第48回 「原風景」を撮る
~英国人写真家マイケル・ケンナ氏~
今回は、英国出身の写真家、マイケル・ケンナ氏の2003年に出版された写真集「JAPAN」についてご紹介したいと思います。
1953年、英北西部ランカシャーに生まれ、写真を学んだ後、1980年代より現在に至るまで米国に在住されている風景写真家で、これまでに30冊以上の写真集が出版されています。1987年に開かれた写真展のための初来日がきっかけとなり、2002年まで年数回のペースで来日。日本全国を旅して撮影した、何百本というフィルムの中から選ばれた95枚で、この写真集は構成されています。中身もさることながら、装丁もとても美しい写真集です(写真1)。
その中の数点の写真は琵琶湖で撮影されたものですが(写真2)、まるで白い半紙に墨汁を垂らしたような、余計なものを完全に削ぎ落とした構図が際立ちます。そして、静かに打ち寄せ引き返すさざ波まで、印画紙に焼き付けられているようです。英国で生まれた写真家に、自分の出生した土地、日本の美しさを、再確認させてもらえたような気がしました。
そして、私たち日本人が見て感じる英国も、もしかして英国人が心に持っている「原風景」に通じるのかもしれないと、この写真集を見て感じています。
日本人による装丁デザインとタイトル文字。
黒い外カバーを開くと、鮮やかな赤が目に飛び込んでくる
滋賀県安曇川 / 琵琶湖特有の「魞(えり)漁」の仕掛け
Pier Fragments, Adogawa, Honshu, Japan 2002
© Michael Kenna
福井県塩坂越 / 彼の作品の中では珍しい「動」の写真
Fierce Wind, Shakushi, Honshu, Japan 2002
© Michael Kenna
北海道コタン / 彼は冬の北海道の風景も好んで撮影した
Kussharo Lake Tree, Kotan, Hokkaido, Japan 2002
© Michael Kenna
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