている。各銀のサービスは悪い。結局、サッチャーの敵が肥大化した政府、公共部門であったのに対し、キャメロンの敵は寡占化された銀行ではないのか。英国には国際的に開かれたロンドン証券取引場と同時に、銀行の国内的な寡占が存在しているのである。そうした寡占利益に依存する不動産業、サービス業の数々。ここが改革の本丸だと思う。

イングランド銀行のキング総裁は、輸出促進のためポンド安容認とも取れる発言をしたが、危険なことではないか。ロンドンはウィンブルドン方式で発展してきた。ポンドの価値が下がれば、英国への投資にブレーキがかかる。ウィンブルドン方式が瓦解することは英国にとってプラスにはなるまい。寡占の金融を解体しつつ、ポンド相場を維持するための具体策を練る必要があるのではないか。

重なる保守党と自民党の姿

大きな政府を批判し、歳出削減以外に具体策がない保守党は、日本の自民党のイメージに重なる。自民党も大きな政府を批判するが、経済状況を好転させるための具体的な提案がない。

一方の民主党の政治は、結局のところ、金融と財政による景気の梃子入れである。自民党の言う通り、国債は増発となり、大きな政府になる。金融機関が不良債権を抱え込めば、これは結局財政負担、つまり銀行そして預金者の負担になる。人口が減少する日本で、そんなに大きな政府が必要なのか。自民党はそこを突くべきであるが、同党総裁に就任した谷垣氏とそのブレインは、それができるのか。

このままだと、まるで大政奉還・王政復古後の戊辰戦争で行われた残党狩りのように、地方の建設業者に自民党から民主党への鞍替えを迫る小沢氏の勝ちとなる。だとすれば、来年7月の参議院選挙でも自民党復活の目はまずないと考えるが、どうであろうか。

(2009年10月17日脱稿)

 

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