第28回 「時の流れ」の中で佇む
~スロー・シャッター・スピードを利用する
前回は、動く被写体に応じてシャッター・スピードを調整したり、撮影時にカメラをスライドさせたりすることによって得られる効果をいくつか挙げてみましたが、今回も、シャッター・スピードを調整することで広がる表現方法をもう一つご紹介したいと思います。
たとえ面倒でも、三脚を使うことにより、非日常的なシーンを撮ることができます。例に挙げた写真は、メインの被写体(緑のジャケットを着た人物と、背景にあるセント・ポール大聖堂)のみが静止し、通行している大勢の人たちは皆流れたように写っています。この、静止したものと流動するものが作り出すコントラストが、出来上がった写真をより面白くしています。
撮影に適しているのは日没間際の薄暗くなる時間帯です。暗くなり、光の量が減少するほどにシャッター・スピードは遅くなりますが、この「スロー・シャッター・スピード」こそが、今回の撮影のポイントなのです。
被写体になる人には、撮影するタイミングを手などで合図し、カメラがシャッターを切り終わるまで(1秒程)瞬きを止めてもらいます。このとき、シャッターを押す指から受けた衝撃でカメラが揺れてしまう可能性がありますので、レリーズやセルフ・タイマーを使用されることをお勧めします。また、夜間の撮影の場合は一段とシャッター・スピードが遅くなりますので、被写体が静止する瞬間に合わせてシャッターを押すことがさらに重要になります。いいショットを得るためにも、同じカットで数枚撮影してみましょう。
この撮影方法は、なるべく人の通行量が多い場所を選ぶと成功しやすくなりますが、通行人の邪魔にならない場所を選ぶか、望遠で遠くから写すなど、撮影時のエチケットも忘れないように心掛けたいですね。
f値22/シャッター・スピード1/2秒
テート・モダンからセント・ポール大聖堂に向かう陸橋にて。
交通量の多い場所はカメラの設置場所にも気を使いたい。
今回は歩道の隅より望遠で撮影した
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